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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
26/124

6.遊樹機

 着いて、面子(メンバー)を確認した。




「……陽泰(ようたい)さんは?」

「仕事。途中合流予定」

「予定」

「合流しますぅ」

「うざ」



 (むつ)は蹴ってくる恋弥(れんや)を無視して、帝翔(ていと)から資料と管理人からの手紙を受け取った。



──お大事に笑──



 と。馬鹿にされてるとしか思えないのは、性根が腐っているのを自覚しているからだろうか。

 紙を握り潰すと帝翔に返す。



 恋弥は顔を引きつらせ、小雨(ささめ)はこめかみを押さえた。




「行きましょう」




 帝翔に口を塞がれていた貝寄(かいより)がぶんぶんと腕を振って、小雨に叩き落とされた。この世代(金の世代)の人たちは見ていて結構面白い。





 小雨の部下が運転する遊樹機(小型ジェット)に乗る。


 小型ジェットと言っても、形は全然違うし法律も違う。ただ、前の世界の言葉で表すならというだけ。そもそも動いているものがHg同様充電要らずの樹力なので。




 わざわざ紙にまとめられた資料を開け、中を確認した。



 とりあえず、件の簡易報告書とその様子。

 元同僚で最も仲が良かったものを友人として向かわせたのと同時に、隠密二人を本部に送ったそうだ。

 その結果、最重要幹部と思われる元スイハ軍部長には護衛三人。本部周りの警戒は、周囲に隙間なく人の壁。周囲の見張りも人と機械で完全防御、遊樹機(ゆうきき)で上を通ろうもんなら、即撃ち落とされるぐらいの警戒らしい。その中で偵察できるのがすげぇ。




 でもまぁ、警戒程度ならサクッと突破できるだろうな。




「人数少ないから……」



 沈黙を破り、睦が呟くと皆が顔を上げた。



「最効率化必須。F18、3B、R2なら屋上……は無理か。二手はだめ……潰して寄せて上がるか……の方が手っ取り早いよなぁ……」




 熱が完治しきらなかった睦は無意識のうちにぶつぶつと呟き、恋弥と帝翔はそれの動画を撮る。貝寄は帝翔のHgを覗き込んで、撮っている行為を楽しんでいる。



 誰も、F、B、Rの意味はわかっていない。




「B……なんでBが……いらんやろ……」



 睦が微かに眉を寄せた時、隣にもう一つの赤い遊樹機が並んだ。



 向こうの扉が開くと、恋弥は立ち上がってこちらの扉も開けた。

 突然の暴風に皆が目を瞑り、それを開けた頃に誰かが隣の遊樹機からこちらの遊樹機に飛び乗った。誰かがって、一人しかいないけど。



 扉が閉まり、飛び入ってきた陽泰は握っていた上着を肩にかけた。片手には黒い鞘に収まった刀。

 上着を軽く払って、ため息をつく。



「酷い砂埃……」

「かっけぇ! いーなー俺も飛びたい! なー!」

「お前は無理ッ! 落ちて死ぬよ!」

「えぇー!」




 貝寄は帝翔にぶーぶー文句を言って、貝寄の突然の言葉にびっくりした陽泰は座り直した恋弥の隣にいそいそと座った。



「作戦決まったか」

「粗方。……正面から入って地下潰して地下でちょっと待機。少ししたら敵が下に集まるだろうから潰して、上にって感じ。ドンが二人いるなら上の警備も固そうだし羽虫は地下で潰す」

「はーい」

「めんどくせぇなぁ。なんなら爆破しながら進めば?」

「建物中間抜けてもいいなら、どうぞ」



 睦が恋弥に進めると、恋弥は緩く首を振った。




 小雨が睦の隣に移動し、資料を覗き込むとある限りの情報を頭に叩き込む。


 さすがに地下はわからないが、上階は窓の位置や窓から見える影と光である程度の間取りを把握してくれたようで。

 さすが、頭で戦うスイハの役持ち。





「地下構造視えますか?」

「たぶん、構造等は……」

「駄目だ駄目! 駄目! こいつ今三十九度の高熱中!」

「えッ」

「薬で下がってるだけなんで!」



 皆が睦を見ると、睦は恋弥を睨んで顔面を裏手打ちした。



「問題ありません。それよりも構造は視えますが、中が不透明な以上危険レベルは変わりません。油断はしないように」

「お前」

「……もしかしたら、周囲の警備は『リル』かも知れませんね。バスキ結社に、スイハ隠密ペアをそこまで唸らせるほどの量がいるのかと言えばノーですから」

「特に集めてるって情報もありませんからね。警備の指揮官的な奴は生かさず殺さずですね」

「ですねぇ」




 小雨は睦を見て、資料に集中していた睦は微かに首を傾げた。



「何ですか?」

「……さっき、独り言でBはいらないって言ってましたけど、どういう意味ですか?」

「Bは地下ですよ」

「いらないというのは?」

「……十八階もあるんですよ。少なくともバスキ結社は本来はそのビルに収まってたんです。地下は、人員が増えたから付け足した生活スペース、または……」

「新たな事業に使う施設、ですか」


 小雨にセリフを乗っ取られた睦は小さく頷く。



 小雨は睦の肩に頭を置くと、資料をじっと見つめた。

 小雨の異常な距離感を帝翔は収め、睦は少し顔を逸らした。




「……政府的に地下を押さえたいです」

「では潰しは入口からということで」

「お願いします。くれぐれも、くれぐれもッ! 重要な場所の場合は破壊を控えるように」



 小雨にビシッと指さされた貝寄は目を丸くすると、元気よく頷いた。帝翔がこくこくこくと頷いてくれるので、まぁリードは引いてくれるかなって感じ。不安でしかないが。




 恋弥は陽泰を見下ろして、こいつはなんの問題もねぇなと視線を戻した。クソ真面目な部下ってとても助かるはずなのに、可愛げがないとしか言い表せないのがちょっと残念。もうちょっと、燦々(さんさん)とした目をしてくれていたらよかったんだけど。クソ真面目め。

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