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30.  拠点アスバルド 2

あけましておめでとうございます。

本年もマイペースに更新していきますので、よろしくお願いいたします。

 拠点と定めたアスバルドは、徐々に活気のある町へと変化していくようであった。


 拠点を得たテイト達が先ず一番にしたことは、周囲の町に滞在する仲間に合流することであり、そこから円を広げるようにして人から人へとアスバルドに集まるよう伝達を行っていった。

 到着した者から順に知り得る《アノニマス》の情報を全てシンに伝えてもらい、それが終わると生活基盤を整えるための町作りを手伝ってもらった。


 嬉しい誤算だったのは、拠点のことをどこで聞きつけたのか、今まで助けてきた村や街の人々がお礼と称し、食料や家財道具を差し入れに来てくれたことだった。

 助けてくれた時に感謝の言葉を伝えることしか出来ず、いずれこの恩を返したいと思っていたが各地を転々としている《クエレブレ》の人を呼び止めることも出来ず、拠点があると聞いて今やっと形あるものとして返すことができたと微笑まれた時、不覚にもテイトは泣きそうになった。

 自分たちのしてきたことは、決して間違っていなかったのだと確信が持てたからだ。


 有り余るほどの支援物資の使い道について頭を悩ませていると、一部の仲間達から家族を拠点に呼んでもいいだろうかと相談された。

 《クエレブレ》に加わると決めた時点で家族に危険が及ばないようにと故郷に置いてきたが、ここに仲間が集まるのであれば安全は約束されたようなものであるし、仮に自分が亡くなったとしても仲間に家族のことをお願いできると言われれば、断る理由もなく了承した。

 幸いアスバルドの土地は広く、空いている建物はそれこそ山のようにあった。

 ここが安全であるとはテイトには言い切れないが、家族がばらばらに暮らすよりはきっと良いに違いないとは思ったのだ。


 そうして、アスバルドには《クエレブレ》に所属する者も含め、今は百人程が生活している状態となった。

 まだ到着していない者も数にいれれば、最終的には今の倍以上の人数が集まることになるだろう。

 町には食べ物の配給場所としての食堂ができたり、交流の場としての酒場までできているようで、その場が《クエレブレ》の者であるならば無料で使用できるという以外は、かなり町に近いものになった気がした。


 そのように活況を呈するようになると、次に《クエレブレ》への加入を志願する者が訪れるようになった。

 テイトは初め手放しでそのことを喜んだが、ただでご飯がもらえると聞いたから来たかも知れないし、敵のスパイが紛れ込む可能性もあるから誰彼構わず中に入れるな、とシンに言われて一気に気を引き締めることとなった。


 志願者の人となりの確認のために面談をしてみたが、正直言葉だけなら何とでも取り繕えるため、テイトには全員が善人に見えた。

 それをそのまま伝えると、シンは深く溜息を吐いて面談に同席してくれることとなった。

 なんでも、シンは魔法を使って相手の嘘を見抜くことができるらしい。

 触れることにより精度は高くなるらしいが、シンは大人しく面談を見守ることに徹していた。

 かと思えば時には自ら質問を投げかけ、終には相手から謝罪の言葉を引き出すまでに追い詰めることもあった。

 結果、志願者の殆どは不採用となり、人間不信になりそうだとテイトは別の意味で泣きたくなった。

 自分は暇じゃないから嘘を見抜ける奴を面接官にしろとシンに言われたが、それが簡単に見つかるのであれば苦労はしないという反論の言葉はなんとか飲み込んだ。


 と言うのもシンはシンで、仲間から集めた情報を元に《アノニマス》の行動を分析して、次に襲撃される地点を特定しようとしてくれているからであった。

 この一年半、襲われる場所に共通点もなく、次にどこが襲われるかなんて全く見当がつかなかった。

 それが本当に分かるようになるのか、仲間達はシンをあまり信用していないようであったが、テイトは彼ならばやってくれるのではないかという謎の自信に満ちていた。


 しかし、このアスバルドでの拠点作りに精を出している最中に遠くの街が襲われ、酷い怪我を負った仲間がお互いを支え合いながらアスバルドに到着した時、仲間達のシンへの不信感は一気に高まった。

 襲われた街はほぼ壊滅状態で、仲間内にも死者が出たと聞いた。

 そうなってしまったのは、皆がこの拠点を目指して移動していた為に襲撃地に赴く仲間が不足してしまったことが原因であることは明らかで、今までやってきた方法の方が被害は抑えられる、と声を荒げる者が出始めた。

 言いたいことはよく分かったが、皆が持つ全ての情報が出揃うまでは待って欲しいとテイトが告げると、不満そうだが一応は納得してくれたようであった。

 しかし、それもいつまで持つかは分からない。


 期待と不安で揺れ動く中で二週間が経ち、シンがとうとう一つの結論を出した。


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