04
「君の組織の三月さん。優秀じゃなか。銃の命中率すごいじゃないか」
男はダニエルに話した。
「そうでしょう。彼女は私の犬なので。もっとこき使ってください」
「井上くんもだろ?」
男は井上に目を向けた。
「はい。仕事面では、早くて助かってます」
「じゃぁ、サラちゃん。そろそろ行こうかな」
男は女の尻を触った。
「はい…海老名警部」
女は鋭い目つきで海老名を見た。
「井上くん。サラちゃん、しばらく入れて三月さんの観察させるから。面倒みてね」
「わかりました」
夢をみた。明楽は潜入先でターゲットからホテルへ案内されていた。
「君かわいいね」
「ありがとうございます」
部屋に入ると、ターゲットは荷物を下ろした。そして、明楽に抱きついた。
「一緒にシャワーどう?」
「私…一人で入りたいです。あなたが入ってる間に、この部屋の雰囲気作っておきますよ?」
「お!それは楽しみだな」
ターゲットがシャワーを浴びてる間、明楽はターゲットのスマホをエナジーに接続した。
「明楽さん。こっちは任せてください」
「頼んだよ」
すると、ターゲットがシャワーから出てきた。腰にタオルを巻いて。
「空いたぞ」
「はーい」
明楽はシャワーを浴び、バスローブを羽織った。
「一気にエロくなったね。こっちこい」
明楽はターゲットの横に来た。
「いい匂いだ。かわいいね」
「ありがとうございます」
男は明楽を抱きしめる隙に、明楽の首に何かを刺した。
「うっ!?なにを…」
明楽は距離をとったが、目眩なのか立ってることができなくなった。
「君が殺し屋だとすぐわかった。ゆっくり苦しめ。でも、君素敵だな。死ぬ間際に抱いてやろう」
男が襲いかかった。明楽は太ももに仕込んだナイフを取り出し、力を振り絞った。
「このクソが!」
一気に立ち上がり、男の首を切った。男は声もあげず、その場に倒れた。
「エナジー…」
「明楽さん!」
「教官に…連絡…」
明楽もその場に倒れてしまった。
目を覚ますと、朝になっていた。
「おはようございます」
クロが入ってきた。
「おはよう…起こすの手伝って」
明楽を起こしてあげた。
「今日は仕事お休みですよね?」
「うん。ほんと、休みでよかった」
「私も大学が休みなので、一日看病しますよ」
「ありがとう。でも、朝ごはんはいいや。食べる気がない」
「わかりました。飲み物は?」
「コップに水入れて」
クロはリビングへ行き、コップに水を入れた。明楽に渡し、ゆっくり飲んだ。
「大丈夫ですか?」
クロは明楽の背中をさすった。
「うん。大丈夫。ありがとうね。せっかくの休みなのに」
「いえいえ。なんでも言ってください。出かけたいのであれば、同行しますよ」
クロはカーテンを開けた。
「今日はいい天気ね…」
「はい」
明楽は時間を見た。
「クロ。ちょっと出かけるから、同行お願いしていい?」
「もちろんです。準備しますよ」
「ありがとう」
明楽は数少ない普段着を取り出し、着替えた。
「久しぶりに着るな…」
クロを見ると、いつものスーツスタイル。
「え…服ないの?」
「これしか私は着ません」
「そ…そうなのね」
カバンを持ち、玄関を開けた。
「それじゃ、出かけますか」
明楽とクロは地下鉄に向かった。
「明楽さん…すみません。電車?に乗るの初めてです」
「え!?普段どうやって移動してたの…」
「ちょっと言えないやり方で…でも、大学は徒歩ですよ」
すると、電車が到着した。明楽はクロの手を取った。
「一緒に乗ろ」
電車の扉が開くと、乗客に紛れて明楽とクロは入った。
「三つ目の駅で降りるよ。結構揺れるから、その吊り革に捕まってるといいよ」
「わかりました」
クロは吊り革を握り、電車の揺れに耐えていた。
「結構揺れますね…」
「まだこれくらいは序の口よ」
「えぇ…」
「クロはどうやって移動するのよ。言えないやり方って言われても、思い浮かばないんだけど」
クロは悩んだ。
「内緒ですよ…瞬間移動…です」
「うそだー!」
「本当ですよ?」
そうこう言ってるうちに目的の駅のついた。
「ここで降りるよ」
ゾロゾロと降りる乗客に紛れ降りた。
「階段登るよ」
