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大学生クロの物語  作者: 三日月明楽
2/23

02

「井上くん。三月さんはどうですか?」

暗い部屋で男が呟いた。

「はい。仕事もできますし、何なら、我々のフォローもしてくれて有能です」

男の横にいた女はメガネをカチッと動かした。

「ほう…そうか。ところで井上くん。例の女性殺害事件は全部調べなくてもいいからな」

「はい。警察組織の闇が暴かれてしまいますからね」

「新人はそう言うのに噛み付く傾向があるから、必ず阻止するように」

「はい…」

男は女の尻を撫でた。女は驚き、ビクついた。

「サラちゃんはもうちょっと後だからな。それまで、よろしく頼むよ」

女は嫌な顔を一瞬したが、また元の表情に戻った。

「では、私はこれで」

井上は部屋を出て行った。



朝から猛烈な吐き気で目が覚め、明楽はトイレへ駆け込んだ。その音でクロも飛び出した。

「明楽さん。大丈夫ですか?」

「大丈夫…うっ」

しばらくトイレに引きこもり、落ち着いたところでリビングについた。

「朝食どうしますか?」

「少しでも、お腹に入れたいから。お粥がいい」

クロは急いでお粥を作り、明楽に渡した。

「ありがとう…」

明楽はゆっくりお粥を食べた。

「明楽さん。何か病でも持っているんですか?」

明楽は手を止めた。

「ええ。私は、あまり長くはない…」

「…そうですか。すいません」

「ううん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

お粥を半分残し、明楽は支度を始めた。クロも食器を片付け、大学へ行く準備をした。

「今日はどの位で終わるの?」

「五時には戻ってくる予定です」

「わかった。気をつけて大学行ってね」

「明楽さんも、気をつけてお仕事頑張ってください」

二人は玄関を出て行った。

明楽は電車を待った。明楽はイヤフォンをした。

「エナジー…」

「何でしょう」

「少し、怖くなった…」

「…今は安定しています。大丈夫です」

電車がきた。朝の満員電車。明楽も揉まれながら、何とか乗り込んだ。電車に揺られていると、お尻を触ってくる人がいる事に気づいた。

「はぁ…エナジー。いい?」

「もうすぐ駅に着くので、思う存分どうぞ」

明楽は触ってくる手を掴み、捻り上げた。

!?

「さっきから目障りなんだよ!」

触っていた人は、中年の男性だろうか。明楽はさらに男の腕を捻り上げ、肩を脱臼させた。そのタイミングで電車は駅につき、明楽は男を無理やり下ろした。そばにいた駅員さんに事情を説明し、明楽は警察を待っていた。待つ事数十分で警察がきたが、その中に遠藤がいた。

