48.パーティー
疓憝の白が立証され、まぁ俰盤が顔面引き裂いたことに変わりはないので、過剰防衛だとして請求すると言われたが疓憝の精神状態を診てほぼ鬱状態だと言うのを伝えたらこっちが勝った。
疓憝は管理人にしがみつき、俰盤は睦にしがみつく。母親はおろおろ。
「いやぁ持つべきものは超人の友人だね」
「いなかったらご自身でやられたでしょう」
「娘の前では父親でいたいもの」
異常な親の元では異常な子供しか育たないとか言われて人殺しの雰囲気放ってたくせに。
「世界一の父親ですね」
「ところで睦君、頭大丈夫? 熱出るよ」
「今日はなにも視てませんよ」
「……何回か視たなって場面あったのに」
「今日使うとぶっ倒れる可能性が高かったので使ってません。映像は元々改ざんすると予想していましたし、疓憝ちゃんの精神状態については電話と話聞いている時にほぼ検査みたいなものしましたし」
「……怖いなー」
「検査結果いります? 腕は佚世さんのお墨付き」
「いる」
校庭に降りると、先に降りていた雨々驟が正門に車を回した。
「学校どうするんですか?」
「二人の希望次第かな。ただあまりにも酷いようなら中央に行く。……一応基地はあるからね」
「トライトは?」
「現在進行形で協力体制だし……子供たちのことなら問題ないと思う」
「また困ったら連絡ください。できることはやりますので」
「頼りになるよ」
子供たちと奥さんを車に乗せてから、まだ少し話をする。
「あれでしょ、強化合宿」
「受けてもらえますか」
「もちろん。こちらとしてもトワイライトと訓練できるなら願ったりだから」
「ではまた正式な日時は追って連絡します」
「にしてもびっくりだな、睦君がやってくれるとは」
「トワイライトから依頼が来まして」
にこにこと笑う睦を見ると、いつかの佚世に重なった。
頭に手を置いて、よしよしと撫でる。
「頑張るんだよ」
「はい」
翌週頭、管理人に任された任務に向かう。
セキュリティルームの一員に変装し、Hg前に座った。
トワイライトはトワイライトとして、スレッドの一人は変装して入るらしいが、まぁ顔面見れば偽顔か本物かわかるし、特に問題もないだろう。
コツ、コツコツと机を爪で叩くと、日幻兎に全員確認したことを知らせた。
このサインをやるためにこの癖がある従業員を捨ててきた。
コツコツコツコツと机を叩いて、椅子から落ちそうなほど腰で座っていると頭に何かが乗った。
「コツコツコツコツうるせぇ」
「自分の口に言いやがれ」
降ろし六人ね。全体的にニーズが関わってるとしても、ウラクソウの本元がニーズとは限らないのでそこは見分けないと。
ニーズは製造から仲介から捌きまでやってるいるので、見付けても深く掘り下げないと種が残ったままになることが多い。
下手な弱小組織が捕まえようとして失敗し、トワイライトでも手が出しづらくなることが多々ある。そういう時はピステルが恩を売り付けるが、御三家のパワーバランスが崩れやすくなるのでそれを管理人は良しとしていない。
管理人の気がかりを取り除くのが部下の役目。
恋弥たちも睦が誰なのかどこにいるのかわからず、とりあえず陽泰が離れないので壁に寄ってその頬をつねる。
「痛いんですが」
「仕事で甘えんじゃねぇ」
「恋弥さんの管理を任されてるんです」
「黙れお前は俺の部下だ」
「同列です」
「つーかあいつどこいった……」
「さぁ……」
メイクも髪も見ていたはずなのに、ほんとにわからない。もしやいないのではないかと、そう思うほどわからない。
だんちが別車で送ったのでだんち以外見ていないし、だんちはトワイライトの中核として引っ張りだこなので聞けないし。
まぁバレないにこしたことはないけど、にしても超人だ。
「……まいいや。いいの取り付けろよ」
「はい」
各々が商談をして、噂話から流通経路まで色々聞いては記憶していると、突然照明が落ちて真っ暗になった。
