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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
二章
118/124

35.素性

 陽泰が船の仮眠室に仮眠に行っている間、起きている皆は広間に集まり女神姉妹から情報を聞く。





「駄女神がどこまで頑張ったのか聞かせてもらおうか」

「頑張ったんだけど!」

「頑張らずにできる程度には期待してたからさ。ごめんね」

「座れグロウ。煽られるだけだ」

「痛いよニース」



 ニーミスからすごい力で掴まれたグロウはニーミスの頭を撫でながら座り直した。



「とりあえず相手の正体と目的は全部わかった。一人目は世界・鏡界から、五代目支配人。自身を(ネイ)と名乗る十六の少年」

「睦君知ってる?」

「……人間なんですよね?」

「人間だよ。鏡界魔の力は遠慮なく使ってるけど」

「三代目と四代目はいないんですか」

「彼らは来てない。何故?」

「来てないならいいです」





 一代目は、平安よりも前に生まれ二代目を作るために殺された。

 二代目は平安頃から睦の母が現役だった頃まで、ずっと鏡界魔(キョウカイマ)を操っていた。


 三代目は、目の前にいるニーミスが二代目から力を奪ったあとに預けた人。人。

 四代目は、皆が死んで一人になることを恐れた三代目が一部を渡した人。実際は四代目というより三代目の補佐みたいな。


 五代目は、その四代目の力を騙して奪った人。半界魔。

 というか、三、四、五代目は元は全員界魔だった。二代目支配人から力を奪ったあと、ニーミスが人間に戻したっていう。





 三代目が生まれた理由はニーミスが『真の支配人になりうる』と判断したから。三代目が敵に回ったなら勝ち目はないけど、三代目がいないなら問題ない。



(ネイ)さんだけなら俺でもできます」

「……お前異能はいくつある?」

「持ってるのは識別だけです。血筋的なもので、未来夢(ミライム)と筋力増強移動、衝撃波も少し」

鏡瞳(キョウドウ)は?」

「対生物で」

「それがあるなら五代目程度なら即潰せる」



 皆知らない世界の知らない単語に首を傾げたが、誰もそれを説明する気配はない。




「五代目の目的は睦くんを連れ戻すこと」

「俺ですか。まぁそれしかないでしょうね。……母が死んで丹璐(にろ)も死んだんならそのせいかもしれません。静璐(せいろ)さんと緋愴(ひそう)さんはずっと一緒ですし恐念(きょうねん)さんは(ネイ)さん嫌がってましたし」

「全部わかってるなら対処自分でできる?」

「できますよ。……殺しても問題ないんでしょう?」

「殺すならその前に私が力を奪う。死ぬと魂とともに力が死の管轄に入って手が出せなくなるからな」

鏡瞳(キョウドウ)でさっさと潰しますので」

「じゃニースと睦くんは一緒に行動だ。いいなぁ私も行く」

「お前は邪魔だから来んな」



 なんか、ちょっと不機嫌そうな睦にバッサリ切り捨てられたグロウはしょんぼり口を尖らせた。


 ニーミスに腕をつねられ、おとなしく諦める。




「……一人目は終わり。二人目はえーと、ヴィールヒ」

「は」

「佚世君のストーカーだよね?」

「ほんとに言ってる……!?」

「うん。もう一人もくっ付いてるけど、ヴィールヒ」



 佚世は立ち上がると、苛立った様子で歩き始めた。その表情が苛立ちから無表情に、気配が苛立ちと疑問から、憎悪と憤怒に変わる。




「もう一人って誰?」

「る、ルズって人……」



 誰だよ。名前的にヴァルパじゃない。ジュワルパの人間。



「男?」

「うん」


 そばにいるなら頼むから首輪でも爆弾でも薬漬けにでもして繋ぎ止めといてくれよ頼むから。




「はぁ……」




 いきなり佚世が萎え、しゃがみこむと膝に額を置いた。


 皆がそれを心配して小雨が駆け寄ろうとする律の首根っこを掴むが、そんな大人たちを気にせず恋弥が口を開いた。



「じゃそいつらは俺がやる。佚世は景矢の世界の奴やらなきゃだろ」

「頼もしくなったねぇ」

「陽泰は役なしだな!」

「それはそれで喜ぶだろうよ。最近疲れてるみたいだし」

「なんならあいつ船で寝ててもいいんじゃね?」

「それは嫌がると思う」




 ま、ヴィールヒの目的なんか一つしかないので、二人目の話は終わり。




「次、三人目。ルゼス」

「誰?」



 皆が恋弥を見たが、知らない恋弥は首を横に振った。


「俺は知らない」

「私たちの世界にある名前じゃない」

「これ、ネストル関係」



 突然小雨と睦が額を押さえ、睦はこめかみを押さえた。



「もしやストーカーだったりします」

「これは……すとー、かー……なの……?」

「狂気的な愛を持ってる方だったり」

「それはそう。ネストルの切った髪持ってた! 血が入った小瓶も!」


 きしょくわりぃ。




 ネストルは、枯梨の前の世界の名前。枯梨が自殺した原因。


 枯梨(ネストル)が二歳の頃から大人たちの元をたらい回しにされた原因、枯梨が孤児になった原因の男。



 こいつのせいで、枯梨は七歳という異常な歳で頭を撃ち抜いた。




「佚世さん、ヴィールヒとおあいこです」

「ストーカー多くない?」

「溺愛ってこんな溢れてるものでしたっけ……?」



 あれ、おかしい。現在この部屋にいる、睦含む十一人。十一人中、五人は誰かしらを溺愛していないだろうか。あれ、溺愛ってこんな溢れてるもんだっけ。なんでこんな集まってんの。