明楽に引っ張られ、階段を登り改札を出た。大きい駅なのか、人で賑わっていた。
「ちょっと歩くけど、バスに乗るよ」
「人が多いし、お店も多いですね」
地下街を歩き、階段を登るとバスターミナルが見えた。
「四番線に行くよ」
四番線を見ると、そこそこ人が待っていた。
「どこへ行くのですか?」
「水族館行くの。シャチをみたくて。前から行ってみたいと思ってたんだ」
明楽の表情を見ると、どこにでも居る普通にお出かけを楽しむ女性になっていた。しばらくすると、バスが到着した。
「乗るよ」
切符を取り、座席に座った。
「バス初めて?」
「一回か二回しか乗ったことがありません…」
しばらくバスに揺られると、大きな建物が見えた。
「クロ!あれよ!」
バス停に停り、二人は降りた。
「大きい建物ですね…海が近いですか?磯の匂いが」
「となり海よ。さ、行こ?」
入り口で受付を済ませ、入場した。目の前には大きな水槽があり、シャチが優雅に泳いでいた。
「すごい…この世界にこういうのあるんですね…」
「シャチかわいい。みたかったんだよね」
二人はシャチの迫力に興奮した。
「すごい…」
「クロ!すごいよね!次は巨大水槽の魚たち見に行こ!」
明楽に引っ張られ、巨大水槽があるところにきた。
「おお〜」
「サメおっきいね!」
明楽はどこにでもいる普通の女性になっていた。いや。普通の女性。ただ、幼さが所々出ていた。
「明楽さん。素敵ですよ」
「どうしたの?」
「いえ。楽しんでおられて、私はいいと思います」
水族館を満喫した後、レストランに入った。
「メニュー色々あるね」
明楽はどれを食べようか迷っていた。
「クロも好きなの選んでいいからね?」
「ではお言葉に甘えて…」
明楽は店員を呼んだ。
「ビーフシチューと…クロは何する?」
「私も、ビーフシチューで」
店員はメモを取ると、オーダーを受け付けた。
「ありがとう。とても楽しいよ」
「明楽さんが楽しんでるところ見ると、私も楽しいです」
「ちなみに、こう言うデートって経験あるの?」
「全くないですよ。明楽さんが初めてです。ありがとうございます」
クロはお冷を口に運んだ。
「クロってさ、普通にかっこいいよね」
一瞬むせそうになった。
「いきなりそれ言わないでください」
「だって、モテそうじゃん?」
「女から告白されたとかはないですよ?むしろ、かっこいいとかってお言葉、明楽さんが初めてですよ」
「え…クロの世界って、価値観?違うのかな?」
「さぁ〜」
すると、頼んでいたビーフシチューが届いた。付属にパンが付いていた。
「いただきます」
「美味しそう…いただきます」
二人は同時にビーフシチューを口に運んだ。
「美味しい…」
「お肉柔らかい」
クロは付属のパンにビーフシチューをかけて食べた。
「めっちゃ合う」
「ほんと!?」
明楽も真似をして食べた。
「美味しい…」
あっという間に平らげ、店を出た。
「この後、どこ行きます?」
「ごめん。ちょっと辛くなった。家に帰ってもいい?」
「大丈夫ですか?もちろんですよ」
バスと電車に乗り、明楽の家へ戻った。
「クロ。ありがとう」
「こちらこそ、お昼ご飯ごちそうさまです」
明楽は部屋へ行き、ベットに横になった。
「大丈夫ですか?」
「うん。疲れただけ。クロ…」
「なんですか?」
「一緒に寝ない?」
クロはドキッとした。
「え…」
「嫌?」
「命令ですか?」
「命令ではない。でも、ごめん。寂しい」
するとクロは明楽の横に入った。そして、明楽を抱きしめた。
「これの方がいいですよね?私、女経験ないので…」
すると、明楽はクロの背中に手を回した。
「嬉しい。我儘言ってごめんね」
「いえ。ただ、明楽さんが今欲しいのは、愛情だと思ったので。今日のデートで明楽さん。すごく楽しんでて、嬉しかったです。毎日、仕事と任務をこなし、日に日に悪化する病気にも耐えておられる。少しでも、明楽さんが楽しい思いを感じていたら、私は嬉しいです」
「クロ…」
「明楽さんは、今この時間。どうですか?」
明楽は嬉しくて涙を流した。
「最高だよ。ずっと、こんな時間が続けばいいと思うよ。クロ…ありがとう」
明楽の背中を撫でてあげた。