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大学生クロの物語  作者: 三日月明楽
1/23

01

すごく喉が渇いた。目を覚ましてもボヤけてよくみえない。テーブルに手を伸ばし、眼鏡を取った。

「もう朝か・・・」

ゆっくりと身体を起こし、ベットから出た。丸い窓から薄暗い空がみえた。だが、地面は灰色。男は着替えを持ち、サッとシャワーを浴びた。

 ・・・あの子は大丈夫だろうか?

ふと頭をよぎったが、考えるのをやめ着替えた。白いシャツに黒いズボン。コップを出し、何かを唱えると水がでた。コップいっぱいの水をグイッと飲み、鞄を手にした。

「さてと、学校へ行きますか」

指をパチンと鳴らすと、部屋から消えた・・・


男は林に降りた。

「早く学校へ行って図書室でも行くか」

男の目の前には大きな門があり、奥には建物が拡がっていた。

男の名前はクロ・ルーマス。魔法大学封印学部の四年生。

早速図書室へ入り、魔術の本を数冊取った。

「なるほど。そうすると止まるのか」

日々の勉強で、トップの成績を誇る。

どのくらいたったのだろう。懐中時計を出した。

「もうこんな時間か。教室に行かねば」

本を元の場所に戻し、教室に向かった。

「あ、クロだ」

声をかけてきたのは、体格の良い男とその取り巻き二人。

「あぁ、工藤と藤巻と加藤。おはよう」

体格の良い男は工藤だ。

「この前のテストで学年一位取ったんだって?調子に乗りやがって!」

殴ろうとしたがクロは華麗にかわし、工藤の後ろに回り込み、ナイフを突き立てた。取り巻きの二人はビックリした。

「早い!」

「え・・・」

二人は固まった。

「朝から暴力しか考えてないの?それでよく教師になろう思ったねー」

冷酷な笑みを浮かべるクロ。

「チッ」

「まぁ、殺しはせん。興味がない。では」

ナイフをしまい、教室を目指した。

「工藤。大丈夫か?」

「あぁ。本当にムカつくぜ。昔から成績優秀で戦闘も強いからよ」

「工藤、藤巻。チャイムがなりそうだぜ」

三人は急いで教育学部の教室に向かった。


「ここはこういう時に・・・」

先生の授業が始まった。いくら魔法大学とはいえ、パソコンで授業を記録する生徒もいた。

 どうしてみんなパソコン使えるの・・・

そう思いながら、ノートにわかりやすく記録するクロ。

魔法を使えない世界でも生きていけるように。また、魔法と無縁に普通の人間として生きる人もいるため、パソコンやスマホがよく見かける。

 電子系?と言えばいいのか、マジ苦手。電話を覚えるのでやっとだったなー。

そう思いながら授業に集中していた。

一限目の授業が終わった。

「クロ君。まだノートなの?」

「俺、電子系わかんねーし。それに、この世界の方が居心地がいい」

クラスメイトからよく言われた。

「相変わらず、アナログ人間」

「だったら、成績上位狙えよ」

反論すると皆黙り込んだ。そうこうしてるうちにチャイムがなる。皆席に戻った。

「はい。次の授業ですよ」

先生が入って授業開始。


 やっと終わった。

ため息を吐き外に出た。今日の授業はもう無し。

「掲示板でも見に行くか」

掲示板へ行くと、新着の知らせなどが張り出されていた。

「バイトのチラシもでてるからなー」

この魔法大学の掲示板では、学校行事の他に、バイトやボランティア活動などの募集も張り出されている。稀に、魔法を使えない世界の情報も張り出されている。

「今日は情報多いな。・・・ん?」

ある一つのバイトに目が止まった。よく見ると魔法を使えない世界のものだった。


『ボディーガード募集!定員一名!主に夕~深夜にかけての時間帯となります。即日業務なので興味のある方は一度ご連絡ください。その時に給料の説明もします。なお、武器を使える人大歓迎です!』


「人間界でこんな募集か。嫌な予感だが面白そうだな」

早速その番号に電話してみた。

「バイトのチラシを見て連絡しました」

「あー。ボディーガードの?」

声の主的に男性だ。

「はい。興味を持ったので」

「そうですか。では、お名前と武器は使えるのかお聞きしたいです

 いきなり言うのかよ!

