佚世.7
「にぃ!」
検査後、抗体等特に問題なかったのでルナをアーネストの元に連れて行った。
ルナはアーネストに飛び付こうとしたが、佚世が肩を掴んで制す。
「お兄さん重篤患者だからそーゆーのなしで」
「……そんなに危ないの?」
「うーん今元担当医がバラしてくれなかったら死ぬかなってとこ」
「死の一歩手前……!?」
「そ」
「にぃッ……!」
突如ルナの声が怒りに染まり、ルナは天蓋を開けた。
顔色が悪いアーネストは顔を上げ、ルナはやはり怒りよりも心配が勝つのかアーネストに駆け寄った。
「にぃ大丈夫?」
「おかえり。来てくれて助かった」
「色んな検査したけど問題ないって」
「ごめんな、せっかくの翼」
「大丈夫! 三対あるから!」
「嘘つけ」
「二対生えたの」
「アホか」
「にぃのためなら翼どころか心臓も捧げるよ」
「いらない」
「私はにぃのために在るから!」
「重いなぁ……」
普段の真剣な表情とは変わって、兄としての優しい笑みを浮かべるアーネストを見て、佚世はひとまず天蓋を閉めた。
ミシェルが、ヴァイオレットを見る。
「アーネスト様に妹なんていらっしゃったんですね」
「兄が二人と姉が一人もいますよ」
「五人兄弟ですか……!」
「びっくりですよねぇ、これで長男じゃないなんて。ウィルはそのまま末っ子なのに」
「え」
「ウィリアム様にもご兄弟が?」
「こっちは兄と、姉が二人」
「お嬢様私はそれ言ったことがありません」
「私は万物を知りますよ」
「家とは縁を切っているんです」
「お姉さんからの熱烈なラブレターは絶えませんけどね」
「お嬢様? 何故知ってるんですていうかラブレターとか言わないでください吐き気が」
「ここではやめてよ」
佚世はウィリアムを叩き出すついでにヴァイオレットとミシェルも放り出し、椅子に座った。
天蓋が開き、ルナが出てくる。
「感動の再会はもういいの?」
「うん」
「その言い方やめろ」
「お兄ちゃんツンデレだね」
「そこがまた」
「リア」
ルナはピタッと口を止め、佚世は苦笑いを零した。
「仲良さそうで何よりだよ。……特に移植に問題もなさそうだし、予定通り手術は翌週頭かな」
「……ねぇ、翼を残すなら時間とともに再発するんでしょ? にぃはそれでいいの?」
「再発はしないよ? する度呼び出されてちゃこっちの身が持たないからね」
「え、じゃあ……」
「ルナちゃん理科は得意かな」
「勉強はなんでも」
「成長点というのは知ってるかい?」
まぁ要は、成長点が翼の付け根なので成長点を切除、取り外してからまた繋げてって感じ。
種内路は少し残る主根を強く支えるためのものなので。
「これが成功したら史上初だね。生狂翼症の翼を残した治療」
「そなの?」
「そもそも生狂翼症ってわりと最近まで不治の病って言われてたらしい。それが何件か成功事例とか勝手に翼が落ちたって言う報告が出て、治せる可能性はあるって言うのが見えてきて」
「よく知ってるね」
「調べたの」
にしても、案外無能な医者が多いらしい。このぐらいの手術なら、まぁできるかどうかの腕は別にしてやり方ぐらい出るだろうに。それとも出たとしても相当難しい手術になるのだろうか。
イメージする限りじゃ、別に今までやってきた腕くっ付けるのとか足くっ付けるのとか頭閉じる方が難しい気がするけど。
それとも大事な大事な欠陥があるとか。
不安になってきた佚世は紙を持つと、天井を仰ぎながらまた一から確認を始めた。




