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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
二章
107/124

24.実力

 猫又が現れて、睦の方に寄った。



 睦は猫又を撫でて、興奮状態を落ち着かせる。




「猫又、ミヤ起こせる?」



 睦が聞くと、猫又はにゃぁと鳴いた。鳴かれてもわからんけど。



「佚世さんのなるままにしといたら起きるからさ。ちょっと待っといてほしいんだよ」



 睦の膝に座った猫又はぶらんと尾を振り、特に鳴きもせずにミヤの中に帰っていった。




 小間(ブース)から出ていた佚世はひょこっと顔を出す。



「どう?」

「うーん……」

「ま所詮動物だからねぇ」



 と言っていたら、ミヤが起きた。



 寝返りを打って起きて、首を回す。



「……石にでもなった気分だ」

「おはよう」

「おは。何時?」

「翌日のPM八時」

「……石……!」

「死ぬ寸前だったらしい」

「げー。猫又に耳にたこができるほど戻れ戻れ言われたがそれが原因か。そりゃ魂が飛んでってたら戻れとか言われるわ」

「よくそれで戻ってこれたね」

「根性!」

「脳筋ねはいはい」



 ミヤは周囲を見回し、知らない建物だということに気付いた。



「どこここ」

「廃教会」

「例の」

「あの人がトップでこっちが保護者兼先生で俺が雑用」

「君まだそれ言ってるの」

「街ではよく雪と雑用が混ざって聞こえます」

「自己紹介雑用にしてるからだよ」

「わかりやすいでしょう?」



 小間(ブース)の外にいた佚世は中に入ると面白がるように笑う睦の頭に手を置き、呆れた。


 誰かが政府に伝えると政府も参界者保護に動かざるを得ないので本名を知ったあとも雪と呼ぶには呼んでいたが、雪はずっと雑用ですと自己紹介していたので雪は雑用というのが根付いている。