「クロ・ルーマスです。武器は、ナイフですかね。銃は使ったことありません」

「わかりました。では、夕方五時半に今から言う番号に電話してください。給料は能力で決めます。よろしくお願いします」

ガチャっと電話が切れた。

そう思いながらメモした電話番号を見つめた。だがこれから恐ろしいことが始まる事は、誰も知らなかった。



ここは魔法が使えない世界。そして警視庁。

「今日からうちに配属したお嬢ちゃんだ」

大勢の男たちがいる部署に若くて痩せた女が入った。

「三月明楽です。よろしくお願いします」

黒くて長い髪が綺麗だった。

「三月さんは上からの命令で、期間限定でうちに派遣された。可愛がってやってくれ。三月さんの机はあっちな」

と男の上司が指を刺した方向を見ると、隣の席で寝ている若い男がいた。

「おい設楽!」

怒号がひびいた。

「スビバゼン!井上警部補!」

男は飛び起きていた。

「新入りが入るのに何やってるんだ!罰として三月さんに色々使い方教えてやれ」

「は・・・はい」

「では三月さん。わからなかったら何でもみんなに聞いてください。あと、うちの部署は別に警部とかつけなくてもいいから。さん付けでもいいので、気楽に仕事お願いします」

「わかりました」

井上は自分の席に戻った。

「三月さんでしたっけ?設楽です。三月さんの席はここで右隣が僕の席。左隣が遠藤さんの席です」

「よろしくお願いします」

明楽は鞄を席に置いた。

「お嬢ちゃん。設楽を頼むよ。こいつは使えなくてなー」

遠藤は笑いながら話しかけた。

「うるさいですよ」

一瞬ムスッとした。

「わかりました。設楽さんに負けないように頑張ります」

明楽は笑顔で応えた。

業務の基本はパソコン作業。だが、周りは年配が多いのか不慣れな人が多かった。

「うーん。ここどうするんだー?」

「ここはこうすれば」

明楽は丁寧に直していった。

「お嬢ちゃん。これもわかるかな?」

次々と手が上がった。

「私、パソコン得意ので」

「三月さんを入れた甲斐があったのー」

井上はどこか誇らしげだった。そうこうしているうちに、お昼時間になった。

「お嬢ちゃん、どうだ?」

「お弁当持参してたので、今度お願いします」

他は席を外し、自分の席でパソコンをみていた。再度人が居ないのを確認した。

「じゃーエナジー。始めようか」

携帯の画面に黒いドラゴンのような馬のようなアバターが写っていた。

「お待ちしておりました。明楽さん」

するとパソコンの画面にエナジーがでた。

「本当にこんなお国のところで、こんな事をしてるだなんてね」

ある一つの書類を鞄から出した。

「ですが、やはりセキュリティーがガチガチですね。時間がかかります。防犯カメラも一応調べておきます。この建物の構造図も探した方がいいですか?」

「ええ、お願いね。私もなんとかセキュリティー解除できるように頑張る。エナジーもお願いね」

「了解」

ハッキングをしているのか、キーボードをものすごい速さで叩いていた。

「やっべー。財布忘れた」

いきなり設楽が入ってきた。

!?

急いで画面を元に戻した。

「あれ?三月さん。ご飯まだなんですか?てか何してるんですか?」

「う、うん。まだなんです。よかったらご一緒にどうですか?」

「いいんですか?なら、近くの公園でも」

二人は公園に向かった。


「設楽さんは何で警察になったんですか?」

昼時なのか、人が少し目立った。

「僕、憧れだったんです。推理を立てて、物的に上がって逮捕が。頭の中で妄想などを考えるの得意で・・・。でも、結局配属は事務員みたいな年配の多い部署。憧れとは違います」

「そうなんですか」

「そう言う三月さんはどうなんですか?」

明楽はお茶を一口飲んだ。

「あんまり考えてないなー。うん」

「嘘だー」

設楽は興味を持っていた。

「パソコンも得意でなんか、何でもできそうに見えるんですけど」

「まぁ、あれは趣味みたいな・・・」

設楽は驚いた。

「あれで趣味レベルですか?一体どこで習ったんですか?」

「それは・・・」

喋ろうとした時、着信が二人の携帯になった。

“今どこだ!すぐ戻れ!また女性が上がった”

二人は走って戻った。


「えーと。先程、路地裏にて女性の死体が上がりました。ここ最近続いている女性連続殺人の可能性が高いと思います」

捜査本部で会議が行われた。スクリーンには殺害された女性が映し出されていた。犯行に使われていた凶器や血痕なども出されていた。

「設楽さんすみません。あの方は?」

「あぁ。この捜査本部長の海老名警部です。その隣にいるのが野上警視です」

明楽はスクリーンに注目した。すると妙なことに気づいた。

 凶器と傷跡…妙に違う。しかも…プロ?

