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27.  ルフェール教団 7

 翌朝も晩餐を食べた部屋と同じ場所に朝食が用意されていた。


 内心緊張しながら入室したがアニールの姿は見えず、更に晩餐よりかは礼式を気にしなくて良さそうな食事の内容に、テイトはほっとしながら食べ進めた。

 食後の紅茶を飲んで一服ついていると、アニールが紙の束を手に持って入室し、優しげな笑みを浮かべながらレンリの前にそれらを広げて見せた。


「遅くなりました。幾つか資料にまとめましたので、ご希望に添えるものがあるか確認してください」

「こんなにたくさん、大変だったのでは?」

「御使い様のことを思えば、さしたることではありません」


 アニールは自分の胸に手を当てて誇らしげに述べた。

 昨夜とは差がありすぎる姿に動揺が現れぬよう、テイトは紅茶を一口飲んでごまかした。


 レンリは一つの資料を手にとると、目を伏せてページを捲った。

 一カ所につき十数ページに及ぶ詳細が記載されたそれは、ざっと見ただけでも十カ所以上の遺跡についてまとめられているようである。

 レンリを手伝う素振りを見せながらシンも資料を手に取り、黙々と目を動かしていた。

 幾つか読み込むこと十数分、お眼鏡にかなうものがあったのか、シンは手に持っていた資料をレンリに手渡した。


「ここはどうだ?」


 レンリはそれを受け取り、内容を確認する振りを見せた。

 名目上レンリが拠点を必要としていることになっているので、レンリの確認を得て決定する流れを作ったようである。


「……そうですね、ここにします」


 レンリが顔を上げてその資料をアニールに渡すと、アニールは嬉しそうにそれを受け取った。


「アスバルドですね。分かりました。いつ出立なさいますか? 開示の手続きのために同行させていただきます」

「アニールの方こそ都合の悪い日などはありませんか?」

「こちらが最優先事項ですので、お気遣いなく」


 教祖の息子であれば忙しいであろうことは明白だが、アニールはただにっこりと笑みを浮かべた。

 レンリはちらりとシンを伺った。


「それなら今からでも向かいたい」

「かしこまりました。それでは馬車を用意いたしましょう」


 シンの無茶な要求にも動揺することなく、アニールは快く了承して見せた。


「お昼には準備できるかと思います。それまでゆっくりとお過ごしください」


 アニールもまたレンリとナナに頭を下げ、足早に部屋を出ていった。

 この場をすぐに去ったことからもアニールの忙しさは容易に想像がつき、テイトは謝罪の気持ちを込めてその後ろ姿に頭を下げた。


「馬車なら三日以内には着きそうだな」

 ただ一人、シンだけは満足げに口の端を吊り上げて笑っていた。


 その後、馬車が用意されるまでの時間に余裕があるため各自部屋に戻ったが、テイトは一度シンの部屋を訪れた。

 レンリの言っていた『ホセ』という人物を知っているか確かめるためだ。

 もし知っていたらそれこそレンリと研究所との関わりが強まるが、知らなければそれを否定する材料にもなり得ると思えたのだ。


 シンにその名前の人物を知っているか訊くと、シンは分からないと答えた。

 シン曰く、それは文字通りの意味であり、研究所にいたかも知れないしいなかったかも知れない、それはシンには分からないとのことであった。

 それがどういう意味か尋ねると、シンは人の名前を覚えるのが苦手であり、研究所にいた人物で名前を知っていたのは一人しかいなかったのだと告げた。

 その事実に驚きながら続けて話を聞いてみると、シンはまだリゲルの名前すらも覚えてないことが判明した。

 二週間近く一緒にいるのにとテイトは絶句したが、それでもシンが嘘を言っていないことだけは分かった。


 結局その関係性を否定できなかったことに肩を落としながら部屋に戻ったテイトは、リゲルと共に旅に必要そうな物を街で買い足して時間を潰した。


 馬車の用意が出来ましたと声がかかったのは、まだ昼前のことであった。


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