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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
二章
117/124

34.リスト

 夕方、計十名でライムが操縦する遊樹機に乗り山岳部ガンランに向かう。

 目的地が島なので遊樹機で島まで飛んだ方が早いのだが、島がほぼ山で遊樹機が水平に着陸ができないので。


 船は小雨の部下運転で。人目に付く地上や海上の場合は、政府の名を使った方が何かと言い訳をしやすい。




 乗っているのが金の世代五人、スレッド三人にトワイライト二人なのでなんとも言えないが。





 今回の待機組は、廃教会だと心許(こころもと)ないためスレッドに移動し小雨の直属の部下にある神迎数人が守っている。

 小雨が選ぶ人たちなので、祉夏や蜃も大丈夫だろう。管理人もいるし防御面では問題ないと思う。






「睦君ガンラン行ったことあるの?」

「昔律さんに誘拐された時に連れて行かれました」

「だからあれは違うんだって!」

「あそうでしたね、すみません恐怖心が根強くて」

「お前何してんの?」

「ちげぇつってんだろ!」

「自分では違くても被害者がこう言ってるならそうでしかないでしょ」

「参界者にまで手出すなら私も動きますよ」

「ほんとに違うの……!」



 にこにこと笑って律に圧をかける三人と、何の話かとミヤに聞く貝寄と、睦の意地悪に呆れる恋弥と。




 律責めから離脱した佚世はミヤと貝寄が盛り上がっているのに気付いた。



「あの二人最近よく喋ってるね」

「なんか気が合うみたいです。貝寄さんって素直な性格なのでミヤも話しやすいんだと思います」

「貝寄が真面目な話に付き合うのも珍しいよ。基本勝手に消えるから」

「理解してるかは別として、ミヤが楽しそうに話すので聞いてて楽しいんじゃないですか? 佚世さんたちが難しい話するときは本気のど真剣って感じですから」

「貝寄通訳には最適だね」



 考の神に通訳っていうのも変な話だけど。





「佚世さんは島に行ったことあるんですか? なんか知ってる感じでしたが……」

「うーん春雨がいるから深くは言えないんだなぁ」

「小雨さんちょっと一旦降りてください」

「あなたがた二人持って飛び降りましょう」

「まぁまぁ春雨君」



 小雨は佚世の頬をつまむと、横にちぎれるほど強く引っ張った。


 佚世は発狂し、睦が慌てて仲介する。



 帝翔が小雨を突き飛ばし、律と睦で痛い痛いという佚世を心配する。



 実際はあんまり痛くないというかまるで痛くない佚世がふざけて睦に泣きついていると、コツコツッとヒールの音が聞こえた。



「にッ!」

「何やってる」

「揺れてた……」


 グロウが転倒し、ニーミスは呆れた目でそれを見下ろした。



「おや駄女神揃って」

「黙れヴィオラに出来損ないのレッテル貼られたくせに」

「何の用だい」

「……何してるんだ?」

「ほっぺが痛いから慰めてもらってる」

「痛みがあったのか、驚きだな」

「ネタに決まってんでしょ馬鹿じゃないの」



 ブチギレるニーミスをグロウが押さえ、佚世は睦にもたれて寝転がっていた体を起こした。



「で、なんの用?」



 ソファに腕をかけて足を組むと、ニーミスはどこかから本を取り出した。ほんとにどっから取り出したそのデカさの本。



「リストに支配人が載った」

「お〜や〜? 三代目?」

「五代目」

「五? 私知らないかも」

「……というか、源泉は緋愴(ヒソウ)だ。緋愴が……」

「三代目が四代目を作って四代目の力を五代目が奪ったのね。人間? 界魔?」

「人間」

「じゃあいいや。しばらく黙ってて」



 佚世は少し顔色の悪い睦にフードを被せた。そのまま膝に寝転ばせる。



「佚世さん、リストってなんですか?」

「うん? 女神様の死の力が持つ魂リスト。いつか死が訪れる魂は全部載ってるの」

「全部載ってるなら支配人も載ってるんじゃ……?」

「この場合の載ってるは直近に死があるかどうか。死が近い魂から順に載るけど、全世界の全員は把握できないからね」

「なるほど?」

「ちなみに参界者は来る予定だった子と死ぬ予定だったのに死の女神がリストから弾いた二種類の子がいる。睦君は前者」



 死の女神によれば「自殺志願者の背を押すのが心優しき女神の務め」らしいが、あれの思考と感性はなかなかにとち狂っているので信用できないというかたぶん絶対違う。

 真の心優しきなら前を向けるように幸福を送ると思うんだけど。あいつは元自殺志願者として自殺志願者に肩入れしてるだけだと思う。



「睦君はご両親が死んでなくても十五でこっちに来る予定だったんだよ」

「恋弥はどっちですか?」

「恋弥は死ぬ予定だったのを弾かれたの。こっちに来たら私がトワイライトに抜けない頃に行くのと睦君と仲良くなるのを加味してね」

「そんな考えて弾かれてるんですね」

「んー直感じゃない? 恋弥はたまたまそうだったから弾いたってだけで、なんもない子ならやっぱやーめたとかもありそう。知んないけど!」
















 夕方六時に出て遊樹機で飛んだとしても、ガンランに着くのは翌朝の五時半とか。

 そこからまた船移動で二時間かかるので、着くのは翌日の早朝だ。



