テイク-24【じゃぱにーずギャンブル】
中野にある新居のマンションから歩いて10分ほど。小さな教会の角を曲がり、さらに5分進んだところに、お目当ての建物がある。
多数の釘が打ち込まれた盤面。そこに直径11ミリの鋼玉を左下から弾き出す。玉は構造物の干渉を受けながら落ちていき、いずれかの穴へと吸い込まれていく。
要するに――パチンコだ。
「今日は勝って勝ちまくってガッポがっぽ稼ぐわよー!」
店内BGMのユーロビートが、今の真花のテンションそのままを代弁していた。
「打つ台の目星はついてんのか?」
隣にいた龍二が、足を止めたまま訊いた。
「フフン♪ もちろんあるわよ」
真花は看板を人差し指で指し示す。そこには《新台入れ替え 陸物語導入!!》と、虹色の文字が躍っていた。
「とにかく新しいのは出るって相場がきまってんの♡」
ウィンクひとつ。小悪魔の余裕か、――それが吉と出るか凶と出るかは、まだわからない。
✳✳✳
「なんで当たんないのよー!!!」
叫び声だけが響く。盤面はうんともすんとも反応を返さなかった。
これが現実。そういうものなのだ。
「仕方ないさ、ギャンブルなんて所詮こんなもんなんだから」
龍二は苦笑を浮かべたまま、手元のレバーを撫でた。
「残額は残り1万……これで負ければ萌に殺される」
真花の目が画面と財布を往復する。続行か、撤退か。あるいは台移動か。
悩んでいるうちにも、玉は消えていく。選ばなければ、終わってしまう。
だが、その二人を違う島の陰から見つめる視線があった。
「間違いない、アイツ桜庭真花や」
顔に蛇の刺青を這わせた男が、声を低く漏らす。目が笑っていない。
もう一人の男がスマホを手に取る。指先の動きに迷いはない。
「斑さん! いま例の女が中野のパチンコに出没してます!!」
サングラスにモヒカン。いかにもな風貌の男が、手際よく連絡を入れていた。
「はい……はい……見張っておきます」
「すぐに向かうさかい……待ってろ」
斑は変わらぬ声色で通話を終えると、ジッポーの火を灯し、タバコをくわえた。
ひと息、煙を吸い込む。そのまま吐き出した言葉が、命令だった。
「例の女、桜庭真花が見つかった。すぐに怪人連れて向かうど」
その一言で、待機していた蛇ノ目會の連中が一斉に動き出す。誰ひとり声を発しない。
斑は最後に、ひときわ白い煙を空へと押し出した。
「追放された女と怪人と魔法少女……なんやけったいな三つ巴が始まりそうやな」
薄く笑いながら、灰を落とす。




