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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
54/124

34.ロック⑴

 トンネルから本拠地内部に入って数分すると、車が止まった。




 恋弥が一番に降り、続いてエリオムと睦と、陽泰と天獄も降りる。


 皆、ネズミのぬいぐるみを持っているエリオムを見て悶絶した。あと美男が揃いすぎてる。




 天獄は真正面から横に並ぶ三人を撮り、むふふと笑う。美形はいいなぁ。




「着いた〜!」

「やっぱ新幹線ないと不便だ……」

「ですね。一時間ぐらいでパパッと移動したいです」

「ほんとに」





 電車や新幹線のないこの世界で主な交通手段は超進化中の車。富豪は遊樹機も持ってる人多いらしいけど。

 新幹線でさっさと移動したい。


 まぁ三時間ぐらいならマシだけど。五時間とか六時間とか。地獄かよ。






「……にしても、相変わらずすごいですね」

「今さらに緑化計画が進んでるんですよ」





 トワイライトの本拠地は山の中にある。山をくり抜き、中を区間分けしたような空間。


 中央にはなにかの大木がそびえ立ち、木々が生い茂る山のいい土を再利用して、山の内部だというのに緑が多い。なんか、ドワーフとか住んでそうな。



 天井の山の一部がガラス張りで天窓のようになっていたり、もちろん床や壁はコンクリートやパネルだったりするが、地下もあるし居住区、研究室、訓練場等々、本拠地にふさわしい設備が多く揃っている。




 前の世界では、信じられないほど幻想的な空間。修茶(しゅうさ)さん連れてきてあげたいなぁ。






「行きましょうか。恋弥さんの部屋でよろしいんですよね」

「はい」

「疲れたー寝たい〜……!」

「お願いします」






 ちゃんとスペース区分考えて、マンションになっていたり一戸建てになっていたり、ほんとに設計者に会ってみたいほど洗練された造り。









 本来ならマンション上部にある恋弥の家に行くのがいいのだが、なんせエレベーターが使えない。かつ階段を上るとなれば、千段を超えてしまう。



 今日本部のビルを降りる時に恋弥があまりにも疲れた疲れたエレベーターと言うのでエレベーターで降りたら、案の定無理だった。それを再確認した当日だからこそエレベーターがほんとに無理。




「私の部屋も上層ですからね……」

「一番近いの陽泰のだろ」

「佚世さんのですよ」

「えーじゃあ佚世の借りるか。どうせ使われてないし」

「うち使いますか」

「えー」

「うちどうぞ」

「そんなに言うなら」



 顔面真っ青の陽泰とにっこにこの恋弥の間で決定したので、四人で陽泰の家に向かった。



 地上部から三階降りた地下部の空間。地下だけど、ちゃんと明るい。




「ほとんど使わないので何もありませんよ」

「寝れたらいい」

「幹部が上ってわけじゃないんだね」

「俺はボスから一番初めに貰った場所をずっと使ってるからな。基本的には上に上がっていく」

「引っ越し嫌いなタイプか」

「めんどくさい!」

「わかったよ……」



 陽泰がHgをかざすと、家の鍵が開いた。



 何回か来たことあるらしい恋弥は一人奥に入っていくと、寝室に消えた。まぁ、いいや。



「なんか必要なものは?」

「恋弥に必要なものは持ってきたけど。食事の材料ぐらいじゃない?」

「それは部下たちに任せましょう。いつも市場から仕入れてるので山から出なくても揃いますし」

「わぁすごい!」





 恋弥を見に行くと床で寝ていたので、布団をかけた。床で寝て体痛くならないといいけど。





 下っ端たちが車に乗っていた荷物や食材等を持ってきてくれて、受け取りが終わるとエリオムはボスの元に戻って行った。




 睦は料理が素人の陽泰に代わり食事を作る。




「料理ぐらいできるようになりなよ」

「最低限はできる!」

「そそっかしくない程度には慣れなよ」

「……手は切らない」

「プロでも切るし素人でも切らん奴は切らん」



 ムッスーと口角を下げて拗ねる陽泰に呆れ、やるかと聞いたがやらないと断られた。









 しばらくして、二人がご飯を食べ終わり二人で将棋をしているとふらっと恋弥がリビングにやってきた。


 ソファに突っ伏して、そこで寝る。




「……なんだ」

「ほっといていいよ。寂しかったんでしょ」


















 恋弥はこちらに移動してから翌日の朝まで一度も起きず、陽泰も、久々に何も気にせず眠れた睦も上機嫌で目を覚ました。



 上に伸び、一気に脱力する。




 一番に起きて睦のタブレットを触っていた恋弥は睦が起きると机にタブレットを置いた。ほぼ無敗やんけこの野郎。



「……何時からやってたの」

「七時前ぐらい?」

「ちょっと前か。……ずっと寝てた?」

「うん」



 ざっと十八時間ね。二十はいってないし、普段は八時間よりちょっと短いぐらいだからな。



「よく寝れたようでなにより」

「腹減った! 飯!」

「朝から元気だなぁ……」



 睦は机に突っ伏すと小さくあくびをして、髪を解いた。ウルフカットのような髪型で襟足だけ長いので、上の方は寝癖が付きやすい。なんでこんな髪型かって、まぁそれはのちのちわかる。


