07
朝。クロは身支度をし、朝食を作った。
「食べれるといいな…」
フライパンにベーコンを敷き、上から卵を入れ蒸し焼きにした。匂いに釣られて、明楽は起きた。
「もう朝…いい匂い」
明楽はゆっくりと地面を歩いた。
「おはようございます」
クロは笑顔で挨拶した。
「昨日はごめんなさい。でも、おかげで気持ちが楽になれた。ありがとう」
「いえいえ。さ、食べましょうか」
さらにベーコンと卵を乗せ、明楽に渡した。
「食べれるだけでいいので」
簡単な料理だが、匂いにそそられ明楽は口に入れた。
「おいしい…」
「よかったです。ご飯はどうしましょう」
「久しぶりに、パンが食べたい」
クロはトースターにクロワッサンを入れた。しばらくすると焼き上がり、明楽に渡した。
「サクサク…」
「今日は食欲ありますね。よかったです」
明楽はゆっくりと食べた。
「今日は何時頃帰って来れる?」
「今日は授業がみっちりあるので、遅くなるかと」
「わかった。クロは大学優先でいいからね。学生だから」
「えぇ。わかってます」
明楽は久しぶりに食べ切った。
「美味しかった。ありがとう」
「よかったです。今日もお仕事無理しないでください」
明楽は身支度をした。
「じゃぁ、行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ」
明楽は玄関を出た。クロは食器を片付け、大学へ行く準備をした。
「今日は一限から六限まで…みっちりだな」
クロも玄関を出た。
明楽はパソコンで資料を作成していた。
「三月さん。これも」
新塚がまた大量の資料を明楽の机に置いた。
「わかりました…」
新塚はそっぽをむき、自分の席に戻った。
“明楽さん”
パソコンの画面に小さくエナジーがメッセージを送った。明楽もメッセージを送った。
“どうした”
“例の情報が入りました”
“お昼に確認する”
そう打ち込み、業務に戻った。そして、昼になった。皆が昼食で席を外してる中、明楽はパソコンに向かった。
「で、情報とは…」
「新塚の情報と、この警視庁の図面を入手しました」
「でかした」
明楽はパソコンに集中していた。
「…ここ怪しいんじゃ」
「明楽さん…何見てるんですか?」
明楽は驚き、後ろを向くと設楽がいた。
「てか…その図面…」
明楽は隠し持っていたナイフで設楽を追い詰め脅した。
「ひぃ!」
「うるせぇ。どこまで見たんか知らないけど、あんたを解放するわけにはいかんな」
ナイフを設楽の首元に近づけた。
「死にたくないなら、この事は誰にも言わずに定時になったら私と来て」
「は…はい!」
明楽は設楽を開放し、ナイフをしまった。
「あんたさ、警察官でしょ。そんな弱気じゃ、やっていけれないわよ」
明楽はパソコンに戻った。
「すみません…」
「どうして戻ってきたの?」
設楽はふらつきながら、自分の席に座った。
「財布をわすれて…」
「鈍臭いわね」
「すみません…」
「お昼食べた?」
「いえ…まだです」
明楽はため息をついた。
「一緒に食べる?見張ってないと、あんたを信用できない」
「あぁ…わかりました」
明楽は設楽を屋上に連れてきた。
「明楽さん…何調べてたんですか?あの図面って…」
「ここでは言いたくない。聞かれるかもしれない」
「て、明楽さん。何も食べないのですか?」
設楽はパンを食べていた。
「食欲ないの。ごめんね」
明楽は柵にもたれていた。
「これだけ言える。誰かに言ったら殺すよ」
「いいません!」
明楽はニコッとした。
「私、寿命がもう短いの」
設楽は驚いた。
「え…だって…明楽さん。まだお若いじゃ…」
すると、チャイムが鳴った。
「話の続きは今日の夜言うわ」
「わかりました…」
二人は戻った。
「おいクロ!」
工藤と藤巻と加藤が来た。
「なんですか?」
「最近お前なにしてんだ?」
「なんのことでしょう?」
クロは腰に備えたナイフに手をかけた。
「最近あまりここの世界にいないよな。それに、授業も他のを受けてるし…お前何がしたいんだ?」
「別にいいじゃないですか。あなた方と関係ありませんし。おまけにあなた方と違って、もう自分の学部の単位はもう終わっていますし、一年の時から別の講義を受けていますよ。あなた方みたいにサボってはいません」
「俺たちは最近サボってませんよ」
加藤がそう言った。
