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報告書9「闇黒外装(ノクタリウム・ヴェール)」

 地下深い六本木駅ダンジョン、点々と続く血痕そして狭い車両……これらは全てリソーサー・ノブスマの罠だった。吸血で人間の知恵まで身につけたリソーサーなんて厄介この上ない存在だが、受注した任務である以上、このまま帰る訳にもいかない。とりあえず車両から出たはいいが、はてさてどうしたものか……


「狭い車両内を進めば、音も姿も消すあいつの奇襲を受ける。ならどうするって言うのよ?入り口に血でも撒いて出てくるのを待つ?」


「お断りだね。あんなやつに血の一滴でもやるもんか。ただ待ち伏せはいい案だ。幸い極近距離なら熱源センサーで探知できるようだし」


「それこそお断りよ。納期がすぐそこまで来てるってのに、そんな悠長なことしてられる訳ないでしょ」


 進むも地獄、退くも地獄、何ならただ待つのも地獄。話聞いた時から厄介な仕事だと思っていたが、想像以上だ。


「だーもう、ここで火でも炊いて煙で燻すか?」


<<ワンワン!お前はアホだワン!>>


「うるさい!単なる冗談だよ!」


<<機械生物はただの煙では追い立てられないワン!やるなら1人が中に入って追い立て、待ち伏せしてるもう1人が仕留めるんだワン!>>


「却下。チトセにまた危ない真似をさせるなんて薄情な真似はできんな」


<<薄情なのはお前だワン!お前が行くに決まってるだろワン!>>


「何でだよ!言っておくが、俺が死んだらお前も死ぬんだぞ!」


<<そんな事分かってるワン!それでも闇を統べるのは01であって、ウェイスターの悪知恵に汚染された古コウモリなんかには負けないんだワン!>>


 こいつめ……中々言ってくれるじゃないか。ただ知恵袋のイクノさんと通信できない以上、いい案も出そうに無いし、時間切れを待つくらいならこいつの自信に賭けるしか無いのも事実か。


「……一つ思いついた。俺が中に入って、奴を追い立てる。チトセはここで待ち伏せ、出てきた奴を仕留めてくれ」


「はぁ!?車両の中を進んだら奇襲を受けるという大前提を、あんた忘れちゃったようね!」


「なぁに大丈夫だ……多分。自信がある……らしい。やばくなったら引き返すから……直ぐにでも」


「自信があるのか無いのか分からないけど……分かったわ。今日のあんたの、その冴えてる勘に賭けましょう。危ない真似するんじゃ無いわよ」


 チトセに背中を叩かれ、車両内へと入る。てかあのメタ犬、何をどうするのか具体的な事を何一つ言わなかったが、もしかして俺は騙されているんじゃないのか?俺が死ねば奴が死ぬという前提も、そもそも何でこんな脳内同居生活になったのか原因不明な以上、怪しいもんだし……これは完全に早まったか……!?


<<ワンワン!>>


「どあぁ!驚かすなこのクソ犬!」


<<01を疑う暇があったら、周囲を警戒するんだワン!>>


「脳内盗聴やめろ!おちおち考え事もできないじゃないか!」


<<盗聴してるんじゃないワン!勝手に聞こえてくるんだワン!うるさくて敵わないんだワン!>>


 くそっ……次から頭にアルミホイルでも巻くか?と言ってもこいつは中にいるんだから、外に巻いても意味ないか……


「な事よりこれからどうするんだよ!こちらが見つかるよりも先にあいつを見つけないと、スライスされてお終いだぞ!」


<<さっきの遭遇時に分かったんだワン!ノブスマは超音波を出して標的を探知してるんだワン!>>


「なんでそんな事が分かるんだ?」


<<この機動鎧甲"ハチリュウ"バーゲスト仕様は01の前のボディをほとんどそのまま使ってるんだワン!だから01の身体同然、装甲表面の反応なんて手に取るように分かるんだワン!"八龍開眼"?なんて言うダサい名前の空間把握機能よりも高性能だワン!>>


「ダサくて悪かったな!そんな能力があるなら、どうしてそれをもっと早く言わないんだ!?」


<<何を言って何を言わないかは、01の専決事項だワン!ワンワン!>>


 クソ犬が……!


<<さて、相手の出方が分かれば打つ手はあるワン!複合迷彩"闇黒外装"起動だワン!>>


「なっ、おい!何かするなら最初に説明しろ……」


 俺の訴え虚しく、メタ犬の合図で機動鎧甲の何らかの機能が稼働したらしい。胸元のいけすかない黒犬の意匠の赤目が一際強く光り、追加されたバーゲストの外装が闇を放ち始めたのだから……


「ちょっと!大丈夫なの!?あんたの識別信号が消失、熱源センサーからも……てか全てのセンサーから消えたんだけど!?」


「あっ、あぁ!大丈夫だ!俺も自分が今どうなっているのか分からないが……とにかく大丈夫だ!」


<<闇を統べ、死を予兆する魔犬……我が名はバーゲスト……だワン!この状態なら、光学、熱源、音響、電波……とにかくあらゆる探知をかわせるワン!>>


 全てのセンサーから消失……あらゆる探知をかわせる……そうか、このメタ犬はジェボーダン時にあらゆるセンサーを抜ける固有能力を持っていたから、それがそのまま機動鎧甲に移植されたのか。これなら待ち構えるノブスマの裏を掻けるかもしれないっ!


「駄犬のくせに中々やるじゃないか!それじゃあ行くか!」


<<言い忘れたけど、この状態だとバッテリーを急速に消費するから、さっさとノブスマを見つけるワン!>>


 ガクッ。出所も気にせず、ついつい新機能にワクワクしてしまったが、機動鎧甲もメタ犬の手の内だと考えると、油断もできやしない……

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