心に妙なモヤモヤを覚えた。会議が終わり、皆退席していった。

「なんか…淡々としていますね。ドラマや映画とは違いますね」

「まぁ…こんなもんでしょ?」

設楽は資料などをまとめて、鞄に入れた。明楽は資料を手に持ち、設楽と所属課へ戻った。

「三月さん。もう定時だから、今日は上がって大丈夫ですよ」

井上が呼びかけた。

「いいんですか?」

「初出勤に残業はさせられん。明日も頼むよ」

「ありがとうございます。お先失礼します」

明楽は鞄を持って退勤した。近くの地下鉄に乗り、最寄駅まで電車に揺られた。イヤフォンを出し、スマホに接続した。

「エナジー」

「お疲れ様です。明楽さん」

スマホにはエナジーが出た。

「明楽さん。早速ですが、教官からメッセージが届いております。今日からボディーガードを雇ったと。連絡も書いてあります」

「…わかった。電車から降りたら電話する。あと、帰り道に買い物行くから」

「了解」

最寄りの駅につき、外に出たところでメッセージに記載してあった番号に連絡をした。

“もしもし”

「もしもし?すみません。ボディーガードのバイトの方ですか?」

“はい。クロ・ルーマスと申します”

「今日から大丈夫ですか?」

“今日からですか…だい…丈夫です”

「では、今から住所を言うので、そこにきて欲しいです」

住所を言い、電話を切った。

「男性ですね…」

「そう簡単に辞めなければいいが」

明楽はスーパーに入り、食材を購入した。

「どんな人だろうね。エナジー」

「名前で見ると、外国人かハーフ?」

そうこう言っていると、家に着いた。一回はガレージになっており、玄関である二階まで階段を登った。鍵を開け、中に入り、電気をつけた。

「おかえりなさい。明楽さん」

明楽は鞄を置き、食材を片付けた。そして、一階へ繋がる階段を降りると、画面がいっぱいあるパソコンがあり、作業椅子に座った。

「じゃーエナジー。始めようか」

そう言うと、パソコンの電源が入り、どの画面にも異なる事が映し出された。

「では、今日の成果ですが…」

エナジーが成果を出そうとした時だった。チャイムが鳴った。

「来たのかな?ごめん。出てくる」

明楽は玄関に向かい、扉を開けた。

「すみません。バイトで来ました」

クロは明楽を見て、少し驚いた。

「どうしたの?てか、クロくんで…あってる?」

「これは失礼。知人にそっくりでして…」

「とりあえず入って」

玄関を通し、椅子に座らせた。

「初めまして。三月明楽です」

「クロ・ルーマスです」

「…ハーフ?」

「クオーターです。母方にフランス人がいます」

明楽は脅しのつもりで、クロに小さなナイフを投げたが、クロは瞬時にキャッチした。

「やるじゃない」

「このくらいは序の口です」

「年いくつ!」

「今大学四年生です。もうすぐ二十歳です」

「わかいねー。気に入った。クロ。今日からよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします。三月さん」

