表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大学生クロの物語  作者: 三日月明楽
3/23

03

「はい…すみません。でも、ターゲットは無事に殺りました」

明楽は電話を切った。リビングの椅子に重く座った。

「お疲れ様です。明楽さん」

クロはお茶を入れたマグカップを明楽に渡した。

「ありがとう…」

一口飲んだ。

「大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫。あぁ、忘れてたね。約束のこと」

明楽はクロを見つめた。席に座るよう促し、クロは座った。

「私ね、実は日本で生まれたの。でも、孤児でさ。引き取られてアメリカに渡って、訓練をさせられたんだ。潜入捜査もやったし、戦争の兵士としても参加した。たくさん人を殺し、仲間も死んでいくところも見た。そんな時にコンピュータを習って、エナジーを作成した。一人でも、犠牲を減らしたかったし、私のパートナー的な存在も欲しかった。まぁ、エナジーがいてくれてここまで来てるんだけどね」

「…大変ですね」

「で…ある任務で失敗した。潜入中に猛毒を浴びてしまった。持って数ヶ月とか言われてるけど、いつ発作がおきて死んでもおかしくないの」

クロは何も言えなかった。

「だから、実質これが最後の任務になると思う。任務が終わったら、死ぬか殺されるかの二択だと思うけどね。組織の情報持ってるから、漏洩防止のために…」

明楽はどこか寂しく言った。

「明楽さん…」

「だから、一度でいいから、普通の人間の生活してみたい。遊びに行ったり、美味しいもの食べたりしたいな」

すると、クロは明楽の手を取った。

「私にできることがあれば、言ってください。なるべく叶えてあげたい」

「クロ…うん。ありがとう。あなたが来てくれて、本当に良かった」

明楽は笑顔になった。どこか幼さが残っているように、見えた。しばらく談笑していると、明楽が聞いた。

「クロって、彼女いるの?」

ギクっと体が反応した。

「え…と…」

「いるの?」

「居ないですが…好きな子はいます…」

「お!」

クロはお茶を飲んだ。

「年下で離れています。と言っても、直接話した事があるのが一回だし、後は遠くから見守ってます」

「え…ストーカー!?」

「違います!近づいたり、嫌がらせなんてしてません!日中、大学に行ってるので行く暇がありません!」

クロは全力で否定した。

「どう言うことよー」

明楽は横目で見た。

「実は…叔父さんが連れてきたんです。事情は言えないんですが、生みの親が生まれてすぐに死んだんです」

「え…でも、父親は…」

「その辺りもちょっと言えないんですが、とりあえず親が居なかったんです。叔父さんが連れてきて、少し面倒見てたんですけど、ちゃんとした家庭で過ごしてほしい意味で、信頼できる家庭に預けたんですが…」

「どうしたの?」

「その子自体が幼くして家出したんです。自ら」

「え!?」

明楽は驚いた。

「居場所はすぐわかったんですが、そこで定着してしまったんです。なので、叔父さんがメインで見守ってるんです。私も、協力してるんですが」

クロがまたお茶を飲んだ。

「実は、明楽さんに初めて会った時に、驚いてしまったんです。あの子にそっくりだったし、名前も似ていたので…」

「そうだったんだ」

「見守るって言っても、生存確認だけです。学校で、どう言う生活してるかはさっぱりです。ただ、危険が及ぶようなら助けるつもりです」

それを聞いて明楽は納得した。

「ストーカーしてないからよかった」

「俺…ストーカー興味ないですよ」

「クロも男だからねー。男は何するかわかんないし。上の存在の人なんて、変な癖持ってる人も多くてさ。潜入でドン引きした事何度あるやら」

明楽は呆れていた。

「明楽さん。ここは私が片付けるので」

クロは立ち上がり、食器を片付けた。

「片付けてる間にシャワー浴びるわ」

着替えを持ち、明楽はシャワーを浴びた。すると、鼻血が出ていることに気づいた。

「え…」

鏡を見た。かなり出血していた。それと同時に激しい動悸がなり、しゃがみ込んでしまった。

クロは皿を洗っていた。すると、明楽のスマホからエナジーが声を上げた。

「クロさん!明楽さんが!」

クロはシャワー室に向かった

「明楽さん失礼します」

ドアを開くと、シャワーに当たりながらしゃがんでうずくまってる明楽がいた。シャワーを止め、タオルをかけてあげた。

「大丈夫ですか…?」

辛いのか声が出ない。

「体拭いてもいいですか?冷えるので」

そう言うと明楽は頷いた。クロは明楽の体を拭いてあげた。すると、明楽が少し落ち着いたのか動けるようになった。

「ごめん。ベットまでいい?」

明楽を支えながらベットに連れて行った。着替えを手伝い、明楽は横になった。

「大丈夫ですか?何か飲みますか?」

「いらない。本当にごめん」

「私は大丈夫ですよ。エナジーが教えてくれました。今日はもうお休みになってください。片付けは私がやりますので」

「ありがとう…」

クロは途中だったリビングの掃除をし、シャワー室を綺麗に掃除してシャワーを浴びた。部屋に行き、新しいノートを取り出し、今日の出来事をノートに記入した。すると、どこからか声がした。部屋を出て明楽の部屋に行くと、うなされてるのか苦しそうにしていた。

「明楽さん。大丈夫ですか?」

クロは明楽を揺さぶった。

「やめてーー!」

明楽は悲鳴と共に目を覚ました。呼吸が荒く汗もかいていた。

「大丈夫ですか?」

「クロ…」

「すごくうなされてたんですが」

「うん…ちょっと嫌な夢見た。ごめんね。もう大丈夫。ありがとう」

クロは明楽の事がどこか寂しそうに見えた。

「大丈夫ですか?明楽さんが眠るまで付き合いますよ」

「そこまでしなくても大丈夫だよ。子供じゃあるまい」

明楽は笑った。

「気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう。遅くまでごめんね」

「いえいえ。いつでも呼んでください。では、私もお休みします」

「うん。お休み」

「おやすみなさい」

クロは部屋を出て自分の部屋に行き、休んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