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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
27/124

7.3B

 少しトラブルが起きて、結局目的地一歩手前から歩くことになった。

 トラブルつっても、政府の無線検問に引っかかって小雨(ささめ)がブチギレそうになったこととバスキ結社の見張りが思ったよりも広がり、というかどっかでバレたんだろうな。落とされそうになっただけだけど。





「行く末不安でしかねぇなぁ」

「まぁこの面子(メンバー)ならなんか起きても安心ではある」

「それはそう」




 (むつ)恋弥(れんや)が先頭で、帝翔(ていと)小雨(ささめ)貝寄(かいより)がどこかに行かないように見張って、一番後ろは陽泰(ようたい)に任せて。皆で森を歩く。


 なんだろう、なんで、この先頭二人はこんな森歩き慣れてんだろう。





 睦と恋弥は足を止めると後ろに振り返った。

 足音が遠のいたと思ったら、全員森の木の根が張り付くされた道に苦戦して体力が尽きている。

 そもそもこの四人、体力馬鹿のタイプじゃねぇからな。


 比較的マシな陽泰も涼しい顔で立っているが汗をかき、こいつ顔いいな。上手く歩けない貝寄は至極不機嫌そう。作戦のために黙ってるって感じか。癇癪起こさないだけマシ。




「なんでそんな満身創痍なん? なんもやってないのに」



 ケロッとした顔で聞く恋弥を皆が凝視し、睦は苦笑いを零した。



「少しゆっくり歩きましょう」

「えー、ただでさえ遅れてんのに」

「逆にお前はなんでそんな……! スーツでケロッとしてんの……!?」



 既に貝寄を見ながらで瀕死の帝翔が恋弥を睨むと、恋弥は首を傾げて足元を見下ろした。



「沼じゃないだけマシっすよ」

「お前案外野生児?」

「元いた世界がそんな感じなんですぅッ! お前はなんでんなケロッとしてんだよ!?」

「ビルの瓦礫歩くより死体の山歩くよりマシ。行きましょう」



 あぁ、そう考えればそうか。




 瓦礫の山はわからないが、死体の山は幾度となく歩いてきた四人はその感覚でまた歩き始めた。


 今度は少しペースを落としたこともあってか比較的楽に着き、既に十人近く殺している睦は装弾する。



 睦の銃はお下がり。これしか使ったことないけど、一番のお気に入り。




「……あ、人の山だ」

「頼みました」

「任せろ雑魚共」

「俺が地面割ってもいいんだけどさ! ごォく稀にお前の足元も割れるからさ! この前みたいに!」

「おとなしくやらさせていただきますぅ」




 嫌味だらけの会話をする先頭二人に呆れながら、恋弥と貝寄で先頭に出た。



 貝寄(考の神)が思考をショートさせ、恋弥が弾を操る能力で頭を貫いていく。

 これは対象が弾と認識しているものなら操れるので、結構概念的(チート)能力。



 たとえ恋弥の能力を知っていたとしても帝翔(思の神)貝寄(考の神)がいる限り、自らの脳は意味をなさない。




「どうだ?」

「今のうちに入ろう」

「おう」



 恋弥は目を押さえて視ないようにする睦を支えながら、睦と小雨の指示通りの道に進む。迷うことなく階段に着いた。




 睦の能力、異能(イノウ)と言うらしいが。は使いすぎると脳がショートする。それは回数の問題ではなく、本来なら知り得ない情報がどれだけ入ってくるか。

 そもそも人間が持つべき能力じゃないとかなんとか。


 恋弥の持つ才能(ギフト)とはまた全く別の代物。







 地下に降り、睦を中央にして陽泰と小雨が前に出た。



 地下一階には、謎の機械。



 人が一人入れるぐらいの丸いガラスケース、相当分厚そうだが。に、ピンクの液体が満ち満ちている。


 中にはエアーポンプから泡が出ているものや、なにかの袋が入っているものもある。


 それが中央に二列、計十個。




 なんか映画で、こういう容器から人体実験されたゾンビが出てくるんだよなぁと、言いたくなるようなやつ。




 二階にも同じようなものがあって、地下三階にはその容器に水草のようなものが生えていた。


 三階とも同じケースだが、ここだけ水が紫だ。草の影響か。




「これなんの草?」

「……ウラクソウだってさ」

「史上最悪の違法薬物ですね。一日たばこ一本分吸えば一週間で毒が溜まって死にます。過去にこれで戦争や都市壊滅も起きました」

「学校でやった気がするぅー」

「やりましたよ」

「俺やってない」



 成績優秀な陽泰はアホなことを言う恋弥に呆れ、学校に通い始めるのが遅かった睦は少し首を傾げた。




 こんな植物生産して、市場でも乗っ取る気だったんだろうか。こんだけ派手に動けば即しょっぴかれるのはわかってただろうに。なんならスイハの影に隠れて政府じゃ収拾がつかないほど一気に売り捌いた方が、まだマシだった気がするが。




「依存性、中毒性ともにとても高いので、持っているだけで即実刑判決です」

「そんなに?」

「葉の裏に種がびっしり付いてるのに水がなくても土さえあれば、まぁコンクリートの中でも育つものは育つみたいですが。繁殖力が異常に高くなるよう品種改良されたものが主流となっているので葉を一枚見つければ神迎で街全てを調べ尽くすことになります。花を付けずとも繁殖するクソ植物なので」

