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Thread of World──世界の糸の物語──  作者: 織優幸灔&夜月夢羽
二章
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21.持ち物

「あら、禁忌になっちゃったの」

「はい。龍が創る人にあってはならないものということで……」

「まーローが決めたんならねぇ」

「……あの、さっきから言ってるローって……」

「アグロレスだよ。継承されてるでしょ? 始まりの魔法使い」

「知り合いなんですか……!?」

「うーん、まぁ親友並みに仲はよかったんだけど。私は親友とは思ってたけど相手がどうかはしーらない」



 佚世がにこやかに笑うと、景矢は驚きで顔を引きつらせた。


 この人、何年前の人だよ。始まりの魔法使いが生きてたのって、景矢の時間軸からでも六百年近く前だが。




「景矢腕下げないで」

「あ、はい」

「睦君描けたー?」

「もうちょっと待ってください」





 現在、屋根裏の簡易に区切った小間(ブース)の中で景矢の魔法印をスケッチ中。睦が。


 その暇潰しに、佚世と景矢はおしゃべりしていた。




「……こんなんでどうでしょう! 一応描き落としはないと思うんですが……」




 佚世はそれを貰うと、景矢の体とそれを見比べた。



「……うん、大丈夫そう」

「よかったです。印見つかりそうですか?」

「うんあったよ。……にしてもその禁忌集団は人間兵器でも作りたかったのかな」

「兵器……?」

「下手したら自爆するような魔法印とか自分を燃やすような魔法印がわんさか描いてある。自殺したのに追いかけてきたんなら自殺用じゃないでしょ? カモフラージュかなんか知らないけど腕とか前面は一般魔法印だけども」



 睦が持ってきたブランケットに包まれた景矢は佚世の説明を聞いて顔面を真っ青にし、睦の服を掴んだ。


 睦は景矢を抱き締め、背を叩いて落ち着かせる。



「大丈夫だよ。今までも何もなかったでしょ」

「……でも、あいつらが、来たら……」

「怖いよねぇ。失効の印で消そうか。睦君私の道具たち回収してくれてる?」

「あ、はい。それとリオの崖にあったペンも」

「……なんで崖のこと知ってるの?」

「ひと騒ぎあったんです。そこの洞窟から透明化の外套(マント)が持ち出されてっていう」

「それ見つけたの誰」

「下にいる水尋という子です。響皐月のお世話係やってるんですけど」



 精神がないから感覚攪乱と思考誘導が効かなかったのか。見付けたのがあいつらじゃなくてよかった。危ない危ない。



 佚世の張り詰めた空気が途端に軽くなり、本人もホッと胸を撫で下ろした。


 睦も、少し安心する。




「ちなみに小雨さんにバレてます」

「さーリオの崖に行こうか! 準備できたら降りといで」

「はい」









 準備をして、ライム運転の遊樹機でリオの崖に向かうことになった。


 子供たちは、廃教会に残ったスレッドの皆が見てくれているので。



 貝寄除く金の世代四人と睦、恋弥、景矢。その他は留守番。




「リオの崖行って景矢君のやつ失効してる間に睦君がその他の道具取りに行ってくれるんでしょ? なるべくスピード勝負で片付けたいからさっさと見付けたいな。景矢君の魔法印は逆探知できないタイプだったから逆探知機を作らないと」

