表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
66/124

46.親

『そんで学校から電話来てね』

「大変ですねぇ」




 電話で、睦はHgでカメラがついているにも関わらず堂々と本を読む。



 今は管理人の最近あった話を聞いている最中。




 子供が学校で他の子襲って顔面傷だらけにしたのだが、妹の話では姉をいじめていた子、被害者の話では姉妹から揃っていじめられた、と。うちの一つがその顔面滅多刺しらしい。




『もちろん我が子を信じるんだけどさ。姉の方が何も知らなかったから』

「そもそもいじめてくる奴に対して姉の処理しろとか言えないと思いますけどね」

『だよねぇ。あの子頭いいから瓶に推進力が残るまま割れて破片が散ったってわかったみたいだし。実際姉は花瓶で頬怪我してるんだけどね』

「姉ちゃん身長は?」

『130から今ちょっと伸びたかなって感じ』

「花瓶の重さにもよりますけど小学生……八歳の教室に置いてあるような花瓶でしょう? 相当な勢いないとそこまで飛びませんよ。ましてや顔切れるなんて」

『誰かが投げた場合は?』

「……ものすっごい勢いで投げたか、破片だけ別で投げたか」

『後者が有力かぁ』




 いつの間にか事件解決みたいなことになっているのを自覚した睦はハッとして、管理人は頬杖を突いた。今日の面は紫だ。珍しい。




『被害者の親がね、慰謝料だとか退学だとか騒いでんの』

「いいんじゃないですか」

『まーそれはどうでもいいんだけどさー。退学になったら中央にも入れれないじゃーん? あそこ前科クッソ厳しいしー。となれば養成校しかないじゃん!』

「私立は」

『私立ほど信用できねぇもんはねぇ』



 ここの学校事情はそうだ。


 政府が完全に管理しているため、私立よりも公立、公立よりも府立が良いとされる。

 中央学院、神迎養成学校は府立、第二は公立。公立は政府が管理している学校課が建てた学校に当たるので、準府立みたいな感じ。


 私立はだいぶん私欲にまみれているが、その分設備だったり部活だったりが充実しているところが多い、らしい。府立にしか行ったことないので知らないが。




『でも養成校は私の子供たちには合わないからさー』

「本人次第では」

『合わないんだよ』

「そうですか。まぁ頭が小雨さんなので即しょっぴかれるか情報引きずり出されるでしょうね」

『だよねぇ! だからさぁ、今回は白で終わりたいんだよね!』

「依頼ならお受けしますよ」

『さぁっすが睦くぅん!』

「相手方に支払う予定だった慰謝料全額寄越していただけるなら」

『白なんだってッ!』

「冗談です」



 睦が本を閉じると、管理人は目を煌々と輝かせた。



「少し待ってください。……その妹ちゃんっていますか」

『いるよぅ。呼んでくる』

「お願いします」



 二人ともカメラと音声をオフにすると、各々準備を始めた。




 睦はパソコンを開くと軽く必要要項の表を作り、管理人は部屋を移動すると次女を呼んだ。




俰盤(わだか)、おいで」

「何?」

「電話で、ほら前会ったイケメン一位」

「電話? 何話すの?」

「この前の事件のこと聞かせて」

「……わかった」



 妻にお菓子とジュースを頼むと、俰盤を抱き上げソファの下に座った。




『準備できたよー』

「こちらもある程度。……とりあえず名前伺ってもいいですか」

俰盤(わだか)です』

「……この前のサインの子か」

『宝物です』

『ほんっとにあれだけは大事にするんだよねぇ』

「じゃあ俰盤ちゃん、色々と質問するから答えてくれるかな」

『はい』




 とりあえず、事件の概要は管理人から聞いた通り。


 教師がクラスメイトを守り、途中で姉の疓憝(ねうら)を迎えに来た俰盤(わだか)がクラスメイトの発言を煽りと受け取り、引きずり出すと馬乗りになって頬を八回刺した。