「げぇ……」

「ここまで運び込まれた方法を調べて、近場の草場は焼き尽くさないと」

「焼いていいんですか?」

「よくありませんよ。煙吸うだけで子供は死ぬんですから」



 ただ、政府もやられっぱなしじゃあないので。

 掘り返して集めて、政府にある専用の処理溶解炉に入れたら問題ない。煙も漏れないし、完全に無毒化してから外に出すので環境や人にも優しいよってやつ。




「あの廃ビルを守ってたってことはあの辺りにもクサレ草がありそうですね」

「ウラクソウですよ」

「この液体は何?」

「見たところ土の代わりって感じかと」

「無駄にかっけぇなくそ」



 なんかロマンが詰め込まれたような施設だなぁと見て回っていると、ふと目立たなかった扉を見つけた。


 ドアノブを回すが、鍵がかかっている。




「恋弥さんこれ行けます?」

「無理に決まってんだろ。陽泰! 開けて」

「わ〜珍しい鍵穴だ」

「主流はHg(ホログラム)ですもんねぇ」



 陽泰は未だ使っていない刀を恋弥に渡すとどこからかなにかのケースを取り出し、なにかの板を取り出した。バタフライナイフのように回すと専用のピックが出てきた。


 この子、最年少のくせに一番カッコイイかもしれない。




 片膝を突いて、鍵穴に二本突っ込むとものの数秒でがちゃんと鳴った。



「開きました」

「すげぇ!」

「かっけぇ……! 俺もやりたい……!」

「お前は無理。不器用だろ」

「あぅ……。……ねぇ教えて!?」

「え、いや…………はぁ……」

「断らないと永遠に口説かれるよ」

「ごめんなさい」



 陽泰は丁寧に頭を下げると刀を返してもらい、皆とは別に見張りで外に残った。

 ものすごくストレートに断った陽泰を帝翔は大笑いする。貝寄はしょぼん。




 中に入ると、中は正しく研究室そのものだった。



 厚いガラスのクワガタを飼ってそうなサイズのケースが三つと、顕微鏡や、ピペットもささっている試験管立て等。ちょっと、色々と懐かしいものがある。



 その中に一つ、帝翔が興味を示した。



「ねぇ睦くん! これなに?」

「……あ、スマホ」





 黒いスマホにめっちゃカッコイイ金と透明のケースがはまっているスマホを手に取った。あぁ懐かしい。



 ちゃんと電源付くし、残り70%以上ある。すげぇな。

 ちゃんとロックはかかっていたので中は見れないが、カメラも使えるし電話も一応かけるまではいけそう。繋がらないだろうけど。

 でも同じ世界にいるなら、スマホ同士ならいけるんだろうか。たぶん睦のスマホは政府が研究室から押収したものの中にあるんだけど。




「うわぁなっつー……」

「ナッツ?」

「小雨さん、修茶(しゅうさ)さんに連絡取れますか」

「取れますよ」





 睦は小雨からHgを借りると色々と連絡を取った。



 そのうち、追っ手が来たようで皆が外に出て応戦した。



 基本的に貝寄・恋弥のコンビ、陽泰は遠距離の場合は血の帯で敵を切り裂き、帝翔は心情操作で内部から混乱を巻き起こし、小雨は後方で仕事。





 睦は連絡で、わりと自分のいた世界と修茶たちがいた世界が似ていることを知る。

 景矢(けいや)枯梨(からり)から聞いたファンタジーな世界とはまるで違う。


 でも睦がいた世界は鏡界魔(キョウカイマ)という化け物が、修茶たちのいた世界には怪異(かいい)という幽霊的な何かがいたらしい。あの猫又は、人々が使う善良な怪異(かいい)のものだと。




 違うくせに歴史的にはほぼ同じなんだなぁと思いながら、その子のスマホを持って外に出た。



 小雨が駆け寄ってきて、睦を見上げる。



「すみません、一瞬だけお願いしてもいいですか」

「一瞬と言わず何度でも」

「体調最優先でお願いします」


 恋弥め。余計なこと言いやがって。




 睦はHgを受け取ると、震える足と膝に力を入れて相手の素性を確認する。


 政府のデータ網すげぇ。






 こーゆー情報が多すぎる場所を一定期間視つめると、確実に吐くのでHgの睨めっこしながらたまに視線をやる程度。


 そのまま情報を打ち込み、死んだ奴と死んでない奴の区別もしていく。




 そのうち、恋弥がイライラし始めた。



「あーもーまどろっこしいッ! 陽泰アレやれ!」

「えッ」

「なに!? なにやるの!? 俺もやる!」

「お前は餓鬼じゃないんだからいちいち飛びつくな」

「俺もやる〜!」

「貝寄さんは失神に全振りでお願いします。二人とも爆破するならなるべく死体の損傷減らして」

「むーりー」




 恋弥は弾で殺すのをやめると、弾の列で守衛(オフェンス)を作った。敵が少し溜まったところで、ピンを抜いて顔付近に投げる。それを陽泰が撃つと、見事爆発し数十人の頭が吹き飛んだ。




 飛ぶ血は陽泰が止めるが汚くてしょうがない。

 恋弥は貝寄に爆破の極意なるものを教え始めたし、そのせいで失神が止まって陽泰と帝翔どころか小雨の負担も増えたし。




「……そろそろ一時ですね」

「そうですかッ……!」




 薬切れるのが二時頃なんだよなぁ。本当は十一時頃に飲む予定だったのを、あまりにも体調が悪くゲーゲー吐くので早めに飲んだのだ。結果活動時間が短くなってしまった。


 あの人が使っていた劇薬は長らく使っていないので用法を計算し直さないと使えないし、市販の薬を連続的に使うとたぶん内臓が死ぬし。主に胃腸が。



 予定外が起きすぎた。





「恋弥さん、爆発やめ」

「あ?」

「言うから撃ち抜け」

「お前ただでさえゲーゲー吐いてたくせに追い討ちかけるなよな! 薬切れんぞ?」

「問題ない」

「問題しかねぇだろうが……」




 そう半ギレながらも、恋弥は爆発をやめると落ちている弾を浮かせた。

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