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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
34/124

14.委員長

「着物……!」


 袴の男、参界者。でも景矢の世界の奴じゃない。





 刺客の男は刀を立てた陽泰と押し合う。



「何故刀を持っている?」

「今日に限って鬱陶しい……」




 陽泰はどこで身につけた剣術か、刺客の男の刀を片手で持った刀で受け流すと数歩後ろに下がった。




 片手に鞘、片手に刀で余裕の澄まし顔、カッコよすぎだろ。



 管理人の後ろから顔を出した雨々驟は連写し、管理人はそれをとても呆れた目で見下ろした。





 刺客は、暗殺というより殺害を命じられたって感じかな。



 男が刀を振ろうとしたとき、突然その動きが止まった。




 宙に血が伝い、男の着物が赤に染まる。



 皆が眉を寄せると、刺客は刀を落とした。




「あんまり抵抗すると腕落ちますよ」



 陽泰は刀を納め、睦は男のそばに向かう。


 男の動きを止めた犯人である枯梨もやってくる。








 枯梨はピエロだ。ピエロはマジックをするし、傀儡(くぐつ)も操る。




 男が無理に動こうとするので指から血が出ている。こうなるから、小雨からは使わないよう言われていたのだが。



「糸切っていいよ」

「でも……」

「大丈夫」



 睦が枯梨の手に触れると、途端糸が切れた。男が倒れ、呼吸が止まる。




「ミヤ! 見といて」

「三分で死に始めるぞ?」

「呼吸はやらせていいよ……」



 ミヤが男の上に座ると、猫又は男を吟味するように周囲を歩き始めた。




 睦は男の刀を拾い、それを確認する。




「……打刀のくせに重い……」

「…………数百年前の刀鍛冶が打ったものだ」

「いい刀ですね」

「わかるのか」

「うちには刀が五刀ありました。少しばかり教わったことがあります」

「刀ってそんなどこにでもあるものか? うちにも三本あるが」

「日本の文化遺産ですし!」

「寄贈は?」

「してない」




 男から鞘を抜くと、刀を納めた。



 陽泰も寄ってきて、女子を引きずった恋弥もやってくる。




「陽泰、こいつ知り合いか?」

「…………いや……?」



 真面目な顔で首を傾げた陽泰に、さっき叫んだ男子と恋弥に腕を押さえられている女子、二人が声を揃えて怒鳴った。



「はァ!?」

「お前ッ! そんなんだから毎日女子を泣かせんだろ!?」

「ねぇ名前教えたよね!? 今週三回教えたよね!? ねぇッ!?」



 何故かいる雨乃(あまの)に首を絞められ、聞き覚えのある気がする声で怒鳴られる。



「……あ、姫!」

「お前にだけはそのあだ名で呼ばれたくねぇッ!」

比奈風(ひなかぜ)莉央奈(りおな)ちゃんな? いい加減覚えろよ鳥頭」

「…………人の名前なんか興味ない……」

「仲良さそうでなによりだけどよぉ」



 バツの悪そうに顔をしかめて逸らした陽泰は、恋弥の声でハッとした。




 雨乃も腕を引っ込め、後ろで手を組む。


 この人、前学校で陽泰突き飛ばして逃げてった人だ。

 体育館の口振りからトイトの誰かではあると思っていたが、親睦会に出席する、しかも葉笶(ようや)が敬語使う人だろ。もしかして幹部の重役なんじゃ……。






「陽泰君、大丈夫かい」



 ボスとエリオムがやってきて、エリオムは陽泰に白の手袋を渡した。




「問題ありません。特に死に関わることはありませんでしたし」

「あれ致死性の毒じゃないの……?」

「解毒剤がないときに心配してください」



 白い手袋を付けた陽泰は、ハンカチで刀の鞘を拭う。

 エリオムはそれを預かり、ポケットに入れた。




 恋弥はさっきの怯えた表情はどこへやら、キレた目で陽泰を睨む女子の腕を枯梨に縛ってもらった。




「お前、雇われか?」

「言いません」

「耳打ち落とすぞ」

「構いません」



 恋弥は問答無用で発砲し、少女は痛みに顔を歪めた。



「次。お前プロじゃないだろ。参謀(スパイ)か?」

「言いません」

「スパイではないと思います。あまりにも不向きすぎる」

「陽泰が言うのは珍しいな。相当な馬鹿じゃない限りスパイぐらいできるだろって言うのに」

「口が軽いのは致命的な欠点でしょう。言ったことに本人が気付いてないんですから」

「あぁ、無理だなそりゃ」



 顔を引きつらせる少女の首に銃口を当て、睦を見た。



「殺すか?」

「小雨さんに引き渡しましょう。参界者との繋がりを調べないと、たった一人残ったのに」

「馬鹿すか殺されるよりいいだろ!」

「それはそうなんですが。それはそうなんですがッ!」

「まぁまぁまぁ」



 陽泰は睦の胸に手を置き、恋弥の口を塞ぐと問答無用で引き離した。



 すぐに、上から小雨が降ってきた。


 見上げると、影がかからない方に遊樹機が飛びはしごが垂れていた。




「お待たせしました」

「緊急にしては最速でしたよ。これが参界者と参界者に雇われた可能性がある子です」

「雇われた可能性?」




 睦は小雨に小声で耳打ちし、小雨は眉を寄せた。


 少女を受け取ると、ミヤが座っていた参界者を立たせる。




「政府の保護下に入らず監視から逃げたと思えば」

「あんなものに付きまとわれては仕事にならん」

「そんな仕事しないでください」

「春雨さん、確認できたらぜひスレッドに」

「小雨ですあとであなたからも説得しに来てください」

「はぁい」



 睦はにこにこで返すと、秘書と副管理人に庇われていた律と管理人の方を向いた。



「……どうします?」

「おひ……」

「続けようよー! 全員死んだんだしさぁ!? ねぇッ!?」



 律が帝翔を睨むと、遠くにいた帝翔は素知らぬ顔でそっぽ向く。



 皆が律のわがままに呆れ、しかし却下することもできないまま、荒れた親睦会は続行になった。




「と言っても俺と景矢は抜けますよ。仕事ができたので」

「俺も。こいつ検査連れて行くんで」

「ということで俺も」

「えぇ睦君抜けるのッ!? じゃあ僕も行くッ!」



 手を上げた恋弥と陽泰を無視して、律は睦に泣き付いた。



 ライムがどこからか出した何かで後ろから律の頭を勢いよく叩く。



「では終わり次第ミヤさん、枯梨さん、響皐月さんは私が送り届けさせていただきます」

「待て、私も行く」

「いいけど。どうしたの?」

「少し気になることがある」

「ではお二人ということで」

「お願いします」

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