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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
36/124

16.大陸

 ソファに座ると、お茶を出してくれた。どこから入手するんだろうな、緑茶。



 玄関の両端で睦とともにやってきた神迎の見守りの人にもお茶を渡した。二人とも感動するような目で頭を下げる。








「思ったよりちゃんとした家ですね」

「あぁ、普通の洋室かと思ったらガッツリ家やし」

「ひろ……」



 LDKに、半地下に洋室があるらしい。半地下と言えどちゃんと天井も高く、申し分ない。

 家具等も揃っていたし、まぁ趣味に合わせるのにちょろっと買い替えてもらったけど。めっちゃ豪華な家。



「一人で住むには広すぎてちょっと寂しささえある」

「あぁ、一人暮らしあるある」

「わかるか?」

「いえ知識としてだけ。どこの世界もあるあるは変わりませんよ」




 久しぶりの緑茶にしみじみしながら、ホッと息をついた。




 向かいに座る修茶(しゅうさ)は少し首を傾げた。



「どうした?」

「修茶さん、俺のいる組織に入らないかと思いまして」

「ええよ?」

「え……ええんですか……」


 案外あっさり。



 睦が微かに首を傾げると、修茶は弾むように頷いた。



「明らか子供多かったやん。心配やってん」

「ありがとうございます。十九で成人のこの世界で現状大人が俺しかいません」

「やろ? 事務仕事ぐらいなら引き受けられるし、なんなら就職活動せんで命守られるのは俺にとってもありがたい」

「そんな頭の痛くなるワードばっか出さないでください。入るなら命は賭けることになりますよ」

「命を賭けるのは慣れっこや。前の世界じゃいつ死んでもおかしくなったし現に死んでこっちにおるし」

「あー……同じ」



 二人ではははと乾いた笑みを零し、玄関のそばにいる神迎は二人とも顔を引きつらせた。




「ちなみに殺人等ありますが」

「ええよ。俺の妖心(ようしん)殺人特化やもん」

「……妖心って対怪異(化け物)用の使い魔みたいなものですよね? いいんですか、んな物騒なの」

「いいも悪いも選べんもん。知りませぇん」

「ではこちらの世界ではありがたく使わせていただくとします。近いうちに小雨さんから連絡があるかと」

「おう! また連絡するわ」

「待っています。……あぁそれと」

「ん?」

「緑茶の入手方法教えてください」























 冷たい緑茶を飲みながら、久しぶりにまったりする。



 来週頭から雨豪と修茶の雇用も決定し、響皐月はさっそく新しい仲間にわくわくわくわくしている。


 二人の教育係は景矢に任せるので、睦はしばしの休憩。





 気温は上がる一方、枯梨はへばり、響皐月は元気に公園に遊びに行った。景矢は一人余裕そう。

 ちなみに、暑さには激弱の睦も瀕死。






 事務室で仕事をしながらぐったりしていると、景矢が何かを描いて持ってきてくれた。



「睦さん、これどうぞ」

「……あぁ涼しい〜……! 神だ〜……」

「喜んでいただけて何よりです」




 全身が涼しくなる不思議な紙を首に当て、それに感動する。極楽。



「三つぐらい貼りたい」

「風邪引ますよ。体弱いのに」

「弱くないよぉ!? あれは脳みそがショートしてるだけ!」

「元気になったようでなによりです」

「寒い方がいいんだけどなぁ」

「適温が一番でしょう……」



 景矢は自分の席の向かいでへばっている枯梨にもそれを貼り、枯梨は半泣きで大喜びする。





 皆で仕事が進んでいると、扉が開いた。


 下の対応をしていたミヤが上がってくる。




「おーい午前二件入ったぞー」

「今日は暇ですねぇ。平和なようで何よりですが」

「そうでもなさそうだぞ?」




 ミヤが睦の前に行くと、皆が睦の元に集まった。




「……二件とも宗教相談か」

「どちらも家族が宗教に金を貢ぎこんでいるというものだな。同じ宗教だった」

「とりあえず依頼は完遂するとして……」


 三人が睦を見ると、睦は頬杖をついて微かに目を細めた。



「宗教かぁ。宗教は難しいからなぁ」

「宗教って……何?」

「集団ヒステリー」

「やめなさい」



 枯梨に嘘を教えるミヤの口を塞ぎ、紙を貰うと足を組んだ。






 宗教なぁ。


 ハマったきっかけが、一人は夫の死、一人は借金返済の救済を求めて。

 流行りとかなら簡単だったんだけれども、二人ともかなり心身に傷を負った状態だ。下手に引き剥がすと自傷や自殺に走りかねない。そうなれば、さらに困るのは目に見えている。


 相当こじれた関係じゃない限りやめさせたいのは家族諸共自滅したくないからだろうし、これはやり方を考えないと。



 人を操るのは苦手だ。







 景矢が枯梨に宗教の概要とその怖さを教え、睦が悩んでいるとミヤが睦の横に回った。


 紙を覗き込み、二人目の紙を指さす。



「こっちは友人諸共ハマって子供たちも勧誘されてる。親に」

「相当なストレスだな……宗教…………。とりあえずミヤは宗教の諸々調べて。景矢、出かけよう。枯梨は仕事の続きとお客さん来たら対応お願いね」

「わかりました」

「全部調べるか?」

「うん。噂とかはこっちでもやるけど、表から裏まで」

「下から上までな。了解した」








 景矢と外套(マント)に身を包み、街を歩く。調査ついでに買ったりんごをかじった。



「あんま甘くない」

「ハズレですね。あんまりハズレが当たるイメージありませんでしたが」

「……行く末不安だなぁ……」





















 この大陸は地図で見ると、右下から左上に斜めになっている。右上に、ここの10分の1か9分の1ぐらいの小さな大陸がある。

 勝手にユーラシア大陸と小さめのオーストラリア大陸ぐらいと思ってるけど。




 ユーラシア大陸はヴィルパ、オーストラリア大陸はジュワルパというらしい。


 ジュワルパの方は言語が違うので別の政府が管理し、ヴィルパは全てを中央政府が管理している。

 ただし、参界者はほんっとに取り合いで時に戦争になり兼ねないのでお互いその存在は隠しているそうな。










 その存在は、各政府によって絶対に隠され守られ、丁重に扱われるはずなのだが。










 海辺沿いの公園にあるベンチに腰かけ、小さくあくびをした。



「まさかもう一つの大陸の参界者が教祖なんて……」

「さ〜大問題だねぇ……」

「……呑気そうですね」

「まぁ政府の出方を見ないとなんもできないからさ。今はそんな難しく捉えなくていいよ」

「そう……そんなもんですか……?」

「そんなもんそんなもん。美味しいもの食べて帰ろう」

「枯梨が妬きますよ」

「枯梨には景矢が美味しいもの作ってあげな」

「あぁ買って帰る選択肢はないんですね」

「うん! 痛ッ」



 景矢につねられた睦はけらけら笑いながら、二人で空いてそうなカフェに入った。

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