「最近俺らいい先生に出会えて、心を入れ替えたんだ。教師の心得やこれからの未来に熱心な先生だ。お前の好きなライト先生と大違いだぜ」
クロはイラっとしたが、グッと堪えた。
「で、用はないんですか?」
すると工藤が喋った。
「俺はいつかお前を抜かす。俺が上だってことを証明して見せるから覚悟しとけ!」
クロはこの時よくわからなかった。いつもの脅しだと思った。
「ほう。忠告ありがとう。では…」
クロはライトの所へ向かった。
「工藤…あいつを殺れるのって…」
「あぁ、あの時にあいつを殺ろう。罪に問われない。俺たちの活動に反抗する奴はいいって言ってたじゃん。むしろ、谷川先生はいい先生だ…」
チャイムがなり、工藤たちは教室に戻った。
「今日は龍に襲われたらどうするのか、についての授業です」
ライトが教壇に立った。クロは後ろの席で授業を受けていた。
「龍は頭がよく、記憶力も一度見たものをずっと忘れないと言われています。これは、どの種族にも当てはまります」
黒板にわかりやすく書いて行った。
「そこで、もし仮にだ。龍に襲われる事があるとしよう。種族によっては臆病な性格の龍もいるので、驚いて襲ってくることもあります。これは、生き物ならよくある話です。もし、龍に襲われたらまず、横へ逃げましょう」
一人の生徒が手を挙げた。
「先生。それはなぜでしょうか」
「龍は急な横移動は苦手なのです。意外でしょう。龍は標的を確認すると、真っ直ぐ突進するか急降下します。なので、龍がこちらに向かってくると思ったら横に逃げましょう。もし、戦闘ができる人なら、翼を攻撃しましょう」
ライトは龍の骨格を出した。
「理由は、空からの攻撃を防ぐこと。翼で攻撃をしてくる事を防ぐ事です。翼を使えなくなると、龍も使える攻撃の範囲が狭くなり、不利になるのです。ただこれに関しては、襲っても来ないのに攻撃をするのは龍自身も人間の信用を失う行為です。絶対やめましょう。もし翼を攻撃するなら、翼の根本を攻撃すると、翼が動かなくなるので有利です。翼の皮膜を攻撃しても、飛ぶことが出来なくなるかもですが、翼が動くので翼で攻撃されてしまいます」
生徒たちは熱心に授業を聞いていた。クロもノートに書いて行った。
「龍は貴重な生き物です。数も少ない。そして今、龍を絶滅させようとする人もいますが、私は間違ってると思う。人に攻撃してこない龍を無理やり絶滅に追い込むのは間違っている。そして、この教室にも貴重なライダーがいます」
三十人ほどいる生徒の中に四人ライダーがいた。
「ライダーは差別されがちですが、私は差別する理由がわかりません。むしろ、尊敬しかありません。貴重な龍と絆を深め過ごしてほしいと思います。私はライダーではありませんが、ライダーとそうでない人が互いに仲良くなる世界が来る事を私は願っています」
チャイムがなり、生徒たちは片付けをした。
「ライト先生ほんといい先生だよな」
「俺、こいつとライダーしててずっといじめられてたけど、ライト先生に出会えてよかった」
「龍の事を考えてくれる数少ない先生」
そんな声が聞こえてきた。生徒が教室から出て行き、クロはライトの教授室へ入った。
「いたのか」
ライトはお茶を入れていた。
「いい授業でした。ありがとうございます」
お茶を一口飲んだ。
「そう言う生徒が一人でもいる事に、私は幸せを感じるよ」
「実は、工藤たちに叔父さんの悪口を言われて、少しムカついたんですが、我慢したんです。あいつら、最近谷川先生の授業に熱心なんですよ」
「まぁ、いい事じゃないか?元々成績不良の単位ギリギリな生徒が、やる気を出すのはいい事だ」
「あ、次の授業があるので…」
クロは教授室を出ようとしていた。
「クロ」
ライトは呼び止めた。
「谷川には気をつけろ」
クロは深く頷き、次の授業へ行った。
「お先失礼するよ。お嬢ちゃん」
遠藤が帰宅した。
「お疲れ様です」
明楽は設楽を見た。
「私たちも行くわよ」
「あ…はい…」
明楽と設楽も身支度をし、職場を後にした。
「えぇ…と…」
「地下鉄乗るわよ」
設楽を見張るように明楽は案内した。電車に揺られ、駅に着いた。
「ここで降りるよ」
駅をでて、明楽の家へ向かった。
「明楽さん。ここら辺に住んでたんですね」
「…」
家につき鍵を開けた。
「お邪魔します…」
「そこの椅子に座っていいよ」
