表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/56

報告書43「隷犬の騎士」

 ササヤさんのそっくりさん……ササヤさん(仮)と、ナカセと呼ばれた、再編派の謎の人物の対峙。ササヤさん(仮)の背中から、天使の翼……翼状に展開された、七色に光る各種ノードが生えてるあたり、“ヤる気”のようだ。それにしてもこの七色の光、ゲーミングパソコンかよ。


「再編派構成体ナカセに告ぐ。当該通信拠点の稼働は、中枢接続に対する強制介入と見なされます。

 私は“あの方”の代理に基づき、これを阻止する任を負います。以降の活動継続は、観察対象から排除対象への分類更新を意味します」


「相変わらず大げさね。排除対象?最初からそのつもりだったくせに」


「対象の排除開始」


 そう言って、手に剣を持ったと思った次の瞬間、一瞬にして姿を消したササヤさん(仮)が次に現れたのは、ナカセと呼ばれた人物の背後だった。瞬間移動による死角からの攻撃!?こんなの避けれるはずが……


「AIが演算で弾き出した最適な攻撃が不意打ち?……笑えるわ。安直すぎて」


 背中からの奇襲にも関わらず、ナカセはいつのまにか抜いていた、なにやら妙に機械部品のついた剣で完全に防御していた。それも手だけを後ろに回し、ノールックで。なんだあいつ、後ろに目でも付いてんの?


「チトセ、イクノさん、目的地に到着したけど、例のササヤさん(仮)と、再編派のナカセとかいう人物が戦いをおっ始めやがった」


<<ササヤさん(仮)とナカセ……?ナカセって、あの“隷犬の騎士”!?対機師団もいよいよ本気ってわけね……こっちもこれから制御室に突入するところだから、イワミ!あんたは戦いに巻き込まれる前に、直ぐにその場を離れるのよ!>>


「そうはいくか。あのナカセとか言うのがイジってた端末を回収できれば、奴らがここで何をしていたのか分かるってもんだ。大体、ナカセ?隷犬の騎士ってなんだ?有名人?」


<<隷犬の騎士ことナカセ……かつて自衛軍でも指折りのエリートじゃったんじゃが、ある時を境に表舞台から姿を消し、今や対機師団の特殊部隊群所属として、数多くのリソーサーや邪魔者を血祭りに挙げているという奴じゃの。表舞台から姿を消した……つまり出世コースから外れた理由は、何らかの“実験”に参加したんじゃが、失敗したから……という噂じゃ>>


 何らかの実験ね……再編派とかいう、いわゆる秘密結社のやる事だ、どうせろくでも無い実験だったのは想像に難くないな。何にしても、あの完全に人間辞めてるササヤさん(仮)と対等にやり合えてるんだ、相当の手練れなのは間違いあるまい。


 テレポートで移動して死角に回り込む、攻撃を“姿を消して”避ける、はたまた分身して目くらましする……ササヤさん(仮)はやりたい放題だな。驚きなのは、それら行動に全て完全に対処できているナカセの方だ。なんであいつには、瞬間移動後の出現先がわかるんだ?


「何にしても、二人でよろしくやってる内にここは頂くもん頂いちゃいますか」


 確かにあんなのに巻き込まれたら、たまったもんじゃないが……こちらには目もくれてない今がチャンスだ。そろりそろりと、ナカセがイジっていた端末に近づく。


「いい加減起きろメタ犬。再編派の端末を回収するから、お前も手伝え」


<<ふわぁぁん……もう朝ワン……?って、“あいつ”がいるワン!隠すワン!早く01を隠すワン!!>>


 伸びをしたかと思ったら、驚いたように飛び跳ね、転げながら足元に隠れるメタ犬。慌ただしい奴だな。


 大体、メタ犬がビビるあいつってササヤさん(仮)の方のようだが、何をそんなにビビるんだ?


「いいから行くぞ。二人仲良くヤりあってる今がチャンスなんだよ」


 見ると、激しく火花を散らしながら鍔迫り合いをしている最中だった。向き合う二人の顔、あくまでも無表情なササヤさん(仮)と、冷静を装いながらも隠しきれない狂気が浮かぶナカセ……何にしてもヤバい二人なのは間違いない。


 そして激しい衝撃波を走らせながら、弾け飛ぶように距離を取る二人。


「天使の形して、やることは姑息……目障りなその翼、へし折ってあげる」


 その言葉と共に、ナカセが持つ剣の刀身が分節化、その姿を鞭状へと姿を変えた。ギミック武器……カッコええやんけ……


 そして、身にまとう機動鎧甲の左の肩に乗る犬の頭、その片目が赤い光を放ち始め……


<<観測開始……演算中……対象ノ破壊可能……>>


 何やら声が聞こえてきた。この響き、バーゲストの語り口にそっくりだが……


<<このノード署名……もしかしてオル兄ぃ!?ほんとにほんとにオル兄ぃ!?一体どこで何してたんだワン!!>>


「ば、バカやろう!どこに行くつもりだ!?巻き込まれるだろ!」


 突然そう叫んだかと思うと、ナカセに向けて走り出すメタ犬を必死になって止める。クソッ、なんて力だ!義手の動作制御をイジってまで振り解こうとしてきやがる!


<<放すワン!オル兄ぃが!オル兄ぃがあそこにいるワン!01はあの時、離してしまったワン!また置いてくのはイヤだワン!!>>


 暴れるバーゲストを何とか抑え込んでいたが、ふと例の二人がこちらを見ているのに気がついた。わっー!見つかっちまったじゃねぇか!


「……待機中コードに反応あり。生体内部より干渉信号、確認。この個体……内部に、憑依型が“共存”している……!?」


「この信号……ただの迷い込みかと思ったけど……あなたの中にも“いる”のね」


「あははどうも……お構いなく……」


 暴れるバーゲストを抱えて、そろそろと後退りする。なんだ二人とも。俺を見ているんじゃなくて、まるでメタ犬を見ているような……そんな目付きをしてやがる。


 こちら目掛けて二人がやや腰を落とした臨戦体制になる。メタ犬はこんなんだし、もうダメだ……!と思ったその時、激しい衝撃、轟音と共に壁を突き破って巨大なリソーサーが現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