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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
二章
121/124

38.クソ共

 船の中で目を覚まし、飛び起きた。



 視界が弾けて目が回り、壁に頭をぶつける。



「佚世くん……!」

「おぇ……」



 水。水が必要。



「水……」

「水?」

「睦君呼んで……」

「今は無理だよ。二人も倒れかけてるの」

「じゃあ出てって……!」




 律を追い出し、一人になった部屋で魔法印を出すとボトルを上に置いた。



 内臓が焼けるように痛くて、()にある魔法印が魔力を欲する。




 ボトルに半分ほど貯まった水を飲むと、その痛みはすぐに収まった。




 少し震えていた息を整え、またボトルを魔法印に置いてから外に出た。



「お待たせ」

「た、体調どう? まだ休んでた方がいいんじゃない?」

「治ったから平気。子供たちは?」

「皆広間にいるよ」







 そこに行くと、睦と恋弥は目にタオルを乗せて休んでいた。



 睦は座って天井を仰ぎ、恋弥はソファに横になりうずくまっている。陽泰は恋弥のそばにいて、心配そうにしていた。




「佚世さん……! もう、大丈夫ですか……?」

「うん。……二人とも大丈夫?」

「睦は処理落ちです。恋弥さんも、久しぶりに酷使したからって」

「水飲めてる?」

「はい」

「なら大丈夫だね」



 佚世が恋弥の頭を撫でると、その手を恋弥に掴まれた。


 折られそうになって、慌てて引き抜く。



「ちょっとッ! 私やり返せる力ないんだからねッ!」

「あったらやってねぇよ。静かにしろ」

「……あれ、小雨は?」



 部屋を見回し、なんか足りないと思っていた佚世は小雨がいないことに気付いた。あの子静かなのに存在感あるからいないとなんか物足りない感がある。



「外で仕事してます。観光地が一個潰れたので」

「あーなるほど! 政府のお偉いさんは大変だ!」

「黙れ佚世!」

「こわ……」



 佚世は怒鳴る恋弥を避けながら、睦の横に座った。




 睦がタオルを取って、俯く。



「子供たち大丈夫そう?」

「ミヤたちが行った頃には管理人と雨豪さんが片付けてくれてたらしいです。枯梨もいつも通り程度には落ち着いているそうなので」

「英才教育の賜物だね」

「そうだといいんですが」













 船から、今回はすぐに遊樹機に乗った。


 離陸してすぐ、遊樹機の中にニーミスとグロウが現れる。




「睦くん、怪我ないかい?」

「ストレスで精神がちぎれそう」

「佚世、体の場所聞いたか?」

「イノンダイにあるんだって。レイが操ってたとか」

「それならすぐ回収できる」




 顔にタオルを乗せていた恋弥が口を開いたかと思えば、タオルを取って起き上がった。



「イノンダイがトワイライトの傘下に下った。頭が抜けて幹部二大巨頭だったのを両方潰されたからな」

「それねー。大変だったらしいね?」

「いつも通りですよ。それより佚世さん、イノンダイのどこにあるかは?」

「…………聞けなかった!」

「相手の説明が下手くそすぎて佚世くんブチギレたからね」

「律黙って」

「恋弥、イノンダイに探させた方が時短になる」

「だなー」



 恋弥がHgを開いて連絡していると、正面の佚世からの視線に気付いた。



「んだよ」

「いつでも突っかかる奴だな……」

「こいつが見てくんのが悪い」

「別に。君ら成長したねぇ」

「そりゃ六年も経ってりゃな」

「才能ない奴らの六年なんて無意味な時間だよ。私の審美眼が間違ってなくてよかった!」

「佚世さん陽泰が死にそうなのでその辺で」

「えなんで? 褒めてるのに」

「ストップ……!」



 恋弥が佚世の口を塞ぎ、睦は過呼吸になりかける陽泰の背を撫で落ち着かせた。



 過労とストレスでまともに仕事ができていない根暗ネガティブ(陽泰)にとっては、そのよかったはガッカリさせんなよの意または昔より使い物にならなくなってなくてよかったの皮肉に捉えてしまうから。



「面倒くさ! 褒めてんだから素直に受け取れッ!」

「黙れアホンダラ毒素野郎ッ!」















 久々に恋弥の鉄拳を食らった佚世は違和感ある気がする頭を押さえ、陽泰は睦から飲み物をもらった。


 半口飲んで、すぐに返す。



「緊張してたら余計に酔うから、ちゃんと落ち着いてね」

「わかってる……!」

「なんなら睡眠薬あるよ」

「いらんッ」





 睦が陽泰の介抱をしていると、睦のスマホに連絡が入った。



「あミヤだ」

「なんでそっち(スマホ)なんだよ」

「さーね。……どしたー」

『一つ報告を』



 電話をして、スピーカーにするとミヤの声が聞こえた。後ろから貝寄と、帝翔の声も少し。



『そっちにいる陽泰と同じ苗字を名乗る子供が来た。十七歳の女子』

「依頼人ってわけじゃないね」

陽泰(ようたい)葉笶(ようや)を兄と言い自らを陽泰(ようたい)儷戯(ならざ)と名乗る』

「間の悪いことに葉笶(ようや)君ダウン中なんだよ」

『まぁ来たところまではよしとしよう』

「どうせ孤児院の誰かだろうね」

『エリオムと延々睨み合ってる』


 まだ諦めてなかったんかいあの小娘。




 睦が頭を抱えると、それを向こうで察したのかミヤの薄笑いが聞こえてきた。



『ははっ。頭抱えたいのはこっちだ馬鹿。景矢と枯梨が使い物にならないのに最悪な雰囲気で響皐月は泣くし祉夏(ちなつ)のせいで(みずち)も泣いてるし大人どもは管理人娘たちのせいでクソも役に立たんし。地獄かここは』