 ただ、漁業がないこの世界で船で紛れる場合、早朝よりも朝九時頃の方が観光船や移動船が多いので移動は少し遅くになる。

 それに、目的は観光地だ。小雨が人が立ち入らないよう手配したと言えど、こっちに戻ってくる人たちを待たなければならない。





 そのため待機時間はすぐ近くに本部があるピステルの、その第二拠点で待機することになるのだが。




 遊樹機から降りると、社長とともに新世代三人とスレッド新入りと、金の世代を見たいという人たちが屋上の入り口に集まっていた。




「うーわすごい人の群れ」

「人気者だなー律!」

「ねーほんとに。何人が俺のために集まった子なのかなー」


 律と帝翔は、そっと新世代三人に目を向けた。



 金の世代よりかっこいいのは、まぁ言わずもがなだよね。正直金の世代で顔面偏差値が異常なのは佚世だけで、一挙手一投足がかっこいいのも佚世だけだったりする。その佚世もボケに突っ込むタイプだし。



「目溶ける……」

「そーゆーのを言うから新世代に負けるんだな」

「うるせぇよ黙れ」






 五人が何かを話してる間に、睦は陽泰を見下ろした。



「船酔いあるって言ってなかったっけ?」

「慣れたらなくなった」

「海沿い移動するのは船が多くなったからなー」

「ならいいけど。体調悪くなったら言うんだよ」




 この人数集まって、予定通りに動けるといいけど。






 応接間に移動し、陽泰と恋弥は机に突っ伏し寝る。ミヤは猫又に抱っこされて。五人がうるさすぎて眠れなかった子たち。




「修茶さん大丈夫なんですか?」

「俺静かな環境ってのが滅多にないからさ! 戦場でも寝れるで!」

「そりゃ安心です。自室なかったんですか?」

「幽霊に自室を求めんなや」


 すみませんね。




 霊感が強すぎるがゆえの自殺だった修茶は死んだ魚のような目ではははと笑い、睦は少し顔を引きつらせた。その目で笑うと余計怖い。




「睦君も寝てていいよ。恋弥に絡まれて寝れてないでしょ」

「俺は大丈夫です。全然眠気もありませんし」

「寝なさい?」

「ハイ」



 佚世の圧に即座に従った睦はソファに寝転がって眠った。



 帝翔と律が死に物狂いで貝寄を黙らせているので、佚世は小雨を背後に憑けながらHgを見る。



「恋弥さんの写真が多いですね」

「見るのはいいけど勝手に操作しないでおくれ」

「たまに陽泰さんの寝顔もありますね。あの頃の佚世さんが撮ってると思ったら面白いものがあります」

「ちょっ……」



 頭を押し潰して上からHgに手を伸ばす小雨を押し返そうと頑張るが無力と馬鹿力では敵わず、というかこいつそれをわかってやってるだろうから。


 争わないためにも一線はこえないが写真はガンガン見られる。




「あ、ヴィールヒ」

「あーこんなんもあったねぇ」


 拡大すると、鏡に反射するカメラの奥の佚世が見えた。ものすごい真顔。



「表情なくてもイケメンですね」

「ここどこだろ、トライトとか本拠地じゃないけど」

「任務先とかですか?」

「もしかしたら潜入とかパーティーの客室とかかも」

「一緒だったんですか?」

「采配は全部ボスだったからね」



 なんて話していると、グロウもやってきた。


 小雨の隣にくっ付いて、写真を覗く。



「誰?」

「佚世さんの元カノです」

「ストーカーって言って。元カノとかないし」

「元カノって言われるぐらい仲良かったんだ」

「ストーカーを振り払わなかった結果ですよ。勝手に同居されてね」

「ねー。まともに行ったことないけど」

「ふーん?」



 グロウと小雨が写真を眺め、佚世がうんざりしていると、陽泰が起きた。


 体を起こして、肘を突いて額を押える。



 佚世は小雨とグロウの口を塞ぐと、二人を退かして体勢を整えた。


 この子の寝起きの不機嫌さはたぶんトワイライト一だと思う。父親は寝起きから恋弥タイプだったのに。




「……はぁ……」

「おはよう……?」

「……睦は?」

「後ろにいるよぅ……?」




 陽泰は立ち上がるとふらふらと移動し、睦の体を揺すった。睦は起きて、陽泰に場所を代わる。



 外套(マント)をかけると、陽泰はまた眠り始めた。




「寝起き陽泰が従ってる……!」

「あ、おはようございます」

「おはよ〜」

「ちゃんと起こしたら静かなんですよ。警戒心が強くて真面目なので下手な起こし方したらキレますけど。……たぶんそんな感じです!」

「睦君なったことあるの?」

「ないですね。そもそも寝起き悪いって知ったの最近です」

「睦君には懐いてるんだねぇ」

「唯一頼れる大人って言われてます」

「正しい」







 小一時間ほどして、時間になったので睦は陽泰の肩を叩いた。



「陽泰、時間だけど」

「……眠い」

「船で寝れるなら寝といてもいいんじゃない? 外套(マント)は貸せるし」

「……はぁ……」


 陽泰はのろのろ起きると、あくびをした。



 陽泰の珍しい素直な寝起きに佚世と恋弥で感動していると、気付かれて睨まれた。



 睦がそっとフードを被せ、頭を撫でてなだめる。



「準備して。移動しよう」

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