「明楽でいいよ〜。そうそう。クロが良ければいいんだけど、ここに住まない?バイトの時だけ。もちろんバイト時間外でも住んでていいし、大学生なら授業優先でいいよ」

クロは一瞬驚いたが。

「ここから大学近いので、助かります」

明楽は空き部屋をクロに案内した。

「ここ。好きに使って」

部屋にはベットと机と椅子があった。荷物を置き、窓を開けた。

「じゃークロ。早速だけど、夕飯作ってくれない?」

「ええ。お安いご用です」

クロは早速キッチンに立ち、冷蔵庫を開けた。

「買い物…行ったんですか?」

「なんでわかったの?」

「食材が揃っているので。リクエストはありますか?」

「うーん。パンが食べたいから、パンに合う料理がいいな」

クロは少し考え、食材を選び調理に取り掛かった。

「どのくらいかかる?」

「三十分ほどかかります…」

「なら、パソコンしたいから、できたら呼んで」

明楽は階段を降りていき、またパソコンに向き合った。クロはその隙に、自分の部屋に戻った。すると、窓にはカラスが待っていた。

「俺の監視を頼む」

カラスにおやつを与えて、どこか羽ばたいて行った。


「エナジー。クロの情報ある?」

エナジーはあらゆる情報機関にハッキングしたが、見つからなかった。

「どう言う事だ…」

明楽も考えた。

「普通の人間ではない。本人に聞いてみるか…」

するとクロがノックをした。

「明楽さん。夕飯の準備ができました」

「わかった」

明楽は階段を登り、テーブルに着いた。

「ビーフシチューです」

出されたビーフシチューは一流レストランに出てもおかしくない盛り付け。付属の丸パンもこんがり焼いてあった。あまりの出来栄えに明楽は驚いた。

「す…すごい…」

ビーフシチューをスプーンですくい、一口食べた。

「うま…え…」

あまりのおいしさに、パクパク食べてしまった。

「クロって…何者?普通の人間じゃないよね」

クロは口角を上げた。

「ええ。私は普通ではありません。ましてや…この世界の人でもありません」

「どういうこと?」

するとクロは空のグラスを手にした。グラスを明楽の前におくと、何かを唱えた。すると、黄金色の液体が湧き上がり、グラスいっぱいになった。

「どうぞ」

明楽は恐る恐るグラスを手にし、口をつけた。

「…これ、シャンパン?」

「はい。初めての出会いなので、お祝いです」

しかし明楽は、さっきのスーパーでシャンパンを買ってはなかった。

「マジック?」

「いいえ。私は魔法使いです」

「え…あっち系の…」

「違います。本当の魔法使いです。私は魔法大学封印学部に在学しています。私の世界は魔法が使える世界です。と言っても、この世界と魔法が使える世界は所々に隠し通路が存在します。明楽さんの家から大学へ行く隠し通路が近いので助かります」

クロはニコッと笑った。

「じゃ…この世界では、クロの存在は無いようなものか」

「そうなりますね。まぁ、この世界で生きたい魔法使いもいます。ただ、この世界で生きる事を選ぶと、魔法が使えないので私はしません」

エナジーが調べても出てこないわけだ。

「ただ…」

クロは考えてた。

「ただ?」

「大学にこの求人があったんです。妙なことじゃないですか?しかも、女のボディーガード」

明楽は少し俯いた。

「実は私も普通じゃ無い。魔法とかは使えないよ。赤ちゃんの頃捨てられて、拾われてアメリカに渡り、殺し屋の技術やスパイの技術を訓練させられたの。で、今に至る。もう、嫌ほど殺し、自分も重症負っての繰り返し。今はとある情報があって、こっちに派遣できたの」