会場がざわめき、壁際にいた護衛が要人を守りトワイライトの数人も銃に手をかけたところで、マイクの音が聞こえた。
スイッチが入って、ポンポンと叩かれる。
『あー、すみません皆様、驚かせてしまって。突然ですが、これからオークションを開かせていただきます』
だんちと氷海獺は人の間を縫って陽泰のそばに行き、三人から見えるところにいる恋弥は興味なさげにグラスを揺らしている。
『商品は一つだけ。とある世界の、とある国の、とある女一つ。お支払いは現金のみでお受付いたしまぁす』
その声のあと、ステージの幕から檻が押されて出てきた。
ステージのスポットライトが点き、牢の中にいる女の人が照らし出された。
くすんだ白のワンピースを着て、長い黒の髪に、目は焦点が定まらずぼんやりとしている。何も食べていないのか青白く痩せ細って、爪は、たぶん数箇所剥がれているのだろうか。指先が血で赤い。
『こちら。政府容認前の参界者でございます。意思疎通可能、まぁ生気はありませんが、十分よく鳴きますよぅ』
皆が目の色を変え、その中で一人が手を挙げた。
「六億だ!」
『六億。六億千万の方は?』
「六億五千!」
「七億!」
『七億。七億五千の方は?』
一般人が聞いたら目が飛び出るような額が飛び交い、陽泰は鼻で笑った。
「んな額持ち歩く馬鹿がいるか」
「サクラか」
「まぁ大半はそうだろうな」
「抜けるぞ」
恋弥にも声をかけ、会場を抜けるとセキュリティルームに向かった。
陽泰が刀で道を開き、だんちとひのは後ろからそれを見守る。陽泰は、心底やりづらそう。
「……行きましょう」
「育ったなぁ」
「かっこいいなぁ」
「顔いいなぁ」
「かっこいいなぁ」
「語彙力死にすぎだろ」
四人でセキュリティルームに行くとちょうど日幻兎が、変装のマスクを取った。
「おつかれ兎。降成灰君も」
「お疲れさまです」
降成灰もフェイスマスクを外すと、前髪を後ろに上げて黒いキャップを被った。
セキュリティルームの中で六人死に、うち五人が毒殺されている。一人は、首元かっ切られて。
「……あの」
「ん?」
「俺睦さんがどこにいるのかわからなかったんですが……」
降成灰の不安そうな表情の言葉に兎も勢いよく頷くと、皆もそっと視線を逸らした。そんなん言われても。
「……だんち、誰か教えてやれ!」
「俺もどこにいたかは知らんぞ? 顔もマスクとキャップしててほとんど見えなかったし」
「髪は!? 声とか!」
「フードと声はいつも通りだった」
「睦は声なら自由に変えれるから。顔もだけど……」
ひのと陽泰と降成灰が唖然としている間に、恋弥は兎に教えてもらいながら監視カメラを確認した。
フードがあって、白に黒とピンクと紫のポニーテール、前髪はセンター分けで、目は紫の細身高身長男。
これは確かに、見付けられないわ。なんでステージ幕内でオークションの司会やってんだ。
「見付けた。問題なさそうだし行くか」
「……睦くんっていう確信は?」
「見りゃわかるだろ。なぁ陽泰」
恋弥が聞くと、陽泰は目を丸くしたあとにこくっと頷いた。
「ほら」
「え今絶対合わせた」
「いーから行くぞ! 政府来て囲まれたら元も子もねぇ!」
Hgに二件の通知が来て、それを確認した。
小雨から、あとは任せろと連絡。じゃ、お言葉に甘えて仕事続行しますか。
恋弥に先帰っていいよと返信すると、マイクのスイッチを切って残しておいた一人を席に座らせた。
腕を椅子の後ろで縛り、足にナイフを落とす。
「政府が来るから助けてもらうんだよ」
マイクを付けると、そこからさっさと退散した。
幕内に移動したのはついさっき。ずっと商談する中で、気になる女子を見付けた。気になるの詳細は各自解釈してもらえればいいが。
小雨が来る前にその子のところに行くと、覚えていて貰えたので肩を抱いて会場を出る。
ここはとあるホテルのパーティー会場。こういう時のためにちゃんと部屋は取ってある。




