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第三話エンカウント③

 目が覚めるとそこは知らない太ももだった。

 どうやら私、日隠朝菜は白いくねくねしたやつを見た後、謎美(謎の毒舌美少女忍者の略)さんに介抱されてたようだ。


「白いくねくねしたやつ!」と声を上げれば謎美さんに何言ってんだ? という目でみられる始末。実際、辺りを見回すとここはバス停でくねくねしたやつの影も形もない。

 いや、まぁ見れるのは私のようなものくらいだからと孤独感を覚える。


「あなた、寝ぼけてるの?」


 寝ぼけてるのだろう。一般的には見えないものが見えてしまうのは、夢だからに違いふぁい。


「これが痛みよ。起きなさい」

「ちょっと、いきなり頬つねらないで下さい」

「頬をつねったわ」

「申告制ではないんですよ」


 しかも事後報告だし。

 それはそれとして我が愛車の姿がない。事故を起こした拍子にどっかいってしまったのか?


「あの、私の自転車知りません?」

「ああ、今度届けるわよ」


 それなら良かった。どうやら我が愛車は無事らしい。


「これで貴女を助けたのは三回目ね」


 謎美さんは足をクロスして粛々と言う。なんか、主人公がピンチに遭ったときに助けてくれるキャラみたいな。実際その通りなのだが。


「そうですね。ありがとうございます。謎美さん」


 あ、その表情クラスで私が誰かの名前呼ぶ時とそっくりな反応。


「雨宮紗夜」

「え?」

「私の名前。二度とふざけた名前で呼ばないで。じゃないと・・・・・・」


 そう言って彼女の指さす方向を辿ると。


「ああ! 私の愛車が!」


 見るも無惨な姿でボロボロになってる自転車の姿が。


「大丈夫よ」

「なにが!?」

「私が直しとくから」

「ええ・・・・・・?」


 正直、感謝よりも何者だよって気持ちが勝ってしまった。


***


「雨宮さんって」

「紗夜」

「紗夜さんってもしかして私と同じ学校ですか?」


 見るからに彼女の身なりは制服だし、ここらへんの高校はあそこしかない。という意味もあり、そう質問したのだが。


「学校?」


 はて? と首を傾げる彼女。そうか、帰国子女か。


「すみません言い方が悪かったですね。ハイスクール」

「?」


 不思議そうな顔で見られてもこっちが不思議なのだが。


「あなた知らない言葉を使うのね。よくわからないわ」

「なんと」


 なるほど。もしかして言語体系の違いか?うんうんと頭をうなる。

 でも、見るからに制服も少し色あせてるけど、うちの学校と同じなんだよなぁ。


「それでなんだけど朝菜」

「・・・・・・」

「朝菜?」

「あのぉ、どうして私のこと下の名前で呼ぶんですか?」


 私がそう訊ねると彼女は眉を顰めてなにを馬鹿なことを聞いてるんだ? って顔をする。


「そう。朝菜は知らないだろうから教えておいてあげるけど、親しい仲同士では下の名前を呼び合うのよ」


 豆知識ひとつ披露したみたいにさらっと言い除けるが、騙されないぞ。堂々としてれば案外通る説。なんて企画でもはい、そうですね。とはならない。


「私達、いつから友達になったんでしょう?」


 やれやれといった風な顔で首を振る彼女。

そのまま手刀を片手に私に近づく。


「やっぱり寝ぼけてるのね。叩けば直るかしら?」

「ごめんなさい」


 状況はかなり理不尽だが、謝らなければ不当な暴力を受けることになってたので、素早く謝罪する。


「まぁ、いいわ。今に始まったことでもないしね。それで朝菜」

「はい」

「貴女、私に恩があるでしょう?」


 げ、その聞き方なんかすっごい立場わからせてくる聞き方だ。


「そうですね」

「ええ。ええ」


 なんかすごい嬉しそう。まるで夕食がカレーだった時の私みたい。


「それでね。貴女はきっとお礼がしたいと思うわけじゃない?」


 思うけど、思わせるのは違うのでは?


「そこで私はこうお願いするのよ。なら、雨の日の放課後は必ずここに立ち寄ってくれる?って」

「え? 普通に嫌ですけど」

「そこで私は」

「嫌です」

「そ」

「嫌」


 さっきまでのニコニコ口角さんが下がっていく。


「ねぇ。なんでそんなこと言うのかしら?」


 彼女は少し涙目で抗議の視線を送ってくる。

 私も友達いないからわかるけど、彼女も多分いないんだろうな。


「じゃあ。命令」

「拒否します」

「なんかこう。もうちょっと考えてくれてもいいんじゃない?」


 そうは言っても嫌なものは嫌だからな。放課後、寄り道したくないし。お祖母ちゃんが心配するし。


「じゃあ。いいわ」


 そう言って彼女は立ち上がる。何をするつもりか目で追うと一歩前に歩み出た。


「濡れますよ?」


 私が声をかける。遠くからバスの音がする。


「さよなら」


 気づいたときには、私はベンチから跳ね上がり彼女目掛けて体当たりをしていた。


 ***


「なにやってるんですか!?」


 道路の端に押し倒す形になった彼女に怒号にも近い声で問いただす。


「そこで私はこうお願いするのよ」


 彼女の瞳が妖しく光る。


「なら、雨の日の放課後は必ずここに立ち寄ってくれる?って」

「どうして・・・・・・」


 ああ、わかった。この人は――


「コラ! 嬢ちゃん何飛び出してるんだ!」


 バスのライトが煌々と私達を照らす。


「指切りしましょ?」


 そこに映った影は一つしか無かった。


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