 というかもう、常識みたいな感じで常連が新米に紹介するみたいなことになっていた。




「お前の思い出話とかどうでもいいが。状態、状況、経過と目的を教えろ」

「めっちゃ簡潔な子だね」

「わりと助かってます」





 睦がものすごく簡素かつ重要なとこだけを伝えると、ミヤは面倒臭そうに顔をしかめた。



「それ魂を戻して猫又に回復させたら駄目なのか」

「体死んでるから回復もクソもないよ。完全脳死で遺体が腐ってないだけだから」

「面倒くさ……」

「ミヤ自分のことでしょ?」

「あーはいはいそうですね」

「何その言い方」

「同意しただけですけど?」

「まぁまぁ景矢、ミヤも煽り返さなくていいから」

「別に煽ってないが」

「じゃ反応しなくていいから黙っといて。景矢もミヤの言うことに口出さないで」

「だって」

「だって何もない。黙ってて」



 睦が二人を諌めると、景矢は不貞腐れたように黙り、ミヤはツンと顔を逸らした。



 睦の呆れ顔に、少し疲れも浮かんだ。


 やっぱり、相当ストレス溜まってる。



「ま、治す目処は立ってるからさ」

「そうなんですか?」

「うん。睦君、対の神知ってる?」

「知らないです」

「ほんとに?」

「特に噂とかでも聞いたことない気がしますし……」

「誰か聞いたことある人!……って言ってもいないよねぇ」

「小雨さんか律さんが知ってそうじゃないですか?」

「だねぇ。呼んでくる」

「俺行きますよ」

「今睦君行ったら面倒なことになるからいいよ。二人お願い」

「はい」



 睦はキッチンで水をがぶ飲みしている恋弥と恋弥の監視役の陽泰を呼び、小間(ブース)の仕切りを少し動かした。



 その間にミヤは、自分の腕に刺さっていた点滴を抜く。めまいが酷い。




 小間(ブース)とベンチスペースの仕切りがなくなると、かなり広くなった。こんな広いの大掃除した以来だ。



「四人どこいった」

「上で伸びてる三人を佚世さんが呼びに」

「伸びてんの?」

「適当!」

「陽泰水持ってきて」

「後輩を雑用に使うな」



 睦が恋弥を小突き、恋弥はしぶしぶ自分で取りに行った。





 睦が階段の下から佚世に声をかけると、佚世が三人を引きずって降りてきた。貝寄が元気に手を振る。



 律と帝翔はともかく、小雨まで珍しい。


 蜃と祉夏は二人を心配している。




「おまたせ」

「御三方……だい、じょうぶ……ですか……?」

「大丈夫でしょ。自業自得だもんね」



 佚世が三人を立たせると、三人はそっと睦から視線を逸らした。



 佚世が、帝翔と律を蹴り倒し小雨の頭を殴る。



「佚世さん……!」

「さーやろうか」









 女神たちもどこからともなく現れたので、揃って会議を始める。



 対の神は特殊で、二人で一つの神の力を持つ。というか、神の力を持つのは一人だが、その人間と対になる人間がいないと力は力とならない。


 だから毎回発見が遅れる。




 ただし今回の代は、対の代が違うのか黙っているのかなんなのか、未だ名前が上がっていない。



「てことで小雨君と律君に聞こうと思ってさ」

「佚世くん怖い」

「政府にも情報は上がっていません。というか同じ二上の我々が知らないんですから知ってるのはそれこそ……」



 小雨がグロウを見ると、皆もグロウを見た。



 その視線に気付いたグロウは皆を見回して目を丸くする。



「私?」

「魂の女神なんでしょ、知らないの?」

「知るわけないだろう。だっ……」

「じゃ響皐月君、知らない?」


 響皐月が首を横に振ると、佚世はがくんと項垂れた。


 話をぶった斬られたグロウはニーミスを見下ろし、ニーミスはなんだとグロウを睨む。




「貝寄、わかんないの?」

「対の神? えーと」




 貝寄が首を傾げて考え始めたので、律も少し確認程度に探ってみる。



「怪しいと思うのは管理人なんだけどさ」


 律の言葉に皆が目を丸くし、首を傾げた。



「管理人?」

「なつ、おいで」

「なんですか?」



 律はHgからイヤホンを引っ張ると、祉夏の耳にはめさせた。そのまま、音楽の音を少しずつ上げる。


 外そうとする祉夏の手を払って耳を押さえた。




「昔さ、管理人の嫁に言い寄った時にさ。二上の神だしスイハ潰せるよって言ったらさ。神として超えてから出直して来いって言われたんだよね」

「擦り寄るなよ」

「情報吐くかなーと思ったけどあんまりだったし」

「それ管理人にバレてないんですか?」

「バレたよー。肺に二箇所穴空いた」

「祉夏君って読唇術使えませんでしたっけ」

「えッ」




 帝翔が祉夏のイヤホンを外すと、睦が祉夏を呼んだ。大音量を聞いたすぐあとなので聞き取りずらそう。



「大丈夫、祉夏君?」

「大丈夫です……」

「今律さんがなんて言ったかわかった?」

「……母に、父のそばにいる時に父に耳を塞がれたら口を見なさいと浮気用語の読唇術は教えてもらいました。嫁と言い寄ったはわかりました」



 帝翔が吹き出して笑い転げ、律は台から落ちてしたにうずくまった。



 台のそばに立っていた小雨は律が座っていた隣に蜃を座らせ、自分は律の場所に座るとうずくまっている律の背に足を置いた。



「管理人に連絡取れる方、帝翔さん」

