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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
二章
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28.講習会

 目を覚ますと、体が少し重かった。



 手を動かすと、誰かの頭に手が当たる。


 起きて見ると、疓憝がそばに丸まって眠っていた。まだ昼間なのに。





 頭を撫で、抱き上げると自分の腕の中に移動させる。




 可愛いなぁと愛でていると、部屋に軽快なノックが鳴り返事をする前に佚世が入ってきた。



「おはようございます管理人」

「おはよう」

「起きたら早速で悪いんですけど魂の対変えてください」

「……神の力とか使ったことないからわからないんだけども」

「えー……」

「どうやるの? ファンタジーで言う魔力的な?」

「現実で言う人格的な」

「……して、どうやるの? 睦君の魂見付けるってこと?」

「ささめー!? 管理人に力の操作方法教えといて! この人感覚で伝わらないタイプー!」

「すっげぇ罵倒された気するよ?」





 小雨を呼んでいると、佚世の大声で疓憝が起きた。


 それとほぼ同時に、ぼろぼろと泣き止まないままの俰盤が顔を出した。


 泣き声はないものの、涙は止まる気配がない。



「ねうらぁ……?」

「どうしたの俰盤、おいで」

「おとーさん、ごめんなさい」

「えぇ……?」

「さっき管理人の仕事場に突っ込んだのバレて母親に怒られたみたいです。疓憝ちゃんは泣き疲れて」

「昼寝なんて珍しいと思った。おいで俰盤、怒ってないよ」

「管理人寝て忘れるタイプ?」

「それ佚世君でしょ」



 管理人はやってきた愛娘を二人揃って抱き締め、疓憝は泣き止まない俰盤の涙を拭った。




 なんで娘たちは父の腕の中で楽園を繰り広げるのだろう。動けないし話せないし撮れないじゃないか。




「帝翔君の溺愛癖はここからですね」

「いやあれは根っからだよ。孤児院で散々甘やかされたでしょ」

「んー……帝翔君ねぇ、泣いてた記憶しかないですね。まぁ愛されてはいたんじゃないですか」

「曖昧だねぇ」

「実際どうでもいいでしょ。今あんだけ暴走癖があるんですから」

「それもそうか?」





 二人のよくわからない会話の数分後に、だいぶん疲れた様子の小雨がやってきた。



「お待たせしました……」

「遅い。管理人に力の管理教えといて」

「はい。……あ今律さんには近付かない方がいいです」

「えなんで?」

「今奥さんから連絡来たようで発狂して双子が怖がるのを雨々驟と私で止めていたので」

「あー……あの子ね……」




 虐げるの大好き飼うの大好き()かせるの大好き飼い殺すの大好きな律が初めて反発されて、初めて律自らに首輪を外させた子。あんな子いるくせによく管理人の嫁に言い寄れたな。もしや肺に開いた穴のうち一つは嫁だったり。




