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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
49/124

29.最善策で

「おじゃましまーす」

「あ、こんにちは」



 やってきた天獄(てんごく)はそれを見て口を押さえた。




 恋弥が睦の膝に頭を乗せてクッションを抱えて、多少顔色が悪くうなされているものの完璧なペアが。




「……陽泰君、恋弥君の頭撫でない?」

「は?」

「寝てるので静かにしてください」



 天獄はスマホをいじっている睦と恋弥の写真を撮り、とりあえず満足した。



 エリオムは、最近性別に見境がなくなったボスを無視すると脳之輔に紙袋を渡す。




「お見舞いです。恋弥さんのお茶とお菓子を。また皆さんで食べてください」

「あ、よかった! 水しか飲まないからなんか我慢してんのかなーと思ってたんだよ」

「向こうの世界のお茶しか飲めないそうです。政府に連絡すると頂けました」

「わ〜ありがとう。これでちょっと落ち着くかも」



 脳之輔はキッチンにそれを持っていき、かと思えばすぐに戻ってきた。



「睦君、小雨君から」

「ありがとうございます」


 Hgで連絡くれたらよかったのに。




 睦が脳之輔から封筒を受け取り、中を見ると、初めは心配の声と一応を懸念して手紙でと書いてあった。


 それと、もう外聞は捨てて最速で解決したい、と。なるほどね。






 睦はスマホを置くとHgを開き、その間に脳之輔に手紙を渡した。



 脳之輔はそれに目を通すと、ビリビリ破き始める。




 睦が連絡を入れると、すぐに電話がかかってきた。


 睦はびっくりして、そのせいか恋弥が目を覚ました。



 起き上がって、目をこする。



「……あれボス」

「おはよう。体調どう?」

「普通です。……陽泰学校は?」

「休校です。ユグドラシルが入ったとなれば放置はできなかったようで」

「ふーん」

「恋弥、電話していい?」

「俺もやる」




 睦と恋弥は隣に並び、睦は電話をかけた。




 ワンコールも鳴らないうちに繋がって、律は画面の向こうで大喜びした。




『ねぇ睦君久しぶりぃ! かっこいいねぇ!? 顔面国宝が並んで!』

「お久しぶりです。少し相談したいことがありまして」

『いいよぅ! なんでもお願いして! 可愛く!』

「宗教開きません?」

「ユグドラシル対抗? さっさと潰せばいいのに」

「どうせなら悪の粛清もしたいじゃん」

「好きにすりゃいいけど。ピステルに頼んだらスイハとの均衡崩れるだろ」

「知らん知らん。どうでもいい。……てことで律さん、やりません?」



 さすがの律も今の睦と恋弥の会話を聞いて快く承諾はしないと思ったが、見誤っていたようだ。



『いいよぅ! 宗教でしょ、やるやる! 元教祖に任せなさい!』

「頼りにしています。大筋の流れは一応考えてるんですが」

『うん!』

「ユグドラシルは殺人行為等々を必要とあらばやります。ので、メスを入れるならそこです。殺人行為による罪悪感から律さんの宗教に引き入れます。そこからユグドラシルを崩壊させて対面で情報掴んで、まぁ残りカスは処分したらいいでしょう。スイハとは喧嘩になるでしょうけど頑張ってください。政府とスレッドはジュワルパの参界者捕まえるので」