「僕管理人に連絡手段絶たれたんだよね。どっか許可してたら睦くんに辿り着くからって」



 あぁ、それで連絡が来なくなったのか。


「何睦君に辿り着くって」

「お前基本無視だったろ」

「前に管理人と報告会したときにちょうど帝翔さんの通知が鳴り止まなくて」

「佚世怖い」



 睦と恋弥が佚世を見上げると、佚世はにこにこ笑って首を傾げた。


「ん?」

「……というか、じゃあどうやって管理人と連絡取ってるんですか?」

「通信機」

「ガキだな」

「黙れ不倫野郎」

「やめろッ!」


 祉夏が聞いてんのに。



 律が帝翔の口を塞いで喧嘩になったので、それを置いといて小雨は貝寄に目を向けた。



「貝寄さんは取れるでしょう?」

「…………Hgどこやったっけ!」

「あぁ駄目ですね。律さん」

「連絡先消した」

「……何故無能が多いんでしょう!」

「出来損ないだからじゃない」

「俺の方から取りましょうか」

「お前の自撮り送ろう」

「俺お前の写真持ってるよ」

「やめろ」



 睦はHgを開いて、恋弥と陽泰が両方から覗き込んだ。



 娘の写真、多いなぁ。




「お疲れさまです管理人」



 すぐに連絡が付いて、手で左目を隠した管理人が画面に写った。


『おつかれー。帝翔と貝寄大丈夫?』

「帝翔さんは律さんと喧嘩してます」

『うんだろうね』

「貝寄さんは元気です」

『そっか。でどうしたの? 後ろに見えるのはもしかしなくても佚世君じゃない?』

「お久しぶりでーす」

『……あれこんな顔良かったっけ?』

『お父さんイケメン?』

俰盤(わだか)だめだよ』



 疓憝(ねうら)と俰盤の声が聞こえ、佚世は少し戸惑い睦は苦笑いをする。背景的に、家にいたんだろうな。



「今管理人の神の力の話になってまして」

「わぁぶっ込んだ」

「ねぇ管理人僕の連絡機能回復しないかなッ!?」

『むりー。……二人ともお面取ってきて』

『どれ?』

『どれでもいいよ。…………で、私の神の力の話か、どうしたの?』

「魂と肉体のセット関係を変えたくて。魂の神は能力足らずだしその他は力が弱すぎるし私らじゃできる能力ありませんし」

『遺体返したら戻るんじゃないの?』

「魂の種類がちょっと違うせいで予定外が起きて今活動時間が三時間だけなんです」

『魂の女神に魂の種類変えてもらったら?』

「そしたら能力消えて連れて行くのに危なくなるでしょう?」

『あーそっか』

『おとーさん持ってきた!』

『疓憝静かに』



 管理人は二人が持ってきた黒い面を受け取ると、俯いてそれを付けた。



『あズレた』

「どうぞ鏡見てもらって」

『まいいや許容範囲内。ちなみに私の力も無理だよ』

「えーそこをなんとか」

『いや無理だから。……魂の所有者ねぇ』

「ちなみに管理人の力はなんなんですか?」

『それ聞く?』

「いや酸雨(すいう)さんに聞いてもいいんですけど」


 知ってんのか知らんけど。



「睦君酸雨ってあの酸雨?」

「その酸雨さんです」

「君人脈広くなったねぇ!? えぇジュワルパの王族末裔! 実質最高権力者じゃないかい」

「ちょっと縁がありまして」

『脅さないでよ新世代怖いなぁ』


 小雨の魂が抜けかけている。



 管理人のカメラが切られ、少し物音がした。小さな素早い足音が聞こえるのは、子供たちが周りで走り回ってるんだろうな。高性能マイク。



『酸雨に聞かれたら勝ち目ないからさ。やめてほしいんだけども』

「じゃあ教えてください」

「管理人に圧かけんなよ」

「時短大事」

「時短て」

「教えていただけない場合家に行きます」

『酸雨も知らないよ? 俰盤も住所は言えないし』

「行ったら教えてくださいますか?」

『ほんとに来そうだから嫌だ怖い。ほんとに私にはそんな力ないんだよ』


 まぁ、管理人が睦見捨てるとは思わないけど。




 リビングに移動したらしい管理人のカメラがつくと、睦はひとしきり睨んでから佚世を見上げた。



「管理人が対の片割れだった場合どうするんですか?」

『嘘でしょその(てい)で進めるの?』

「天獄さんが持ってる特殊なもの使って片割れ生贄に下ろす。それを片割れに入れて本神の完成」

「ですって」

『睦君視たね?』

「そろそろ本気でやろうかなと。制御ができないのでカメラに写ってるもの全ての詳細がわかるんですが」

『怖いなー!? 佚世君化け物育ててどうする気!?』

「御三家落としてジュワルパ統率」




 通話が切られ、メールで一言、無理、と。



 ちょっとからかいすぎた。




 佚世は後頭部を脳之輔にしばかれ、睦はため息をついた。



 酸雨に聞こうかな。




「睦くん、そこまでやったら管理人本部に出てこなくなるよ?」

「どっちにしろ俺は本部に行く前に活動時間切れるんでどこにいてもらおうと関係ないです」



 ちょちょっと画像を偽装して、酸雨に「許可はもらってある」と聞いて、やっぱり対の神の片割れであることを確認する。そして、その本体は管理人の父親である先代管理人ということも。


 あとは、管理人からまぁな頻度で送られてくる娘や妻の写真から家特定。




 うーんハッカーの腕が役に立つ。

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