 気持ち悪っ。



「……陽泰起こしてきます」

「はーい…………」



 皆が睦を見送ると、佚世は助けを求めるように小雨を見た。



「睦君今声に出たの自覚してない?」

「確実に気持ち悪って言いましたね」

「気持ち悪って何が? ストーカー? そのルゼスって奴? 溺愛? 溺愛の集合?」

「さぁ……?」

「聞いてこよ」

「えちょッ!」



 恋弥は佚世が止める間もなく睦を呼びながら飛び出していき、大人は顔を引きつらせた。


 あいつのいいところは人の気も知らず突っ込むところかもしれない。




「……まぁいいや。そいつの目的は枯梨ちゃんでしょ? いないからいいね」

「じゃあ次、こいつが最後だ。無紋使い、レイ」

「景矢君狙ってる奴ね。それは私がやる」

「律とミヤも一緒にいた方がいい」

「心の神と猫又?」

「内側から崩壊させる必要がある」

「えーちょっと! 敵そんだけなら僕ら何してればいいのさ!」

「……寝とけば?」

「はぁ!?」

「役振りは私がやる。帝翔君と貝寄はネストル、小雨は睦君のそばにいて、ニーミス嬢も。恋弥と修茶君でヴィールヒたち、私と律とミヤで無紋使い君をやろう」



 陽泰はほんとに休めないと、あれが疲れを溜めるのは相当な時だ。下手に動かして怪我をされても困る。



「小雨、陽泰も見といて」

「終わり次第恋弥さんと修茶さんと合流しましょう。新世代組は一緒に置いといた方が戦力になる」

「それは任せるよ。……貝寄、動けるでしょ」

「おう! まかセロリ!」

「うん。帝翔君貝寄の手綱頼んだよ」

「僕も睦くんか佚世のそばがいい! こいつとはやだよぉ!」

「そんなこと言ってるから任せてもらえないんだよ」

「いやただの役足らず。また女神にでも力の主な使い方教えてもらっといて」



 帝翔が椅子から滑り落ち床に突っ伏し、律はそれを足置きにした。



 



 しばらくして、睦と恋弥、二人に挟まれている不機嫌そうな陽泰と、陽泰が不機嫌なことを気遣って恋弥をなだめようとしている睦が戻ってきた。



 睦は恋弥の頬を挟んで押し返し、恋弥はギーギー文句を言っている。いつもの光景。




「陽泰、よく眠れたかい」

「まぁ」


 不機嫌。


「ちょっと恋弥静かにして……! もうわかったから……!」

「じゃあ手離せ元はと言えばお前がッ!」

「お前が突っ込んできたのが悪いんだろうが! 離れろ!」

「あぁッ!?」

「うるさ……!」

「黙れ陽泰先輩になんて口を!」

「痛い痛いッ!」

「陽泰にまで手出すなアホ!」




 恋弥が陽泰の服を掴んで陽泰がそれを嫌がり睦がキレ、そんな本気に発展しつつある喧嘩をしているとずっとしゃがんでいた佚世が立ち上がった。



 懐から拳銃を取り出すと、三人の前に立った。



 恋弥の頭をそれで殴り、陽泰を蹴り飛ばす。




「遊ぶな」

「すみません」

「なんで俺だけッ! せめてこいつにもやれッ!」

「お前が陽泰にまで手出すからだろうが。さっさと座って」

「納得いかん」

「誰も求めてないから大丈夫。座れ」



 三人が席に着くと、佚世は決まった作戦のうち三人に関係ある部分だけ話した。






「……佚世さんがやるなら安心ではありますが」

「睦君大丈夫? 体調悪いの?」

「いえ。……俺前にそのレイとかいう人間と接触したことがあります」

「おや?」

「佚世さんも景矢も見たことあったので軽く視たんですが。どちらかと言えば佚世さんと同じ部類の人間でした」

「佚世さんと景矢さんは同じ世界の人間ですよね? 部類があるんですか?」

「感覚的な話ですけどね」



 景矢は、自分と佚世には六百年以上の差があると言っていた。

 進化論的な話か人種的な話か魔法的な話かは知らないしそもそもそんなものを視る目ではないので何も言えないが、何かが違う人間だった。


 まぁ世界の人種的には同じだから視えたんだろうけど。

 佚世を見たことがあったから景矢が視えたのか、景矢を研究所で見ていたから視えたのか、相互関係がイマイチよくわかっていない。



 修茶を見たことあるからミヤが視えて、ただ妖心は見たことあるのに猫又は視えなかったというのだけは明確だが。




「まぁ同じ世界の人間である限り私が全部対処できるし問題ないよ。睦君たちの体も私が場所聞いとこう」

「佚世さん、景矢さんと同じ年代の方なら佚世さんの知る魔法とは違うのでは……」

「そうかもね。でも私、何されても何が起こっても対処できる頭があるから」

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