『わかった! ユグドラシルからこっちに引っ張るのは無理やりでいいんでしょ! できるよぅできる! できるからできたら褒めてね!』

「それはもちろん」

『宗教な名前どうする! ピステルじゃまんまだもんね!』



 睦が恋弥を見ると、元気だなぁとだけ思って眺めていた恋弥は首を傾げた。



「何?」

「名前どうする?」

「崩壊だろ。レディングとかでいいじゃん」

「じゃグレイディで!」

『はぁい!』

「何グレイディ」

「直感」

『あぁあとあとあと! 二人のツーショット送ってくれたらスイハとの争いも避けられるよ!?』



 通話を切ると、びっくりするほど部屋の中は静かになった。



 睦は小雨に連絡を入れ、恋弥は睦の肩にもたれてそれを眺める。




「潜入誰にするか」

「陽泰は顔知られてるもんなぁ」

「私行きましょうか」



 そう前から声が聞こえ、二人で顔を上げた。

 恋弥が首を傾げ、言葉を発する前にボスが発狂する。



「ダメッ! エリちゃんは関わっちゃ駄目!」

「私の元の世界は宗教が多かったので上手く誘導できると思います。律さんとも管理人様とも面識がありますし」

「エリオム!」

「じゃあお願いします。保護者役入ります?」

「いえ。孤児で適当にさまよって着いたといえばそれっぽいでしょう」



 天獄がエリオムを押し倒し、エリオムの首を絞めようとしていると、恋弥がそれを剥がした。陽泰が引きずって捨てに行く。




「大丈夫ですか」

「……びっくり」




 恋弥はエリオムに手を貸し、かと思えばスモッグがキッチンの方からやってきた。

 いるのはわからなくもないが、なんでそっちから来んだと思えば、リンゴをかじる脳之輔も戻ってくる。



 スモッグはエリオムの髪を整え、脳之輔は恋弥用に切ったフルーツをエリオムに差し出した。


 あの車内(親睦会)以来、フルーツブームのエリオムはお礼を言って一切れ貰った。



 恋弥は睦とともにそれを食べ始める。




「ん〜、じゃあ今夜お願いします。明日になったら監禁されかねませんし」

「はい」

「……エリオム様、なにかあればすぐ連絡くださいね。たぶんどんだけでも荒らせるので、陽泰なら」

「俺!?」

「お前ならどんだけ荒らしても既に悪役だから!」

「不名誉なんですが」

「ちゃんと守るんだよ」



 帰ってきた陽泰は恋弥には顔をしかめたものの、睦にはしっかり頷いた。


 これに関しては、恋弥の言いがかりが悪い。陽泰は知らぬ間に敵対視されていただけ。





 恋弥は不満そうにしながら、睦にもたれた。




「ねむいー」

「寝てないんですか?」

「夜寝れなかったんだよ。寝てすぐ起きたし」

「タイミングが悪かったんですね、すみません騒がしくして」

「いいけど」



 ていうか、寝転がるのが怖いというなら敷布団の方がいい気がするなぁ。マットレス床に敷くだけでも、この狭い手術台よりマシ。圧倒的に。



 睦は恋弥を支える。




 珍しく元気じゃない恋弥に、陽泰たちは心配そう。




「脳之輔さん、空いてる部屋ありませんか? マットレス下に敷けばだいぶんマシな気がします」

「空いてる部屋……はないなぁ。向こう移動したらイツのスペースか小間(ブース)の一個空けられるけど」

「……移動します?」

「トワイライトの医務室に来たらいいだろう。なんのためのボスの権力」

「俺はともかく脳之輔さんはよろしくないんじゃない?」

「問題ない。ボスは先生と佚世さんを敵対視する人を粛清してるからな」











 ということで家の外で健気に待っていた天獄とともに、トワイライトの本部に戻ることになった。




「しっかり休むなら本拠地に戻ってもいいと思うけどねぇ」

「本拠地ってあそこ三時間ぐらいかかりますよね?」

「ここからだとそうだねぇ、ちょうどそのぐらい」

「長時間移動はもう少し落ち着いてからの方がいいと思います」

「まぁまずは落ち着く場所に行くのがいいよね。医務室と恋弥君の部屋両方空けさせるよ」

「ありがとうございます」