「作れるんですか?」

「うーん、できるんじゃない? 知んないけど」



 佚世は肩を竦め、睦は苦笑いをして恋弥は呆れ顔になった。


 不安な景矢は睦を見上げ、睦は景矢を安心させるように頭を撫でる。





 佚世を挟んで座る律と帝翔が上機嫌に佚世への愛を語っていると、ふと恋弥があくびをした。



「恋弥大丈夫?」

「寝すぎた……」

「寝すぎたって感覚があることに安心する」

「黙れ」








 それからもうしばらく飛ぶと徐々に高度が下がり始め、リオの崖に着いた。



 小雨がいるので特に問題はないが。





「……あれここの崖作ったのは……」

「私じゃないよ。私改造しただけ」

「ですよね? 数百年前ですし」

「その頃はまだ来てもないね」






 佚世は睦だけを連れて洞窟に降りると、壁に手を突いた。


 洞窟の形が変わり、一本の廊下から一室だったのが、廊下が消え一つの大きなスペースになった。廊下の横にも空洞があったらしい。




「わぁ」

「孤児院に入る前はここで過ごしてたからさ」

「帝翔さんと同じ孤児院だったんですよね」

「そ、火事で潰れたところね。火事の最中に私はだんちに拾われて、帝翔君は火事のあとに管理人に拾われてって感じ」




 やっぱり全部なくなってるなぁと、棚を確認して項垂れる。



 ここでずっと外套(マント)の試作を作っていたので試作品や失敗作が山のようにあったのだが、やはり全部盗られている。




水尋(みつね)が持ち出した外套(マント)って全部政府?」

「はい。一応、参界者殺しの組織が使用したものってことで」

「面倒臭いのに巻き込まれちゃったなー」

「たぶん返してもらうことはできると思いますよ? 盗品の部類ですし」

「え絶対変な取り引き吹っかけられるよ?」

「……まぁ、否定はできませんが」

「そういや睦君私があげた外套(マント)どこやったの?」

「取ってあります。小さくなったので」

「それ普通の外套(マント)でしょ? あとで印入れてあげるよ。私と同じやつ」

「ありがとうございます!」

「前の外套(マント)は銃弾通しちゃったからねぇ」




 佚世は荷物をまとめるとどこかにしまい込み、外套(マント)を払った。



















 佚世に景矢を任せて、睦は恋弥と二人だけでは心配しかないので陽泰とともにスレッドに向かう。




 恋弥はさっきから頻繁にあくびをして、かなり眠そう。


 休んでたら寝るとかいう謎理論でついてきたけど、できれば休んで寝ていただきたい。眠れず起きてるならそれはそれでいいからさ。






 紙袋に、洞窟でこっそり回収した佚世とわかる私物いくつかと、トワイライト本拠地の佚世の部屋から持ってきた箱を二つ。結構重い。




「……恋弥、佚世さんのホロ持ってる?」

「あー、本部にある」

「取りに行った方がいいかな」


 とりま恋弥は休ませたいので、睦の予備入れとこ。









 廃教会に戻るや、恋弥は眠いと小間(ブース)の中に戻って行った。



 睦は屋根裏に行き、声をかける。



「佚世さん、持ってきました」

「ありがとー」

「……ずいぶん懐かれたようで」



 座った佚世に、景矢がくっ付いている。



「印は消し終わったから暴走で死ぬとかもなくなったよ。荷物ちょうだい」

「はい。……あと、Hgってどうしますか?」

「私のある?」

「恋弥が持ってて。本部にあるらしいんですけど今日はあまりにも眠そうなので休ませてます」

「じゃいいや。……これは?」

「俺の予備のやつです。連絡取れないと困りますし。一応これとだけ繋がってますけど」

「優秀!」




 佚世が箱を開けると、睦と景矢がそれを覗き込んだ。


 同じ形の小瓶が九個×二箱、全部銀のコウモリの翼のような飾りが付いて、向きも揃っている。



「あっ、それッ、佚世さんの……!?」

「そだよ」

「なんで、だって……!」

「ローの時代の人は皆こんなんだったよー? これはローから貰ったやつだけど」

「えぇ……!? だって、今もうそれ王族しか使えないやつで……!」

「……龍眼は? 君もそうでしょ?」

「え、いや……龍眼族はいますけど、王族とはまた別で……」

「ふーん。ま、いるならいいよ。君はなんの龍?」

「地です」


 佚世は目を丸くして景矢を見上げた。


「わぉ」

「え?」

「あーいや、なんでもない。……いやぁ継承されてるならよかったよかった」




 景矢と睦は首を傾げたが、佚世はけらけらと笑って話を終わらせた。





 睦が持ってきてくれた荷物をまとめてから、一階に降りる。



 階段を降りると皆が小間(ブース)を覗き込んでいるという、異様な光景だった。



 三人も覗くと、恋弥が台の上で軽く丸まって眠り、茶トラが足元に丸まって、白玉が腕の中で抱っこされ、一緒に眠っていた。


 寝顔が幼いかつ身長がそこまで高くない上に丸まって眠っているので、子供と癒し(動物)の寝顔というトリプルコンボなんだな。


 唯一、陽泰だけが真顔だけども。




「恋弥寝たの?」

「帰ってきてすぐに……」

「まだ幼さ残るねぇ」



 佚世が中に入ろうとしたとき、ふと気配を感じた。



 横に手を出して、倒れた睦を支える。


 そのまま、支える力がないまましゃがみ込んだ。



「睦さん……!?」

「先生助けてッ……!」

「どうしたの」

「わかりません。想定外が起こってる可能性があります」



 脳之輔は睦を抱き上げると台に寝転ばせ、髪を解いてあげた。



「睦君髪長いねぇ」

「黒に戻るといいけど」

「なんで白なんですか」

「ストレス」



 佚世は心配そうに睦を見下ろすと、頭を撫でた。

 その光景に、オタク二人が打ちのめされ倒れる。




「佚世さん、いくら縮んだからといって睦さん一人支えられない筋力になったわけじゃなでしょう?」

「私のあの筋力は生きながら鍛えてたからだよ。七歳まで戻って筋トレもなしに急成長したんだから筋力なんてあるわけないでしょ? 零歳から二十歳になったら歩くのもままならないんだよ」



 佚世が三人にブランケットをかける間に、小雨と律と帝翔が頭を回転させた。



 現在、佚世は非力だと自己申告した。


 つまり



 この件が終われば小雨一人でも捕えられるのでは


 寝込み襲えば抵抗されずに使えるのでは


 適当に人質取って脅したら引きずり込めるのでは




 三人のそんな考えを他所に、台に座って睦の頭を撫でていた佚世がふと顔を上げた。



「どうしたの?」

「少し出掛けてきます。その子起きたら説明と活動時間は三時間前後と伝えといてください」

「わかった」

「佚世さんどちらへ?」

「とっても大事な用事」

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