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報告書50「インターネットが壊れた」

 MM社屋内にある自室、ベットの上で大きく伸びをする。こののんびりした時間……横須賀から帰ってきて、再び日常が戻ってきた事が実感される。あのロンギスクアマのせいでまーた死に掛けたんだから、この日常のなんとありがたい事か。


 それにしても異常電波発生の原因が、秘密裏に建造されていたVLF通信設備「トレイル・システム」を再編派が起動して、中枢に接続するためのデータ集めをしていたとは全く驚きだな。何にしても、ササヤさん(仮)から貰った再編派に関する情報ファイルがなければそれすらもわからなかったんだ、ササヤさん(仮)様々だな……いや、ササヤさん(仮)が直接、ササヤさん本人の事を教えてくれれば問題解決では?でも教えてくれないから、今は再編派の足跡を辿るしか無い?あ〜もう……事態がこんがらがってきてもうよく分からん……登場勢力が増えすぎなんだよ、たく……


 まあ難しい話は後だ。チトセは事務所、イクノさんはガレージで例の情報ファイルの解析中……となれば、俺がネットで集めた“お宝画像”フォルダの閲覧をする時間には持ってこいというわけだ。何やらメタ犬がウロウロしているが、構うものか。


「ふんふ〜ん♫今日はどの趣向で攻めようかな〜」


 ベットの上にうつ伏せに寝転びながら、タブレットを操作する。このタブレットは名目上は社の備品なんだが、画像等を好き放題入れて半ば私物化している。だがこれは仕方ないことなんだ。私用のをチトセが買わせてくれないんだから。


<<な〜んか引っ掛かるんだワン……何かある気がするというか……ワン>>


「ふふふ、やっぱり気の強そうな女はいいな」


<<悩んでてもしょうがないワン。日課のあれをやるワン>>


 ふと見ると、タブレットの前でメタ犬が片足をあげて“オシッコマーキング”のポーズをしているでは無いか!


「あっ、おいこら!それやめろって前から言ってるだろ!」


<<もう手遅れだワ〜ン。あっ、引っ掛かってたものが出そうだワン!>>


「って、何だこの“闇”……もしや……ああああぁ!お前これ闇黒伝播ノクタリム・カスケードで使った粒子の残りじゃねぇか!?って、全てのデータが消えちまっただろ!!」


<<ふぅ、よく出たワン。きっと神経連鎖ニューロクサスを解いた時に、処理しきれなかったものワンね。すっきりすっきりワン>>


「すっきりじゃねぇよ!俺が集めたエロ画像全部消しやがって!!」


<<排出完了、それじゃ、出すもん出したし昼寝でもするかワン>>


 こんのクソ犬がぁ……!その時、人の気配を感じ扉の方を見ると、そこには明らかにドン引きプラス嫌悪感丸出しの顔をしたチトセの姿が……終わった。


「そういう趣味なら、もうちょっと隠しなさいよ。大声で騒いで……ほんと、最悪」


「ひっ、人の部屋に扉をノックもなしに開けるな!……何の用だよ」


「イクノが最近のネットワーク障害について話があるそうだから、呼びに来たのよ」


「すぐ行くよ……」


「それとそのタブレットの修理代、次のあんたの給料から引いておくから」


 くそおおおクソ犬めええ!もう嫌だこんな日常……


 色々と失ってしまったが、悔やんでいても仕方ないのでチトセと事務所に降りて行くと、イクノさんが渋い顔でディスプレイを睨みつけていた。


「イクノ、イワミを連れて来たわ。聞いてよ、こいつ部屋で──」


「わー!それはいいだろ!それより大事な話があるんだろっ」


 慌てて誤魔化すが、どのみちイクノさんのこの深刻そうな顔、そんなくだらない話には興味は無さそうではある。


「おぉ、お二人さんにも少し手伝って貰いたい事があっての。気づいているじゃろうが、前々から悪かったネットワーク環境が、いよいよ深刻になってきておる。リンクが頻繁に切れ、レイテンシは増し、パケットに不可解なノイズが混じると言った具合じゃ」


「確かにここ最近やけに遅い時があるけど、手伝うって私達にどうにかできるもんなの?回線の問題なら回線業社に文句付けた方が良くない?」


「ウチの回線か?そんなもの、近くの自衛軍基地のバックボーンに枝を付けて吸うとるだけじゃ。どうせあやつら、帯域もデータも使いきれておらんしのう。軍用のイントラに紛れ込んで、内部情報も覗き見しつつ、そのまま出口も通してインターネットまでタダ乗りしておるというわけじゃ。一石二鳥じゃろう」


 イクノさんはさらりと言っているが、何だか随分とヤバい事をしてるって事じゃないのか?チトセとはベクトルが違うヤバさを感じる……


「て事は、問題はもしかしてウチの機器?あんまり高いのはちょっと手が出せないわよ……」


「いや、それもどうやら違うようじゃ。テストしてみたんじゃが、わしの愛機達は正常のようじゃからな。となると、原因はネットワーク全体の問題になるという訳じゃ。そしてついさっき、その原因と思しき場所を見つけての……立川駐屯地跡じゃ。調べに行く価値はあるじゃろうな」


「ふうん……なるほどねぇ……」


 考えるような素振りをするチトセだが、何を考えてるのかは一目瞭然。ズバリ、金だ。


「いいわ、行きましょう!立川駅ダンジョン近くにあって、リソーサー災害で壊滅、遺棄されたはずの立川駐屯地跡がネットワークに負荷をかける原因になってる……何だか面白そうじゃない?もちろん、情報が観察処に高く売れそうって意味でね」


「そう来ると思ったよ。現金な奴はいいね、判断基準が明確、迷いが無くて」


 また基地施設での調査任務か。前回の横須賀海軍施設跡と言い、あまり良い予感はしないが……ネットワークの不調は大問題だからな。なんせバカ犬に消された“お宝”の再収集に支障をきたすんだから。

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