「回数までよく覚えてるね」

『覚えてる。誰が何を言ったか何を見てたか全部覚えてる』

「記憶力がいいんですね。……親から見てどうですか、事件の前後の変わった様子」

『相当ストレスかかってるね。ていうか俰盤もそうだけど、姉の方がかなり酷い状態』

「……話聞けそうですか」

『……どうかな。ちょっと待ってて』



 膝から俰盤を下ろすと、疓憝(ねうら)の部屋にノックをした。




「疓憝、起きてる?」

「……お父さん……」

「今日は顔色いいね。ジュースとお菓子あるよ。俰盤と一緒に食べよう」

「……うん」



 ベッドに座って震えていた疓憝を抱き上げると、頭を撫でながらさっきの場所に戻った。



 二人を膝に座らせると、妻が疓憝の分のお菓子も用意する。




『連れてきた』

「名前教えてもらっていいかな」

疓憝(ねうら)です』

「疓憝ちゃんね。……今からこの前の事件のことを聞くんだけど。覚えておいてほしいのは、この質問は君と俰盤ちゃんが被害者であるって言うのを前提としてる。なにも悪いことしてないならそのままそう言ってね」

『はい……』

『大丈夫だよ。優しい人だから』

『ほんと……?』

『前サイン貰ったときにサインない人の分も描いてくれた。対応変えない人はいい人』


 よく見てんなぁ。



 睦は苦笑いを零し、管理人は二人の頭を撫でた。



『帝翔の友達だから心配ないよ。信用できるし優しい人』

『……うん……』

「じゃあ質問していくね」





 事件の経緯としては、昼休み。疓憝が教室で給食を片付けていると加害者がやってきて、疓憝をからかいながら自分が被害者ぶった。

 疓憝をクラスの皆が笑い、加害者が花瓶を割り、疓憝に破片を投げ付けた。



 今、傷口にはガーゼが貼ってある。絆創膏じゃ覆いきれない大きさかつ、相当深かったらしい。




「……そのあとは俰盤(わだか)ちゃんが来て帰りの準備を始めたんだね。……教室の声って聞こえた?」

『泣き声だけ……』

『私が刺したあとのギャン泣き』

「……俰盤ちゃん、その場にいた人ってクラスの人だけ? 皆給食の時間でいなかった?」

『一人いた。夜光冠(やこうかん)祉夏(ちなつ)

『律の子供だね』


 あぁ子供いるんだ。




 睦は正面から勝ち誇った顔で笑ってくる恋弥を睨み、パソコンにそれも打ち込んだ。




「その祉夏って子は何したの?」

『汚ぇから片付けろって言ってあとは突っ立ってた』

「律さん英才教育だな……」

『聞く限りじゃほとんど関わってないみたいだよ? 時たま褒めたら子供大喜びって感じらしいし』

「よく知ってますね」

『まぁね』

「祉夏が来たのはいつ?」

『私と同じとき』



 クラスのいじめ、第三者からの証言は得られそうにないか。



「防犯カメラってあります?」

『聞いたんだけどねぇ? プライバシーとかで見れないって言われた』

「悪の御三家がプライバシーで丸め込まれてどうします」

『睦君が依頼受けてくれる予定だったからさ!』

「俺の言動を予定に入れないでください」

『私は有言実行するよ』

「あなたはね」



 睦は話の概要に再度目を通すと、俰盤と疓憝を見た。



「何か言いたそうだね、俰盤ちゃん」

『いじめられるのはお父さんのせいだよ。お父さんが悪い人だから気の弱い疓憝が馬鹿にされるの』

『そんなこと……!』

「いじめは加害者のせいだよ。君のお父さんは世界戦争が起きないように毎日必死に頑張ってるんだから」

『ちょっと睦君』

『戦争?』

「大きな組織が二つだけだったら真っ向からぶつかり合うけど組織が三つだったら二つが衝突しても一つが仲裁できる。二人のお父さんは最年長最古参として青い二人をなだめてくれてるの。だからお父さんのせいにしない。悪いの加害者と加害者に対処しないその環境だから」

