はじまり、はじまり
王城のとある会議室。
そこでは、この国の中心人物、皇帝陛下を始めとした公爵家当主が揃っていた。
皇帝陛下は呆れた顔をし、深いため息と共に話始めた。
「あの愚息にも困ったものだ。」
皇帝陛下の言葉に公爵家当主たちが苦笑する。
「まさか、婚約者に条件をつけられるとは、よほど婚約したくないのでしょうね。」
「どうされます?皇子が出した条件にあう、婚約者候補はいませんが。」
「うむ…」と皇帝陛下は少し考えた後、1人の当主を見た。
「お前のところの娘を1人候補として選んでもいいか?スレイ。」
スレイと呼ばれた男性は殺気を放ち少し怖いぐらいの笑顔で皇帝陛下をみた。
その場の空気が一気に氷り、みんなの顔色が青くなった。
「我が家が恋愛結婚なのは陛下もご存じだと思いますが??」
絶対娘はやらんと言う圧でスレイは答えた。
「し、知ってはいるが、あいつが出した条件をクリアできるのはお前のところの娘だけだと思ったんだ。」
皇帝陛下は戸惑いながらも答えた。
スレイは呆れた表情で椅子に座り直し殺気をしまった。
そのことに周りは少しホッとする。
「確かに、俺たちパラミシアなら、特別な訓練をされているから第二皇子殿下が出された“帝国騎士団長よりも強い令嬢”っ言う条件を簡単にクリアするだろうな。
だが、それとこれとは話が別だ。
俺たちパラミシアが恋愛婚なのは譲れないな。」
「そうか…」
スレイの言葉に皇帝陛下は思案顔になった。
そんな皇帝陛下にスレイは呆れたため息を一つついて続けた。
「だから、言ってるだろう?恋愛婚ならってな。
第二皇子殿下のことをあいつらの誰かか気に入ったなら婚約者候補として出してもいいだろう。」
その言葉に皇帝陛下はスレイを見る。
「ただし、あいつらが気に入らなかった場合、婚約者候補も無しだ。
いいな?」
「いいのか?」
「幼馴染が困っているからな。
ま、あいつらって言っても、長女はすでに婚約者がいるし、次女は好いている奴がいるみたいだから三女しか候補にはできないがな。」
スレイの出した名前に皇帝陛下は記憶を呼び起こすように呟いた。
「三女…コレット嬢のことか。」
皇帝陛下の言葉に周りも話始める。
「…スレイ、コレット嬢は確かまだ5歳じゃなかったか?」
「あぁ。5歳の割に利口だし、パラミシアとしての強さも、もう十分と言って良いほどだ。
訓練でも俺が負けるし、実戦にもすでに同行できる。なんなら戦いながら指示役もできる。」
「「は?」」
スレイの自慢げな言葉に一同に目が点になる。
「お前…それは話盛りすぎだろう。」
「親の色目だな…。」
「親バカだとは思っていたが此処までだと重症だな…」
スレイ以外が呆れていると、それを聞いたスレイは少し怒り出した。
「親バカなのは認める。パラミシアは全体的にそうだしな。
だが、こればっかりは事実だ。
それにうちの長男だって5歳の時には実戦に参加してる。パラミシアではそう珍しい状況じゃない。」
「だが、おなごなのだろう??」
「それこそ、もっと関係ないな。
俺たちがどうゆう家紋か知っているだろう?」
皇帝陛下の問いにスレイは真剣な面持ちで答えた。
スレイの答えに皇帝陛下も真剣な表情になった。
「…魔法すら打ち砕く武術と守ることに特化した一族。
スレイ・パラミシア辺境公爵。この件は君とコレット嬢に任せてもいいだろうか?」
「あぁ、問題ない。」
スレイの答えに皇帝陛下は表情を和らげ「今日の茶会はこれにて解散しよう」と告げた。