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報告書40「横須賀海軍施設跡」

 そして到着した横須賀駅ダンジョン。隔離壁前の自衛軍め、何かピリピリした様子だったが、やっぱり何かここで企んでるんだろうか。


<<まずは横須賀駅ダンジョンの中心地まで行くのじゃ。そこから海沿いに歩けば、基地跡に到達できるでのう>>


「了解よ。駅ダンジョンは狭いけど、エリアとしては広大だから、ナビお願いね。


<<もちろんじゃ>>


 崩壊した住宅街を駅に向かって歩く事数分、無事に横須賀駅ダンジョンが見えてきた。駅舎に掲げられている、くすんだ青くて丸い看板に描かれているのは何だろう……カモメかな?海辺の駅だけあるな。


 駅舎を抜け、中に入る。そこはホームは一つ、線路は二つと何とも“優しい”駅ダンジョンだった……と思いつつ湾側を見て言葉を失った。


「あれは……軍艦なのか!?」


 駅ホームから見える湾内に見えたのは、複数隻並んでいる大きな大きな艦艇だった。どれも着底してしまったのか傾き、外壁はリソーサーに食われたのかボロボロで錆びてしまっているが、こう並んでいると、威圧感がすごい……


「空母に揚陸艦に駆逐艦……伝説じゃ第7艦隊丸ごと突如現れた巨大リソーサーにやられたって話だけど、まさに兵どもが夢の跡、ね」


<<横須賀と言えば、幕末から続く一大海軍基地なんじゃがのう……世の中がいかに変わったか、思い知らされるようじゃ>>


「あ……あぁ、げに恐ろしきはリソーサーだな……」


 圧倒的な光景を見て、思わずスキャナー内蔵のカメラで何枚か撮ってしまった。しかしこうやってみると、海ってのは恐怖の象徴だな。この薄暗い海面の下には、未だ巨大リソーサーでも潜んでるんじゃないかと思うと恐怖心しかない。


<<何少しづつ湾側から離れてるワン?さっさと行くワン!>>


「わ、分かってるよ!」


 湾沿いの道をひたすら歩き、森が見えてきた頃に、何やら大きな道路が何本も入って行く場所が見えた。どうやらここがメインゲート、つまりここからが基地跡って訳だな。


「イクノさん、基地エリアの入り口まで来ましたけど、異常電波とやらがどこから発生しているか、詳しい場所は分かりますか?」


<<ううむ……その半島状の地形のどこかじゃとは思うんじゃが、なんせ電波が全体から出ておって……待てよ、これはもしかしたらじゃが……>>


「どうしたのイクノ?」


<<ちょっと確かめたい事があっての、乾ドック方面にまずは行ってみてくれんかのう?>>


「了解、湾側に向かうわ」


 どうやら、この広い基地跡を当てもなく歩き回らずに済むようだ。オペレーターのありがたみが身に染みるね。早速指示に従い、俺とチトセはメインゲートから伸びる道路沿いを歩いていくと、乾ドック内に横たわる、ボロボロな駆逐艦が見えてきた。ここが整備能力も備えた、大規模な海軍基地だったてのが実感させられる。


「あーあ、諸行無常を感じるな」


「何悟ってるのよ。それより前方30、建物の影から出てきる」


「あれは……」


 チトセがブラスターで指す先を見ると、そこには金属性の光沢を持った、大きさは人間の子供かそれより少し大きいくらいだろうか、何やらエビのようなリソーサーがこちらに向かって警戒態勢を取っていた。いや、エビにしては上体が立ってて目がデカい……何より関節部分の色合いが派手だな。


「リソーサー・スキュラルス……シャコ型リソーサーよ。厄介なのに見つかったわね」


「厄介って、一匹だけじゃないか。友好的では無いようだけど、さっさと倒しち……」


 そう思った時だった。こちらを見つけた一体の目が派手に点滅したかと思いきや、ある個体は建物の中から、ある個体は岸壁を登って、またある個体……いや団体は乾ドック内の駆逐艦からゾロゾロと出てきたのだった。


<<スキュラルスの群体データリンクじゃ!一匹にでも見つかれば、データリンクしておる群れ全てに見つかるという事じゃ!こうなってはもう倒すしかないぞ!>>


「ええい、くそっ!一斉にこっち見やがって!」


「行くわよ!あいつの初撃は受けちゃダメよ!」


 チトセの合図と共に抜き放ったキ影で先頭の一体に斬りかかる。攻撃はヒットしたが、装甲がそれなりに厚いのか撃破とならず。何やら折り畳まれたハンマー状の前腕から駆動系の軋みが聞こえるが、なぁに防御で流してもう一撃……


<<避けるワン!>>


「うお!?」


 バーゲストの声で咄嗟に横跳びした瞬間、シャコ野郎の前腕が……消えた……?いや違う、目にも見えない速さ、まさに爆速でパンチが繰り出され……!


「うがぁ!」


 そのパンチの恐ろしい事。避けたのに、当たってないのに、衝突音のような爆音と凄まじい衝撃波が走ったのだから、視界が一瞬揺らぎ、思わず態勢を崩す。一体全体、どんだけ強いパンチなんだ!?


 続けて二撃目が来たら危なかったが、チトセのブラスター連射がシャコ野郎を退けてくれた。


「しっかりしてよね!こんなところで死ぬ気!?」


<<全くだワン!頭キーンって、キーンてしたワン!>>


「な、何なんだあいつのパンチは!?というかそもそもあれはパンチなのか!?」


<<スキュラルスのモデルとなっておる、モンハナシャコは時速80kmの打突を放つのじゃ!水中でじゃぞ!?おまけにその速すぎる打突は水中に気泡を作るキャビテーション現象を発生させ、その気泡が爆縮時にエライ衝撃波と熱を発生させるという二段構造の打撃なのじゃ!>>


「いやここ水中じゃなくて、地上ですよ!?」


「そんなのがモデルのリソーサーなんだから、機械の身体で放つパンチはマッハを超えて、ソニックブームを生むってわけ!」


「ひぇ……」


 てことはつまり、この量のリソーサーが、その即死パンチを放ってくるて事か……?生きた心地が全くしねぇ!


 態勢を整えてキ影を構えたところで、そのシャコ御一行のおかしな行動が目に入った。群れのシャコが眼柄を動かし、一斉に一匹の個体を見ているのだ。その個体とは、俺が斬りつけ、チトセがブラスターを連射した個体。倒し切ってはいないが、中破はしている……


 次の瞬間の奴らの行動は、俺の理解を超えていた。

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