リビングの椅子に設楽は座った。明楽はお茶を差し出した。
「あ…ありがとうございます…」
「で、何処まで見たの?」
明楽も椅子に座った。
「図面だけですよ…警視庁の…」
明楽は疑問に思った。
「誰も警視庁の図面って言ってないわよ。なぜわかるの?」
設楽はしどろもどろになった。
「いや…だって、警視庁って書いてあって…」
明楽はノートパソコンを取り出し、エナジーに接続した。
「エナジー。図面だして」
「わかりました」
エナジーはお昼に明楽に見せた図面をだした。明楽はノートパソコンを設楽に見せた。
「何処に書いてあるの?」
よく見ると、警視庁とは何処にも書いていない。図面には文字は一切書かれていない。
「あんた…何者?」
明楽はナイフに手をかけた。設楽は玄関へ逃げようとしたその時。
「すみません。遅くなりました…」
クロが帰ってきた。
「クロ。そいつを逃さないで」
設楽は強引に突破しようとしたが。
「わかりました」
クロは設楽を捕まえ、持ち上げた。
「ひぃ!」
「明楽さんの…お客さん?」
設楽は怯えていた。
「まぁね。ただ、尋問いるかも…」
「ほう…私…得意なんですが。尋問」
メガネをカチッとした。
「じゃぁ、パソコンの部屋に連れてきて。ガレージと兼用してるから、汚れても大丈夫」
「御意」
設楽はもがいたが、クロには敵わなかった。
「なんなんですか!明楽さん!俺が何したって言うんですか!」
明楽は黙っていた。
「クロ。そこに吊るしていいわ」
明楽はロープをクロに渡した。クロは設楽を吊るした。
「ナイフがいいですか?それとも鞭?」
明楽は椅子に座った。
「使う武器はクロに任せるわ」
「では…」
「わかりました!いいます!」
設楽は涙で顔がぐちゃぐちゃになっていた。
「俺は、元々図面とかを読むのが得意なんです。学生の時、図面を専攻していましたし。警視庁の防災の時の避難経路の図面に似てたので…」
「でも、それ見ただけでこれと何処が一致したの?階数も書いてもない。何処の部屋かもわからない」
「地下の駐車場の図面です…」
明楽は驚いた。
「クロ。もう降ろしていいわ」
「いいんですか?明楽さんを襲うかもしれませんが」
「大丈夫。武器持ってるから」
クロは設楽を降ろした。
「クロ。夕飯作って。あと、設楽さんの分も用意してあげて」
「明楽さん。今日の体調は…」
明楽はクロを見た。
「大丈夫よ。ありがとう」
クロは調理をしに行った。
「あなたは何者なの?」
設楽はゆっくりと立ち上がった。
「普通に図面の学部がある大学卒業して、警視庁に入社しただけです。前、明楽さんにも言ったと思いますが、想像する事が好きなだけです」
明楽は設楽にハンカチを渡した。
「強引にしてしまってごめんなさい」
設楽は涙を拭いた。
「いや…疑われる事してしまった私も悪いです…」
明楽は設楽をリビングへ連れて行き、椅子に座らせた。
「明楽さん…その…」
「なに?」
「彼?は誰なんですか?」
明楽はクロを見た。クロは鍋の味を整えてた。
「あぁ。彼はクロ。私のボディーガードで大学生」
「大学生!?」
設楽は驚いた。
「そうよ。それに強い。いいボディーガードよ」
するとクロが料理を運んできた。
「野菜たっぷりのスープパスタです」
「設楽さん。食べて」
設楽は箸を手にした。
「いただきます…」
設楽はパスタを食べた。
「うまい…」
体がホッとする感じになった。
「クロは料理もできるのよ。ほんと優秀なの」
「恐縮です」
明楽もパスタを食べた。
「うま…クロ。ありがとう」
「どういたしまして」
設楽はあまりの美味しさに、すぐに平らげた。
「ご馳走様です…」
「今日は帰りな。もう何もしない。ただ、口外したら…」
「しませんよ!ただ…」
「ただ?」
明楽はお茶を飲んだ。
「何が起きているのか教えてください。その事も誰にも言わないので…」
明楽はため息をついた。
「いいわ。教えてあげる。クロ」
「なんでしょう」
「あなたにも教えてあげる。あなたは強い。いざってなったら逃げ切れるから」
「恐縮です」
明楽はノートパソコンを用意し、テーブルにおいた。
また投稿が遅くなるかもなので
申し訳ありません
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