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大学生クロの物語  作者: 三日月明楽
6/23

06

「あ!谷川先生!」

工藤が谷川を見つけ、声をかけているところを、クロは見ていた。

「工藤くんじゃないか。どうしたんだい?」

「さっきの授業のことですが…」

谷川は特別講師として、よく大学に来ることは知っていた。工藤は谷川の話を熱心に聞いていた。

「さて…叔父さんのところに行きますか…」

クロは叔父さんの教壇があるところへ向かった。

「叔父さん」

「クロ。調子はどうだ?」

授業が終わったばかりなのか、ライトは片付けをしていた。

「相変わらずです。バイトの方も楽しんでしてます」

「それはよかった。ところでクロ」

「なんでしょう?」

「バイトの子は、体大丈夫なのか?」

ライトの肩に一羽のカラスがいつの間にか止まっていた。

「長くはないと本人は言っていました。だから、俺はなるべく本人が後悔のない様にサポートしていきたいと思っています。一つの社会勉強にもなるし、何よりあの方から学ぶ事が多くて勉強にもなるので」

「君がそう言うんなら、その方をフォローしてあげなさい。あの子の事は、私も見守っているから、安心してなさい」

「ありがとうございます」

「それと、ちょっと荷物を運ぶの手伝ってくれますか?」

「もちろんです」

クロはライトの数冊の本を運ぶのを手伝った。

「今日は、もう授業がないので城へ帰ろうと思います」

「そうですか。俺は午後から一限だけ授業があるので」

「うむ。頑張って励みなさい」

ライトの机に本を置いた。

「ありがとうな。クロ」

「いえいえ。叔父さんも気をつけて帰ってください」

クロは授業に向かった。



「終わった〜」

明楽は伸びていた。

「お疲れ様です」

設楽が声をかけてきた。

「新塚さん。三月さんにきついですね」

「そう?こんなもんじゃない?女同士は」

明楽は帰る支度をした。

「では、お先失礼します」

明楽はカバンを持って出て行った。電車に乗り、家へ向かった。

「明楽さん。大丈夫ですか?」

イヤホン越しにエナジーが声をかけてきた。

「うん…大丈夫」

なぜか冷や汗が止まらなかった。家に着くと、クロはいなかった。

「大学なのなか?」

しかし、立ってるのもやっとなのか、ベットに倒れ込んだ。

「ごめん。休ませて」

「わかりました」

明楽は深い眠りについた。


夢を見た。戦場で仲間が殺されている所を、明楽は銃を片手に逃げていた。

「誰か…」

必死に走ったが、向こう側にも敵がいた。

「はっ!」

明楽が銃を構える前に、相手の銃が撃たれた。弾丸は明楽の右目に当たった。

「うぐぁーー!」

明楽は悲鳴をあげ倒れた。あまりの激痛にのたうちまわった。

「明楽さん。大丈夫ですか?」

無線からエナジーの声が聞こえた。相手は次の攻撃を仕掛けようとしたが、去って行った。

「明楽さん。今応援呼びます。辛抱してください」

明楽は痛みに必死に耐えていた。医務室で明楽は眼球を取る手術をしていたが、痛みは無いが鮮明に覚えていた。

「私…目が見えなくなるのか…」

手術中明楽はそう思っていた。


目を覚ますと、さっきより体が落ち着いており、呼吸も楽になっていた。

「目が覚めましたか」

クロが入ってきた。明楽は酸素マスクをしていることに気づいた。

「クロがしたの?」

「はい。エナジーの指示の元ですが」

「ありがとう」

明楽はゆっくりと体を起こした。

「ごめん。ちょっとお腹すいた」

「暖かい御うどん作りましたが…食べますか?」

「うん。ごめんだけど、ここで食べていい?足に力が入らない…」

クロは御うどんを茶碗に入れ明楽に渡した。

「いただきます…」

明楽はゆっくり食べた。

「美味しい…」

しかし一口だけ食べて終わった。

「大丈夫ですか?」

「うん。ごめんね」

「いえいえ」

クロは明楽の残りを片付けた。

「クロ…ごめん。手貸して」

「どうしましたか?」

「シャワー浴びたい」

「大丈夫ですよ」

クロは明楽の着替えとタオルを用意した。明楽を支えながらシャワー室に向かった。