明楽はグラスを傾け、光に当てた。

「一度でいいから、普通の人間らしい生活してみたいわ」

何処か寂しそうな表情だった。その時、明楽のスマホが鳴った。

「もしもし…はい…はい…了解です」

電話を切ると、明楽は支度をした。すると、明楽のスマホから変な物が映し出された。

「初めまして。クロさん」

クロは驚いた。

「なんだ?これ」

「私はエナジーです。明楽さんのパートナーをしています」

「画面が…喋ってる…」

ふと明楽はクロを見た。

「クロって…もしかしてこう言う電子機器苦手?」

「は…はい。大学でもノートに全てまとめています」

するとエナジーが画面を切り替えた。

「明楽さん。クロさん。もうすぐ車が到着します」

「クロ。あなた、戦闘の経験者でしょ?武器の準備して」

「わかりました」

状況が掴めないまま、クロは自分の部屋から特殊な武器を取り出し、腰に装着した。

「明楽さん。クロさん。車が到着しました」

エナジーの呼びかけで玄関を開けると、黒い車が来ていた。

「クロ。あれに乗って。私も乗るから」

二人は後部座席に乗ると、車は発進した。

運転席と助手席から話し声が聞こえたが、英語でしゃべっていた。

「クロ。喋れる?」

明楽はドイツ語で喋った。

「ええ。もちろん」

クロもドイツ語で答えた。

「今からテストになるんだ。クロなら大丈夫。車が止まったら、武器を出していいから」

「私を試そうと?」

「あなたと、私が試される」

車は数十分で目的地に到着し、止まった。運転席と助手席の人が降り、後部座席の扉を開けた。

「ツイタヨ」

そう英語で言うと、ナイフを突き出した。

「タダノリハ、ダメデスヨ」

明楽はニコッと笑うと。

「私、英語喋れます!」

一瞬のうちに銃が放たれ、脳天に命中した。すぐに外に出て、周りを確認した。

「クロ。だいじょう…ぶだね」

クロも三本の刃がついた特殊な武器で相手を刺し持ち上げ、地面に叩きつけた。

変わった武器だな。明楽はそう思った。

「行こう」

二人は入り口に向かい、扉を開けた。すると、奥から何かが飛んできた。クロはとっさに明楽の前に立ち、飛んできた物を武器で受け流していた。

「ありがとう」

「いえいえ」

奥へ進むにつれ、どこから飛んでくるかわからない投げナイフを、クロは華麗にかわしていった。

「クロ…あとでいろいろ聞きたいことあるわ」

すると、明楽めがけてナイフが飛んできたが、クロはそれをへし折った。

「ええ。いつでも」

すると、大きな扉が見えてきた。明楽とクロは扉を開けた。

「明楽。待ってたぞ」

扉の向こうから男が声かけた。明楽とクロは部屋に足を一本踏み入れた瞬間、二人はバク宙をした。ナイフが二人の顔スレスレに飛んできた。二人は同時に着地した。

「体操の団体でたら、いい試合になるんじゃ無いか?」

男は拍手していた。明楽は男に駆け寄った。

「教官。お疲れ様です」

明楽と男はハグをした。

「クロ、紹介するね。私の教官のダニエルだよ」

「君がクロか。随分といい好青年だな。いい動きをしていた。合格だよ」

ダニエルはクロの手をとり、握手した。

「光栄です」

「教官。テストするならもう少し早くに報告ください」

明楽は注意した。

「あぁ、申し訳ない。急遽予定が開いたもんでな」

「今日の呼び出しは、テストと何かあるんですか?」

明楽の問いかけに、ダニエルは書類を明楽に渡した。

「まぁ、今君に頼んでいる仕事で使うであろう武器の在庫書類だ」

「ありがとうございます」

「今日はこれだけだ」

そうダニエルが答えると部屋を出て行った。

「こんなことで呼ばれるんですか?」

クロは不思議に思った。

「そうなの。こんな大掛かり。さ、私たちも帰ろ?」

出入り口の戻ると、さっきとは違うスポーツタイプの車が止まっていた。するとスマホが鳴った。

「明楽さん。クロさん。お疲れ様です」

「クロ。これに乗って」

クロは助手席に乗り、明楽は運転席に座った。

「エナジー。頼む。」

すると車は自動で発信した。

「…どうなってるんですか?」

「エナジーが運転してるの。この車、私が改造したから」

車は一般道に入った。

「クロ」

「どうしました?」

「ごめんね。初日にこんな大変な思いさせて…」

「いえいえ。戦闘は慣れていますし、こう言うのは好きなので。それに、自分の腕も上がります。ありがたいです」

明楽は疑問だった。

「クロの武器、見たことないけど」

「あぁ、これですか?」

クロは片方の三本の刃がついた特殊な武器を出した。

「これは手甲鉤と言います。と言っても、改造していますよ。自分、銃が苦手なんです。何度も練習しても全て綺麗に外すので。これだと至近距離で相手に攻撃ができますし、ぶつかり合う攻撃で弾かれることも少ないので愛用しています」

よく見ると、メリケンサックみたいに、指が通る感じになっていた。

「でも、手入れ大変じゃ?」

「慣れました。この武器を使う宿命です」

クロは手甲鉤をしまった。

「明楽さんも、銃の命中率すごいですね。私にはできません…」

「私もいっぱい練習したんだけどね。センスがあったのかな」

そうこう言ってるうちに、明楽の家に車がついた。一階のガレージに車が入るとシャッターが閉まった。車から出、リビングに二人は向かった。

「何か飲みますか?」

明楽は首を横に振った。

「私はシャワーするわ。クロくんはもう自由時間でいいわ。シャワーしたいなら、終わったら声かけるよ?」

「では…お願いします」

明楽はタオルを持ち、シャワー室に入って行った。クロは自分の部屋に戻り、開いている窓に向かった。

「もう大丈夫だ」

そう呼びかけると、一羽のカラスがクロの腕に止まった。カラスはクロの耳元でクチバシを動かしていた。

「そうか…ふん…」

クロはカラスにおやつをやり、羽ばたいて行った。すると、もう一羽現れクロの腕に止まった。カラスはどこか疲れていた。

「大丈夫か?」

クロの問いに、カラスは不気味な鳴き声をあげた。クロの耳元でクチバシを動かした。

「…ありがとう。いい判断してくれた。まだ追跡中か…」

このカラスにもおやつを与えてた。

「ここで休んでもいい。ただ、フンは外でな」

カラスは窓際で大人しく羽を休めていた。すると、ノックがなった。

「クロ。シャワー空いたよ」

「ありがとうございます」

タオルと着替えを持ち、シャワーを浴びた。


「エナジー」

明楽は部屋のベットで横になっていた。

「どうしましたか?」

「今日は…発作なかった」

明楽は怯えていた。

「今日は平均的に安定していました」

明楽はスマホ画面を見ると、エナジーがだした心電図や血圧等の記録が出ていた。

「エナジー的に、私の寿命はどのくらい?」

エナジーは計算しつつ、言いにくそうに答えた。

「持って数ヶ月…ただ、いつ悪化するかもわからない状況です」

「そうか。今日はもう寝るよ。出勤初日だし、教官にも会ったし」

「わかりました。おやすみなさいませ」

明楽は毛布に潜り込んだ。

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