「祉夏君蜃ちゃん泣かせたの?」

『管理人が塞いだとはいえ目の前で人が死んだところに祉夏が追い討ちかけたからな。小雨がいないせいで慰められないし』

「景矢は?」

『倒れた枯梨介抱中』

「雨豪さんは」

疓憝(ねうら)に引きずり回されてる』

「……帝翔さんは……?」

『お前の写真見て昇天してる』

「貝寄さんは……!」

俰盤(わだか)と遊んでる』

「管理人は!?」

『夫婦喧嘩中』


 クソどもめ。



 睦が床に突っ伏した。



 小雨は律を睨み、佚世も想像つくその凄惨な現場に同情する。いなくてよかった。





「睦さん、誰でもいいので蜃のそばに置いてください。祉夏とキチガイ以外で。下手したらスレッドから飛び出してしまう」

「ミヤ、お願いできる? 猫又だけでもいいから」

『まぁそれぐらいなら。なんかやることは?』

「そばにいるだけでいいです。でも父親のこと言い出したら連絡ください」

『わかった』

「お願いね」



 睦の額に、鮮明な青筋が浮かんだ。




















 半日かけて帰った頃には夜の十一時を回っており、それでも子供たちの元気な声が聞こえた。



 ミヤが、ほんとに半日で異常にやつれたミヤが出てくる。



「蜃は二階の客室で寝てる。響皐月は自室で水尋(みつね)といる。リビングは知らん。貝寄以外の大人共は消えた。貝寄は蜃見てる」

「蜃……!」

「脳之輔も消えた」

「ミヤもお疲れさま」

「もーむりだ……!」

「助かったよ。戻ってきてくれてもよかったのに」

「移動する目的地はできない」

「船降りたところで連絡取るべきだったね。お疲れ、日本語変だよ」

「吐きそう」

「わーわー」



 小雨は駆け出して行き、睦はミヤを抱き上げて階段を上がって行った。



 陽泰を介抱していた律は陽泰を修茶に任せ、二階に上がっていく。



「修茶、貰う。睦のベッド借りて寝かせるわ」

「じゃ、佚世さんは俺が案内しますんで!」

「お願いしまーす」


 と言っても睦の部屋だけ知ってるけど。









 客間に行くと、貝寄がベッドに座り、泣きながら寝ている蜃を抱っこしていた。



「みずちッ……!」

「おーおかえり。怪我とかは特になさそうだった」

「よかった……! 助かりました」

「パフェで許す」

「材料一年分あげます」

「フルーツは一週間ごとにちょうだいな!」



 ほんとに、怪我がないだけでもよかった。


 夢でさえ死を怖がるから絶対死には合わせないようにしていたのに、まさか自分のいないところで見た挙句に一人ぼっちだったとは。




 抱き締めるや足の力が抜けて、しゃがみこむと貝寄が支えてくれた。



「……父親のことなにか言ってませんでしたか」

「父親は特に。ずっと小雨のこと待ってた」

「……わかりました。ありがとうございます」

「ミヤにも礼言っとけよ」

「はい」





 小雨が抱っこするとすぐに泣き止んだ蜃を抱っこしたまま、騒がしいリビングに行った。



 なんとカオスな。



 律はソファの一角で子供を床に座らせ足を組み

 佚世はその一角でわりとマジで嫌そうな睦の頭を撫で回し

 それを羨ましそうに響皐月がそばにいて

 床では貝寄が疓憝と俰盤を見て

 机ではエリオムと、例の陽泰の妹が殺意の篭った視線で火花を散らし。




 かつてこんなカオスな空間見たことあったかなーと突っ立っていると、肩を叩かれた。



 ハッと振り返ると、景矢が立っていた。



「おかえりなさい。……睦さんいますか?」

「あ、あぁ……そこに……」

「睦さん」



 景矢が声をかけると、睦は本気で佚世を剥がした。


 響皐月を連れ、小雨と入れ替わりに景矢の元へ駆け寄る。



「枯梨は?」

「今は眠っています。ただあんまり体調がよくなくて……」

「響皐月、景矢と皆にお茶淹れれる?」

「できるよ!」

「俺の分もお願いね。……お願い」

「はい」



 睦が慌ただしく出ていき、代わりに景矢と響皐月がキッチンに入った。




 それを見送った佚世は組んでいた足を揺らし、呆れ半分怒り半分、憎悪ちょっと。



「佚世さん、どうしたんですか」

「どうしたもこうしたもね。……蜃ちゃん大丈夫そう?」

「一応泣きやみましたし。明日の朝また話します」

「父親だねぇ」

「叔父ですが」

「あはは」

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