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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
一章
23/124

3.糸

 小さく咳をしながら、こっちは駄目だとまた奥の路地に戻った。




「主様、少し休みましょう……」

「あぁ……少し疲れた」

「何か食べ物をとってきます」

「いいいらん。金なんかない」

「ですが……!」

「大丈夫。もうすぐ着くから」




 名前、聞いといてよかったなぁ。



















 廃ビルから戻って、少女を囲っていた組織は中規模組織の『バスキ結社』ということが判明した。

 昔は人身売買から転売までやっていたが、今は他地区から輸入される違法薬物の大半を仕切っているサバきのプロ。


 最近は用心棒で稼ぐ組織『リル』と連携もしているらしいし、参界者を囲ったということは、新しい何かを始めようとしているということ。それとも用心棒をシノギとするリルの人材にするためだろうか。にしては、囲っていたよなぁ。






 (むつ)が考えながらビルに戻ると、店の閉まったビルの一階で少し揉める声が聞こえた。



 中に入ると、中には酷く汚れた格好の男と出かける前の景矢がいた。紫の髪に、青緑の細い切れ目の男。

 景矢(けいや)の後ろには枯梨(からり)がいて、睦に気付くと景矢の服を引っ張った。



「あ、む、睦さん……!」

「お久しぶりです修茶(しゅうさ)さん」

「睦くん……!」

「無事でよかった。お腹空いているでしょう、枯梨、何か食べるものを。フルーツでもいいよ」

「え、あ、は、はい……!?」

「睦さん、知り合いですか? おかえりなさい」

「研究所にいた人だよ。友人」

「そ……それならそうと言ってくださいッ!」

「す、すみません……つい辿り着けたのが嬉しくて……」



 申し訳なさそうにする修茶と警戒して損したとため息をつく景矢に苦笑いを零し、降りてきた枯梨に視線をやった。




「食べたらお風呂に入ってください。着替えと、布団も準備しましょう」

「え、いいん……!?」

「もちろんです。人を助けるための万事屋ですから」




 修茶は何度も頭を下げ、枯梨からありがたくフルーツを受け取った。

 怖がっていた枯梨もへりくだる修茶を悪い人とは思わないのか頭を下げ返して、それでも景矢の後ろに逃げた。




「この店睦君がやってんの? すごいなぁ」

「秘密結社ですよ」

「厨二心」

「そうッ!」



 睦と修茶は分かり合いハイタッチして、厨二心について語る。

 男のロマンはいつになっても変わらない。







 せっかく二人に出かける用意をしてもらったが修茶が来たのでそれの対応をお願いした。

 響皐月(きょうめい)は、今日はまだ起きていない。





 小雨(ささめ)は部下に修茶の神迎(じんげい)の参界者管理役を呼ぶよう伝えると、ひとまず睦とともに小間(ブース)の中に入った。




「いやぁ、まさか一日で参界者が二人も見つかるとは。驚きです」

「本当に。……あ」


 あぁ。そういう、なるほどね。




 事と事が糸で繋がり、一つの理由と成った。




「どうしましたか」

「あ、いえ特にたいしたことじゃないんですが。修茶(しゅうさ)さんとあの女の子、痲宮(まみや)さん。同じ世界の参界者のようで」

「ほぅ?」

「……それだけですよ」

「同じ日に同じ世界の参界者ですか。痲宮(まみや)という子の資料はこちらにはありませんからね。新しい参界者なら必ず資料は取りたいですし、そうですねぇ……」

「修茶さん、使いますか?」

「運命を使わない手はないでしょう」













 翌日、この世界に来て初めてのまともなご飯に感動している修茶にデザートのプリンを渡し、向かいに座った。



 ちなみに事務室の向かいにある客間と称した使われない空き部屋に泊まってもらった。ようやく使われた、開かずの間。




「ん、このプリンうま!」

「俺が作りました」

「すげぇ女子力高ッ!」

「あそこ出てからはどこに?」

「ずっとホームレス」

「政府に行ったら保護してもらえますよ」

「死んで初っ端騙されて地獄の日々やぞ。誰も信用なんかできん」

「俺は?」

「君も。俺のこと信用しとらんやろ?」

「バレましたか」



 修茶はプリンを食べると、手を合わせてしみじみとごちそうさまと頭を下げた。温かいご飯が食べれただけで幸せです。



「……政府は信用できますよ。潰したのも政府です。俺含め四人は政府に安全を確約してもらってます」

「ふーん。残りの二人は? 一人増えたんやろ」

「新しい人は元々いた組織にいますよ。一人は政府監視下で独立してます。政府からの絶対の安全は拒否しているそうですが、政府は守っています。参界者は噂が出た時点で危険ですから」

「……全員保護されとるんか」

「えぇ」



 さすがに全員とは思ってなかったらしい修茶は少し感心して、睦は少しばかりの笑みを浮かべた。



「政府はあんなような組織を全て潰しています。……この世界で一番信用できる組織ではありますよ」

「……君がそーゆーなら話ぐらい聞いてみるか」

「信用されていないのでは?」

「藁にもすがる思いやと思って」








 参界者は前世界で自殺しこの世界に迷い込んだものの総称だ。


 誰も、何も、どこも、信用しない。してはならない。信用すればするだけ死んでいく。すればするだけ、人生は辛くなる。



 そう理解してしまったものが、行き着く先の世界。

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