 こういう妄想が大好きな佚世が少しわくわくしながら客間に戻ると、律は外套(マント)の中に丸まって倒れていた。



「じゃまー」

「佚世、管理人は?」

「今小雨が教えてるから、明日までにできたらいいんだけど」




 雨豪は少し不安そうになり、同じく不安の佚世はなんとも言えないまま椅子に座った。


 ふと、陽泰どこいったかなと周囲を見回す。




「陽泰は?」

「隣の部屋で枯梨とともに管理人の御内儀に捕まっている」

「え〜」

「主に管理人の愚痴」

「えー……」



 時間を確認して、今から帰っても帰った頃には睦たちが起きているというのを確認する。


 さーどうしたものか。あの傷跡が再度現れたら厄介だぞ。


































 帰って、ため息をつきながら外套(マント)をソファにかけた。



 台所からぶどうを食べている脳之輔が出てくる。



「おかえり。……どう?」

「駄目です。まるで役に立たない。睦君と恋弥は?」

「上にいるよ」




 もう十一時だが、睦たちは今日はまだ起きていない。魂の女神がようやく役に立って、先代時の女神と協力して魂の時間をズラしてくれた。


 明日一日は起こさず、明後日また時間を調整するらしい。





 屋根裏に行くと、点滴に繋がって眠っている睦のそばにグロウが座っていた。


 ずっと睦を見ていたのを、驚きながら扉の方に振り返る。



「お、おかえり……」

「二人起こして。対の神の操る能力がクソも役に立たなかった」

「ちょっと待って……」



 グロウが二人の額を撫でると、ものの数分で二人は目を覚ました。



 真っ暗なことにびっくりして、睦は飛び起きる。恋弥は寝転がったまま眠そうに伸びをした。



「何時……!?」

「こっちで時間ズラしたから大丈夫だよ。十一時」

「か、管理人は……?」

「みッじんも役に立たなかった。感覚鋭い奴にすればよかったって後悔してる。ごめんね」

「あ、いえ」

「お前の後悔はどうでもいいけど。陽泰は? あいつ教えんの上手いのに」

「奥様に捕まってたんだってさ」



 にっこにこでイライラしている佚世を睦が心配し、オロオロするのを佚世は抱き締めてごめんねぇと謝る。睦は佚世が凹んでいるのに焦っているようだ。



 恋弥は気にせず下に降りて行った。




「俺は全然大丈夫ですから……!」

「君の問題なんだよ。帰ってきて初っ端失敗続きでごめんね。メンタルが安定しないの」

「少し休んだ方がいいんじゃ……! 来てからずっと動きっぱなしで調剤とか魔法とかで休めてないんでしょう……?」

「君らが癒しだよ」

「猫は?」

「いらないあの殺人猫」

「イツ、二人が落ち着いたら一日休憩の日を作りなさい。危ないよ」

「はい。……よしよし」




 睦と交代で恋弥と恋弥に引きずられた陽泰がやってきて、陽泰は眠そうにあくびをする。



「なんなんですか……」

「管理人に力の扱い方のコツを伝授しようの会」

「……さっき行ってきたのにッ」

「なー、効率最悪」




 少しして、睦が戻ってきた。



 三人が横に並び、陽泰が中央で管理人に電話をかけた。




『あい……』

「声低ッ。今廃教会に協力されてる中で一番教えるのが上手いであろう陽泰君に教えてもらいましょう」

「ハードル上げすぎでは?」

「じゃ教えてあげて」

「えーと……恋弥さん紙取ってきてください」

「自分で行けよ」

「お前がいっつもこき使ってるからだろうが行ってこい」

「佚世紙!」

「下にあるよー?」

「クッソ!」



 恋弥が駆け下りていき、その間に陽泰は管理人に感覚を聞いた。




「俺は血を操ってそれが攻撃になったり人殺せたりするのでわりと多用してるんですけど、やり方的には自分のものを操るイメージです。ただ俺の場合は使い方がだいぶん特殊な気がするので、対象を操る場合で話を進めます」

「持ってきた!」

「睦こっち来て」

「なんで?」

「後ろにいるから」


 視界に佚世が映るのが怖いんだね。




 睦と恋弥の場所が入れ替わっていると、佚世が椅子を渡してくれた。睦の手持ちだったHgを椅子に置き、陽泰は紙に簡易的な絵と図で説明する。




 ものすごくわかりやすい説明を要約すると、的を定めて自分を操る感覚。ただし操作対象が自分ではなく的なので、相手の体の感覚に通ずるよ、と。



『相手の感覚に通ずるて』

「神なんですからおかしくはない……よな?」

「知らん。そうなんですか、佚世さん」

「私は人の周りの気をふわふわ〜とやるタイプだからさ。通ずるとかはないかな。でも理論的におかしくはないよ」

「ふわふわ〜……ってなに……!?」

「知らん知らん」



 陽泰は小声で恋弥に助けを求め、意味不明な恋弥は陽泰を押し返す。

 二人で睦を見ると、睦はこれまたわかりやすく通訳してくれた。



「だからあれでしょ、オーラがあって自分にしか見えないから操れるっていう。ほら、モヤを吸い込むとか吐き出すとか糸に釣られて流れるとかそんなんじゃない?」

「なるほど?」

「こいつはあれだな、天才肌で超人のくせに語彙力と読解力理解力、推察力がずば抜けてるから感覚を言葉に表せるんだな」

「それほどでも」

「クソ腹立つ耳ちぎるぞ」

「こえぇよ」




 陽泰は二人の喧嘩が始まりそうなのを察して顔面を押し返し、また紙を管理人に見せた。


 HgのカメラにはHgの画面が上手く映らないので。




「次は俺が他の人から聞いたやり方を俺なりに解釈して説明してみます。俺のやり方とは全く違うのでこっちの方が詳しくはないんですが感覚的にはわかりやすいかもしれません」







 弟子たちのものすごく優秀な能力操作講座に聞き入り、佚世も自分の力を見直すいい機会になった。



 的と糸、鏡と針、モヤ、水、粘土。なるほどね。




 うちの子らちょっと優秀すぎるな。

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