『……ごめんねお父さん』

『神か』



 管理人が娘を愛でる間に、言動や口調、声色からわかる二人の精神状態を記録した。





 姉の方はいつ鬱やパニック障害になってもおかしくない状態かもしれない。

 不定期に目が潤んで、その度に俰盤がジュースやお菓子を食べさせている。クッキーとラスク、俰盤はカップケーキ等食べているが、硬めのものかな。


 二人とも言語能力は大人と大差ないほど、話を聞いてなおかつ自分に言っているのか父親に言っているのか姉妹に言っているのか区別し、睦の聞きたいことを的確に答える。




 俰盤の方は、相当視界が広いな。それに完璧に対応できる能力がある。


 揃って発達障害の傾向あり、ただし管理人が相当IQの高い人なので、発達障害は遺伝かもしれない。



 俰盤側は、一回周りから離して自分の自由にさせるというのをやらせないと将来の自主性に困る可能性があるが、まぁそれはここではいいや。





 娘たちのお菓子の食べた数とジュースの量をメモ帳に殴り書きで記録する。



「管理人、お二人っていつもお菓子よく食べますか」

『食べるよ〜。疓憝(ねうら)は菓子パンと俰盤(わだか)はアイスが好きなんだよね』

『好き』

『うん』

『お母さんアイスない?』

『あるよ。持ってくる』

「食事は平均的ですか」

『んー……疓憝は菓子パンだからどうしても量は減るかな。でも異常に少ないとかそれしか食べないってのはないよ。栄養的にもバランス取れてると思う。白米が苦手だから』

「……今から少しこの件とは違うお二人のことを聞いてもいいですか」

『二人とも大丈夫?』



 二人とも頷いてくれたので、睦は姿勢を変えると記録シートに要項を二つ付け足した。




「じゃあまず俰盤ちゃん。何アイスが好き?」

『バニラ。シャーベットみたいな氷氷してるのは嫌い』

「バニラのどんなところが好き?」

『……味?』

「匂いとかは?」

『普通……かな……? 特にバニラアイスの匂い嗅ぎたいとかもない……』

「嗅いだらバニラだってわかる?」

『バニラエッセンスとかバニラビーンズの匂いはわかるよね』

『ん?』

『たまにお母さんがケーキに使うこんな瓶のやつ』

『ん! わかる』

「ちなみにバニラビーンズとかエッセンスって味は苦いんだよ」

『えッ苦いの……?』

「お砂糖で甘くしてるから美味しいけどね」



 俰盤は自分が持っているアイスを凝視した。




 好奇心あり、知った反応は子供らしさが出る。




 何度か好きの知識欲を刺激してみると、俰盤は興味深そうにアイスを見ながら食べた。

 その間は疓憝の変化に気付かない。その歳で自らを自制するか。




 俰盤がアイスに興味津々になっていると、疓憝がぽろぽろと涙を零し始めた。


 お母さんが慌て、俰盤は疓憝にラスクを渡した。

 疓憝はそれを食べて、管理人が涙を拭いた。




「ごめんね俰盤ちゃん。もういいよ」

『……疓憝大丈夫?』

『うん……』



 疓憝が少し落ち着くまで待ち、睦はその間にパソコンと睨めっこした。


 この世界って発達障害とか心身障害って常識あるんだろうか。聞いたことないけど、でも廃教会には鬱っぽい人とか結構来たしな。そういう人はだいたい睦に任されてたけど、診断はくだせないので全部カウンセリングで治した。さすがに薬も使う人は使ったけど。




『ごめんね睦君。ちょっと待って』

「全然ゆっくりで大丈夫です。無理させないでください」

『ありがとう』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