「おはよう。どうしたの」

「おはようございます。痴漢にあったんですが、なかなかやめてくれなくて…つい…」

遠藤は男を確認した。

「あぁ。こいつは常習犯で、今度したら刑務所行き確定してたんだ。三月さん。ありがとう」

男は連れていかれ、明楽も遠藤の車に乗り職場へ向かった。


「おはようございます」

「朝から大変だったね。お嬢ちゃん」

井上が声をかけてくれた。

「おはようございます…」

設楽が入ってきた。

「おい設楽!お嬢ちゃんが朝から大変な思いしてるのに、また寝坊か!」

時間を見ると始業時間の五分前。

「井上さん。まだ設楽さん遅刻じゃないですよ」

明楽は答えたら。

「警察官は早めの行動が重要だろう」

「だったら、私も遅刻じゃないですか?」

「お嬢ちゃんは、犯人逮捕したから免除だ」

井上は何かを思い出したかのように席を離れた。

「三月さん。ありがとうございます」

「いえいえ。遅刻でもないのに怒られるの変じゃないですか」

明楽は席につき、パソコンを開き作業をした。



チャイムが鳴った。

「午前の授業はここまでです」

クロは教科書を片付け、稽古場に向かった。

「お疲れ様です。叔父さん」

稽古場には白髪の男が立っていた。どことなくクロに似ていた。

「お疲れ様。クロ」

男はメガネをカチッと動かした。彼の名は、ライト・ルーマス。

「叔父さん。稽古お願いします」

クロは手甲鉤を装着した。

「では、はじめよう…」

ライトは刀を抜いた。一瞬静寂が走ったが、ライトが一瞬でクロに迫った。

っ…。

クロは手甲鉤で攻撃を受け止めた。火の粉が飛び散った。

「まだ反応が鈍いが、よく受けた」

「叔父さん…今何歳なんだよ」

稽古場内に鉄のぶつかり合う音で響き渡った。

「なら、これは避けれるかな?」

ライトは刀を突き出し飛んできた。

ただの一騎打ちではない。そうクロは睨むと、ギリギリまで待った。あと数センチの所で。

「そこか!」

クロは左に避け、手甲鉤でライトの逆の手を突こうとした。

「ムウ!」

ライトの逆の手には銃を持っており、手甲鉤が銃を刺した。

「二刀流…最近流行ってるんだけどな〜」

銃が粉々になった。

「流石に銃はダメでしょ…」

「そうかな?あー音でバレるか!」

クロは手甲鉤をしまった。

「叔父さんは、今日の授業ないんですか?」

ライトも刀をしまった。

「そうだな。担当の授業は終わってるが、研究が残っておる。龍についての研究だ」

「相変わらず熱心ですね。でも、そう言う所俺は好きです」

「クロも、この学科選べばよかったんじゃないか?私とタックをくんで…」

「考えてたんですが、こっちも捨てがたいと思って。いざとなれば、あの子を止める術を身につけておいた方がいいと思いまして」

クロは時間を見た。

「もう次の授業の時間なので。今日はありがとうございました」

「クロ。本当にありがとうな」

クロは稽古場を後にした。



「今日の仕事終わった〜」

設楽が伸びていた。

「お疲れ様です。今日も報告書等の書類多かったですね」

三月は帰る支度をした。

「三月さん。どこに住んでるんですか?」

ふと設楽は言った。

「内緒ですよ。お先に失礼します」

明楽は帰って行った。

「さてと、帰りますか〜」

設楽も帰る準備をした。

明楽はイヤフォンを装着し、駅に向かった。

「お疲れ様です。明楽さん」

「おつかれ。今日の予定入ってる?」

「はい。まずは画面を見てください」

明楽はスマホを取り出した。

「まず、今日の夜八時から任務があります。これは今日のお昼頃に入りました。上層国民達のダンス舞踏会があるそうですが、とある政治家を殺す任務です」

画面には政治家の写真が映し出されたが、明楽は名前まで覚えるつもりはない。

「クロさんも参加していいそうです」

「そう。なら、本人に聞いてみるわ」

すると、電車が来た。明楽は電車に乗り、最寄り駅まで目指した。

家に着くと、クロがもう来ていた。

「おかえりなさいませ」

「そんなに硬くならなくていいよ。それより、今日は仕事がある」

明楽は中に入り、説明した。

「今から、とある舞踏会に出席する。武器持参で」

明楽は暗殺予定の政治家の写真をクロに見せた。

「こいつを殺すだって」

「ほう…」

「てことで、正装で行くんだけど…」

「燕尾服ならあります」

「それでいいわ。私は…やべ。ドレスあるかな…」

明楽はタンスを開け、ドレスを探したが。

「仕事用のスーツと戦闘服しかない…」

するとクロが声をかけた。

「よろしければ…これはどうですか?」

何処から出したのかわからないが、赤いドレスを手にしていた。

「着替えてみるわ」

明楽は早速ドレスに着替えた。クロも部屋で燕尾服に着替えた。

「クロ…どうかな?」

なかなか似合っていた。

「いいじゃないですか。素敵ですよ」

時間を見ると、そろそろ出発しないといけない時間になっていた。

「武器持って行きましょう。ただ、目立たないようにね」

「御意」

明楽のスマホからエナジーが話した。

「明楽さん。クロさん。車の準備が整いました」

明楽はヒールに履き替え、クロと一緒に車に乗った。

「では、自動運転で向かいます」

カーナビにエナジーが映し出され、車が動き出した。

「道中暇だからさ、聞きたいんだけど」

明楽が問いかけた。

「何でしょう」

「クロって…マジ何者?魔法使いだけでもビビってるけど、普通の大学生が燕尾服とかドレス持たないって…」

クロは少し悩んだが。

「答えてもいいですが、明楽さんの事も知りたいです。交換条件はダメですか?」

「口外しないなら大丈夫よ」

クロは息を吐いた。

「私の家は…ここでいうお屋敷みたいな所で、親から厳しく育てられてきました。ダンスや礼儀作法も。そんな親が嫌で、これもお屋敷ですが、叔父さんの家にいつも遊びに行ってたんです。叔父さんはとても優しくて、戦闘は叔父さんから教わりました」