「シャワー室に椅子用意したので座ってシャワー浴びてください」

「ありがとう」

服を脱ぐのを手伝い、明楽はシャワーを浴びた。その間、クロは片付けをしていた。

「クロさん」

明楽のスマホからエナジーが呼んでいた。

「どうしましたか?」

「申し訳ありません。明楽さん…今日調子が最悪なのです。会社で大量の血を吐いていました」

クロは驚いた。

「え…」

「今は数値は安定しているのですが…」

クロは疑問に思った。

「エナジー。なんで明楽さんの数値がわかるんですか?」

「それは…」

エナジーが答えようとした時、明楽がクロを呼んだ。

「クロ…ごめん」

クロは明楽の所へ行った。

「着替え手伝って欲しい」

クロは笑顔になった。

「大丈夫ですよ。遠慮なく言ってください。明楽さんには尊敬しかありません」

クロは明楽の体を拭き、着替えの介助をした。

「髪の毛も乾かしますね」

クロは明楽の髪を乾かした。すると、明楽は涙を流した。

「ごめんね…」

「明楽さん?」

頭を乾かしてる間、明楽は何も喋らず涙を流した。乾かし終えると、丁寧に髪をブラシした。

「終わりましたよ」

「ありがとう」

また明楽を支えながら、ベットに連れて行った。ベットにつくと、明楽はゆっくり座った。

「ごめん。私、今日弱い日だわ」

明楽は涙を拭いた。

「そんな日もありますよ。無理はしないでください。心配します」

「ごめんね」

「片付けてきますが、少し一緒にいた方がいいですか?」

明楽は少し考えた。

「いいの?」

「えぇ」

クロは明楽の部屋にあった椅子に座った。

「クロって、ほんと優しいね」

「そんな事ないですよ。でも、私は明楽さんには敵いません」

明楽は俯いた。

「さっき夢見てたんだ。任務で私右目撃たれた夢でさ。実は私。右目見えないの」

「え…でも、眼球あるじゃ…」

「これは、義眼にエナジーを埋め込んであるの。まぁ、機械を埋め込んでるって思えばいいよ」

そう言うと、明楽は右目の瞳の色を白色に変えていた。クロは驚いた。

「え…どうなって」

「機械でやってるのよ。でもさ、右目摘出の手術さ麻酔は多分してたけど、意識バリバリでさ。あぁもう見えなくなるのか…て思ってたよ。今は見えないけど、エナジーが私と同じ景色を見れるし、私の体の管理も見てくれてるから、ありがたいよ」

「明楽さん。すごいですね。でも…」

「でも?」

「もう、休んだらどうですか?明楽さんを狙う奴は私が排除します」

明楽はニコッと笑った。

「言ってくれるだけでも嬉しい。ありがとう」

でもどこか悲しい表情だった。クロはすかさず明楽を抱きしめた。

「明楽さんは、頑張りすぎです。弱音を吐いてもいいんですよ」

明楽はどっと涙が溢れた。

「死にたくない…苦しいの…もう嫌」

クロの胸の中で泣いた。クロは抱きながら明楽の背中を撫でた。

「任務ももうやりたくない。もう長くないから、苦しんで死にたくない。死ぬまで恐怖を味わうの嫌」

溜め込んでいた気持ちを、一気に発散した。

「明楽さん…」

明楽が泣き止むまで、クロは抱きしめていた。

しばらくすると、明楽は落ち着いた。

「ごめんね…」

「全然。むしろ、言ってくれて、ありがとうございます。さ、今日は休みましょう」

「ありがとう」

明楽は横になり眠った。クロはそっと明楽の部屋を出て、残ってる片付けをした。

「クロさん…」

明楽のスマホからエナジーが声をかけてきた。

「ちょうど片付いたところだ」

「すみません。明楽さんの事、何から何まで…」

「大丈夫ですよ。明楽さん、我慢しすぎなんですよ。私がいる時は、我慢せずに我儘や弱音を吐いてもいいんですよ。でも…」

「でも?」

クロは考えていた。

「苦しんで死にたくないとおっしゃってたので、そこをなんとかしてあげたい」

「…といいますと」

「私も勉強不足なので、勉強してきます。それでは、シャワー浴びてお休みさせていただきます」

そう言うと、着替えを持ちシャワーを浴びて部屋に戻った。

「叔父さんに聞いてみるか…」

ノートに記録し、クロは眠った。


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