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報告書44「リソーサー・ロンギスクアマ」

 ヤバい二人に見つかり絶体絶命な中、壁をぶち破って突然現れた巨大なリソーサー。そいつは何とも異形の姿であった。本体自体は煤けた黒鉄色をした多少脚の長い大きな機械トカゲという見た目であったが、問題はその背中だ。幾本もの長い長いブレード状の突起が一列に並んでるんだから、あまりにも特徴的すぎる。


<<リソーサー・ロンギスクアマじゃ!背中のブレードアンテナで電波を捉えて捕食するだけあって、異常電波に引き寄せられたんじゃな。それにしてもここまで巨大なのは珍しいし、おまけに頭のトサカ……こいつはただのロンギスクアマじゃない、変異個体じゃ!気をつけるのじゃ!>>


「へ、変異個体!?何にしてもヤバい奴って事か!」


 そいつは鶏と蛇が出す音を混ぜて無理やり電子音にしたような奇怪で耳障りな咆哮を上げたかと思いきや、背中のブレードにバチバチと何やら電流を走らせ始めた。


「今度は何だ!?イクノさんっ、あいつ何か……」


 バチッという音と同時に、ブレードから四方八方に飛ぶ稲妻。そしてスキャナーからはイクノさんの声に代わり、ノイズしか聞こえなくなった。


「ふぅん……通信妨害まで仕掛けてくるの。まあいいわ、必要なデータは取れたし……もう飽きた」


 そう言うと、ナカセは端末を持って走り去って行った。くそっ、機動鎧甲の高速移動装置を使いやがったな。追いつけねぇ!だが気のせいだろうか、去り際に肩の犬頭が、こちらを少し見たのは。


<<オル兄ぃ待つワン!オル兄ぃ……>>


 寂しそうにクゥンと鳴くメタ犬。あいつの機動鎧甲の犬頭は、どうやらメタ犬とは抜き差しならぬ仲らしい。


「……この個体の内部に存在する干渉因子、予測を逸脱。観察継続を推奨。記録モードへ移行。中枢代理ユニット、離脱」


 そしてまたもや掻き消えるようにいなくなったササヤさん(仮)。あれ?て事はこのヤバいリソーサーを前に残されたのは俺だけ?しかも明らかにこちらを見ているロンギスクアマ。どうやら俺を敵もしくは……餌と認識したようだ。


「こうなりゃ、やるしか無いようだな……」


 キ影を抜き放ち、横から一気に駆け寄る。こういうトカゲタイプは、前から行けば噛みつき、後ろからは尻尾と攻撃パターンは大体決まってる。となれば、側面に貼り付けば……!


「うぉっ!?って、くそっ!ちょっと!」


 頭上からの連続ブレード攻撃に対して防御だけじゃ捌ききれず、ステップで何とか攻撃範囲外に脱出する。あの背中の突起物、硬質の癖に柔軟性があって、単なるアンテナじゃなくて近接武器にもなるのかよ!


「となれば死角は無いのか……?」


 いや、相手は久しぶりの“単なる”リソーサー、とっておきの出番だな!


「メタ犬!闇黒外装の起動準備だ!」


<<オル兄ぃ……>>


「しっかりしろメタ犬!頼むから力を貸せ!」


<<……ワヒッ!?あ、闇黒外装だワンね!闇黒ノクタリウム粒子生成プロトコル起動!いつでもいけるワン!>>


「よっしゃあ!“闇黒外装”展開!」


 機動鎧甲から闇が吹き出し、身体に纏わりつく。これで奴の感知を逃れられるから、バッテリーの続く限り、攻撃し放題のはずだ!


 試しに逆側の横っ腹に回り込み、渾身の一太刀を浴びせる。刃先は装甲を破り内側のギアや駆動系を露わにし、ロンギスクアマは堪らず悲鳴のような咆哮をあげた。やっぱりだ、こちらを認識できてない!


「やれるぞメタ犬!やっぱりお前の固有能力は最強だ!」


<<油断するなワン!周囲に熱源多数、何かが群れで来てるワン!>>


 スキャナーに映る反応の方向を見ると……なんと、ロンギスクアマがぶち破った壁からゾロゾロとリソーサー・スキュラルス、あのシャコ野郎の団体が入ってきたではないか!


「なんだ援軍かよ!でもまあこちらが見えなきゃ、どっちみち──」


 そこまで言い掛けて言葉を失った。なんとロンギスクアマは、スキュラルスの群れの中の一体に噛みつき、バリバリと音を立てて食べ始めたのだから。と同時に、ついさっき損傷を与えた場所がみるみる治っていくではないか。こいつ、捕食で自己修復ができるってのか!?何よりも驚きなのは、群れの仲間が食われてるというのに、さもそれが当たり前であるかのように何ら見向きもしないシャコ共だ……


「いっ、一体どうなってやがる……?普通ならリソーサー同士、生存をかけて争う状況だろ……」


<<スキュラルスから漏れ出てるコード……上書きの痕跡ありだワン!さてはロンギスクアマ、汚染電波で支配コードを流し込んだワンな!バリバリのオーバーライドだワン!!>>


 くそっ、こちとら闇黒外装はバッテリー消費が激しくて長時間の使用は出来ないってのに、あいつは持久戦対策も万全って訳か。こりゃ作戦の立て直しだな。


 ひとまず闇黒外装を解き、ロンギスクアマと正面から相対峙する。こちらの闇黒外装を警戒しているのか、ロンギスクアマもシャコも、唸り声をあげたり、シャコパンチを素振りしたりと威嚇するだけで向こうからは仕掛けてこないのは幸いか。


「くそっ……鬼雨でロンギスクアマを即死……は無理か。界雷でシャコを一掃……も無理だな。どうしたもんか……」


 などと考えていると、ロンギスクアマが上を向きながら後ろ立ちになり、こちらに首筋を見せつける態勢になった。


「何だ……?」


<<このコード……危ないワン!奴の“目”を見るなワン!!>>


「“目”って……」


 ロンギスクアマの喉元から首筋にかけて、それは現れた。それ……ずっと閉じられていた無数の目が開き、様々な色の瞳がこちらを一斉に“見つめた”のだ。閃光が走ったように思えた次の瞬間、意識を失った。

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