 ちなみに長い毛の毛先だけちょびっと黒。ほんと、数センチか数ミリかその程度だけ。





「陽泰起こしてきて」

「あいつ寝起き機嫌悪いじゃん」

「知らん。寝起きに会ったことがない」

「蹴られる」

「……危ねぇな」



 前親睦会前に車で寝ていたのは、やはり睦の前だし車だからというのもあっておとなしかったんだろうか。ちょっと怖いんですけど。





 睦は恋弥とともに恐る恐る部屋に向かった。




 そっと扉を開け中を覗くと、ベッドの上で布団が盛り上がっている。陽泰は見えないが、まぁいるんだろうな。


 頭側の壁に刀が立てかけてあり、ベッドそばの窓辺にはハンドガン。本拠地内でも油断も隙もねぇ。





「……起きるまでそっとしとこう」

「おう……」




 二人で顔を見合せて頷くと、そっと扉を閉じた。













 昼前に、陽泰が動き出す音がした。


 本を読んでいた恋弥と、陽泰とエリオムのノートをまとめていた睦が顔を上げる。



 なんかガッと音が鳴り、少し間が空いてまた二回連続で鳴った。


 なんか破壊行為がと思っていると、静まって、五分ほどするといつもの陽泰がリビングの扉を開けた。




「恋弥さん、野靄(のもや)さんと糖港(とうこう)さんが来るそうです」

「えやだ」

「誰?」

「元幹部と万年一班」

「断れないの?」

「俺は無理」

「あの二人佚世の愚痴しか言わねぇから聞いてて飽きる。陽泰行ってきたら?」

「恋弥さん断れませんか」

「体調悪いから無理って? 糖港発狂しながら飛んでくんぞ?」



 二人が頭を抱え、睦は陽泰からHgを借りた。

 メールの履歴を遡るが、この子既読無視常習犯だ。



 返す時は無理とか嫌とかそんなんしか言ってない。化けようがないじゃん。



「……恋弥Hg」

「ん。陽泰のは」

「こいつ既読無視常習犯で返信履歴がねぇ」

「俺にはちゃんと返すのに」

「返さなくていいなら返しませんよ」

「お前はメールが存在する理由を知ってるか?」



 恋弥の文を真似して、寝るから無理と送っといた。邪魔するなら相手するけど、ほんとに体調が悪いというのをアピールしたら夜に行くと時間をズラせた。あとは、まぁあとの誰かがどうにかするだろう。




「夜に来るってさ」

「おぉすげぇ! じゃ夜はどっか出よ」

「体力残しとけよ」

「おー!」



 恋弥はソファにもたれると読書に戻り、睦は昼食を作り始めた。




 二人に出すと、二人は目を丸くする。



「睦は?」

「俺ちょっと用事。エリオムさんと出かけてくる」

「……デート?」



 陽泰がハッとすると、聞いた睦はのほほんと笑った。陽泰の頭をぽんぽんして、出ていく。



 その反応がよくわからず恋弥を見ると、恋弥からは信じられものを見るような目で見られた。なんだよ二人揃って。










 エリオムと合流し、地上への階段を上がる。




「天獄さん大丈夫ですか」

「二日酔いにしてきました」

「……お酌が上手いんですね」

「にこにこ笑いながら注いどけば勝手に潰れます」

「あぁ……。酔った勢いで襲われないように気を付けてくださいよ」

「お守りはあります。人殺せるぐらいの」

「それはそれは。安心です」



 そっと胸に手を置いたエリオムに遠い目をして、二人であははと笑った。周りの美男美女を見ていた皆は顔を引きつらせる。





 地上からエレベーターで四階に上がると、四階はたぶん高級住宅街の部類なんだろうな。陽泰の家より明らか大きい綺麗な家が並んでいる。



「ここですか……」

「一番のお気に入りで一番大きい家だそうです。しかも二人暮らし」

「ボスと!?」

「いえ元恋人と」

「あぁ……元恋人って言ったら怒るんですよ。あんなキチガイと関わっただけで恥なのに恋人なんて反吐が出るって」

「あら。じゃあ元……同僚?」

「ストーカーでいいかと」

「では現ストーカーと」




 二人で行くと、脳之輔が待っていた。



 中に入って待っていると思ったら、扉の前で誰かと話している。




「脳之輔さん、お待たせしました」

「あ、よかった来た」



 脳之輔はあからさまにほっとした様子をして、睦は首を傾げながら脳之輔と話していた女の人を見下ろした。



「はじめまして……」

「はじめまして、ヴィールヒの元側付きだったシィーと申します」

「睦です。ヴィールヒって、佚世さんのストーカーの方ですよね……?」

「はい。……佚世さんを信じる者の中では、火事の犯人と言われている人です」

「へぇ」

「睦君、これ開けれないかい。あの子パスワード替えてた」

「あ、大丈夫です」



 睦はどこからかHgを取り出すと、それをかざした。すぐに扉のロックが開く。



「おぉ」



 と安心したのも束の間、ガチャンと、またロックがかかった音がした。




 皆が首を傾げ、睦は試しに扉に手をかけた。しかし当然開かず、あははやりすぎたかななんて笑って、またかざして開けた。今度はさっきよりも早く、ロックがかかる。




「……佚世さんだと思いますか?」

「睦君、そのHgイツ君から貰ったんだろう?」

「ですよね」



 佚世が託した相手を困らせるようなこと、するとは思えない。


 ただでさえ迷惑かけるのが嫌で全て自分でやろうとする子なのに。





 睦は扉に手をかざすと、ロックがかかる前に開けた。が。




 ロックがかかり、それと同時に佚世のHgが開いて赤い画面が出た。




──帰ってきたのね──

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