「叔父さんも、手甲鉤使ってるの?」

「いえ。叔父さんは普通に刀や銃です。叔父さんからは、戦闘の基礎を学びました。今でも一緒に稽古しています。叔父さんには本当に感謝ですよ」

「そうなんだ…」

「まぁ、礼儀作法は親には感謝ですけど。ただ、ほぼ虐待まがいだったし、叔父さんからも改めて礼儀作法を習ったので…」

そうこう言っているうちに、車は会場に着いた。

「私の話は、この任務が終わってから話すわ」

「えぇ。楽しみです」

クロはニコッと笑った。会場の入り口に着くと、ドアマンが声をかけた。

「いらっしゃいませ。お車を移動しておきます。中へどうぞ」

明楽とクロは車から降りた。ドアマンが車に乗り込む前に、車が勝手に移動していった。ドアマンはただ唖然としていた。

「クロ。いいかしら?」

明楽が手を差し伸べた。

「もちろんです」

明楽はクロの腕につかみ、会場に入った。会場には人が多く集まっていた。

「意外と人多いわね…」

クロは警戒していた。

「嫌な予感します」

「あなたが、危険と感じたら武器出してもいいわ」

「ええ。明楽さんを守らないといけないので」

すると、マイクを持った司会者が現れた。

「今夜は舞踏会にお越しいただき、ありがとうございます。早速ですが、メインの音楽を流しましょう」

すると、クラシックが流れ周りが踊り出した。

「ここは、空気を読んでどうでしょう」

「そうね。クロ。お願い」

クロと明楽は周りに合わせて踊った。

「あんた…本当に大学生?」

「えぇ。そうですよ?」

少し踊ると、クロは何かを感じた。

「明楽さん。ハンカチありますか?」

「えぇ。あるわ」

「口と鼻を覆ってください」

明楽は感じなかったが、嫌な匂いがあたりに漂った。

「クロ。なんなの?」

「魔法の世界にしかない薬物の匂いです。嗅ぐと昏睡するとか…」

すると、別の司会者がでてきた。

「それでは、みなさん。こちらの扉へ」

奥の方から大きな扉が開く音がした。すると、客は扉の方へ歩いた。だが、何かに操られているのか、ゆらゆらと歩いていた。明楽は周りを見渡した。すると、上の階にターゲットである政治家の姿があった。

「クロ」

明楽の目線を確認し、クロも見た。

「写真の…」

すると、司会者がターゲットにめがけて話した。

「今日は収穫です」

ターゲットは頷いた。

「クロ。吐き気がするからさ。思いっきり私を高く飛ばして」

「もちろん」

明楽はクロの手に足を置き、クロは明楽を思いっきり上に飛ばした。明楽は空中で銃を構え、ターゲットに照準を合わせた。

「さっきからニヤニヤ顔がキモいんだよ」

明楽は一発放つと、ターゲットの額に命中した。そして、司会者にもすぐに照準を合わせた。

「もう黙ってろ」

また一発放つと、額に当たった。明楽はクロに抱っこされる形で着地した。銃声の音で客達が気がつき、一気に入り口へと悲鳴を上げながら走り出した。

「我々も逃げよう…」

「いや、待ってください」

クロの視線があの扉の向こうに向いた。すると、一人の男が歩いてきた。

「明楽さん。私がやります」

明楽もただの男ではない事に察した。

「気をつけてね」

明楽はクロから少し距離を取った。

「匂いの正体は、あなたですよね?」

クロは男にそう問いかけた。

「ほう。匂いがわかったとは。君は、この世界の人間ではないな」

男は何かを抜いた。クロも手甲鉤に手をかけた。

「しゅっ…」

クロは一瞬で避けた。男はナイフを一瞬で投げていたのだ。

「ほう…これを避けるとは」

男は次々とナイフを投げたが、投げたナイフが床に落ちず消えている事に明楽は気づいた。

「どうなって…」

「明楽さん。これが、魔法なんです。おまけに、そのナイフ。斬られると傷口が永遠に治らないとか?」

クロは避けながら明楽の質問に答えた。

「御名答だ。私のナイフは無限に投げれるし、傷口が治らない分ダメージが増えるだけだ!」

男はさらにナイフを投げ続けた。だが、クロは一瞬の隙を狙い、男の背後に回った。

「俺の手甲鉤も、特注なんだぜ…」

男が振り向く前に、クロは男の首を刺した。

「やるじゃん」

「まさか、魔法の世界の人もいたとは。明楽さん。帰りましょう」

「そうね。時期に人が来そうだし」

すると、明楽のスマホから、エナジーが声をかけた。

「明楽さん。クロさん。お車の準備ができました。急いで入り口へ」

明楽とクロは急いで車に乗り、会場を後にした。


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