 エリオムはボスから離れ、陽泰の横に避難。恋弥に外套(マント)を取られた睦は恋弥の腕を掴みながら、天獄について行った。








 本部に着くと残りの五大幹部、本部にいる氷海獺(ひのらっこ)雨地科(うじか)が出てきた。


 一班も数人出てくるが、数人は睦と脳之輔を見て顔をしかめる。




「恋弥……! ボスも、おかえりなさい」

「恋弥、もう大丈夫なの?」

「一人入院させるのと一人泊まらせるのには場所が足りないから移動しただけだよ。まるで治ってはない」

「とりあえず恋弥の部屋に行っていいですか。脳之輔さん……は、医務室ですね」

「だねぇ。諸々は持っていくよ」

「お願いします。……恋弥エレベーター大丈夫?」



 聞くと、恋弥は数秒固まってから魂が抜けたような顔をした。駄目だなこれは。



「階段で行くか」

「十七階だよ……?」

「十五段でしょう? 二百五十五、余裕ですね。……陽泰はどうする?」

「先に行って片付けとく」

「じゃよろしく」



 上手く地獄階段をかわした陽泰はこくりと頷くと、エリオムとともにエレベーターに乗っていった。


 スモッグは一緒に来るらしい。



「二人だけじゃ落ちたとき危ないし」

「ぶっちゃけ助かる。行こうか」

「うん」



 睦は嫌がる恋弥にフードを被せると、階段を軽快に駆け上がった。







 陽泰たちが部屋を片付けてくれたので、発作が起こりそうな銃火器等は片付けられていた。


 カーテンも閉まり、でも部屋はちゃんと明るい。





 部屋に帰り、ようやく外套(マント)を脱ぐのを許可された恋弥はそれを脱いだ。


 自分から奪っておいてなんだが、これはなかなかに鬱陶しい。動きが制限されるなんて話じゃねぇ。まとわりついて邪魔だ。




「お前いっつもこんなん着て動いてんのかよ」

「……身長が合わないからじゃない!?」



 睦を蹴り飛ばしてから、ベッドに座った。足が突いてれば、大丈夫なんだけどなぁ。




「……暇! 俺いっつもなにしてるっけ!?」

「仕事」

「読書してるでしょう。見るからに読書でしょう」



 部屋に身長よりも高い本棚が三つもあんだからよ。それが全部埋まってんだからよ。




 陽泰がそういうと、恋弥は本棚に目を向けた。



「…………陽泰、お前先週のテスト理科だけ一桁だったな」

「解答欄がズレていたからであって」

「補習四回ぐらい落ちて……」

「仕事が忙しかったからであってッ!」



 恋弥がにこやかに笑うと、陽泰はウッと言葉を詰まらせた。

 しかし、圧に負ける前に、睦が二人の会話の間に座った。



「恋弥もさして点数よくなかったじゃん。俺が天才とはいえ二つ下に教えを願うのはどうかと思う」

「助かった!」

「陽泰は前まで全部満点の勢いだったのにどうしたの?」

「…………クラスが変わったあとも仕事が忙しくて早退してたら、理科は午後が多いから授業受けれない……」

「今持ってきたら教えてあげるよ」

「別に……」

「万年満点だった俺が教えてあげるよ」



 陽泰よりも先にエリオムが飛び出していき、睦のにこにこの笑顔に観念した陽泰もおとなしく取りに行った。





 とりあえず睦はスモッグとともに、替えの、本来ならベッドに置く用のマットレスをベッド横の地面に置いた。


 シーツを張って枕と布団を移動させる。



 二個一のマットレスを半分しか出していないので掛け布団がかなり大きいが、まぁいいだろう。大は小を兼ねる。




「ここならどう? 寝転がりやすいと思うけど」



 ベッドの隅に座って着々と用意されていくマットレスを眺めていた恋弥は地面を這うと、マットレスに移動した。



「……あ落ちない」

「平気そう? もう一枚敷いてもスペース的には余裕ありそうだけど」

「これでいい。てことで寝る」

「おやすみ」



 恋弥は枕を抱っこしながら丸まって眠り始めた。





 皆はまだ睦に幼さが残るというが、睦からすれば二歳年上のこいつの方が明らかに子供っぽいと思う。言動から心理含めて。

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