表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/125

SIDE. 森の魔法使い 3

 表情を引き締めて一度も振り返らずに走り去るテイトを見送り、シンはゆっくりとレンリに近付いた。


「――一旦、俺たちは戻ろう」

「……魔法は、どうすれば使えますか?」


 レンリに真っ直ぐに見つめられ、シンは眉を顰めた。


「どういうつもりだ?」

「この刺青があって、森に入れたということは、私が魔法を使えることは間違いないのでしょう」

「それで、加勢にでも行く気か?」


 シンに鋭い視線を送られても、レンリが怯むことはなかった。


「私、テイトの言うことも、シンの言うことも分かるような気がします。誰かを守るという選択は、誰かを守らないという選択になる。お互い守りたいものが異なるのですね」

「俺は他の奴を助ける義理はないと言ったんだ、守るどうこうの話じゃない」

「けれど、シンの決断はナナ様を守るためのものなのでしょう」


 シンは目を細めて口を噤んだ。


「私は何も分かりません。何を信じたらいいのかも分かりませんし、何をすればいいのかも分かりません。でも単純に、私を助けてくれたテイト達に同じものを返したいと思っています」

「……どうして、そこまで」

「誰かを守りたいと思う心に、それ以外の理由は必要でしょうか?」

「……少なくとも、俺には必要だ」


 シンは大きく溜息を吐くと、頭をガシガシと掻いた。


「魔法は使うだけなら簡単だが、それを使いこなすのは一朝一夕でできるものじゃない。正直に言えば、魔法の使い方を教えたところで、あんたは足手まといにしかならないだろう」

「足手まといになるなら、潔くその場を離れます」

「……戦場だぞ、生半可な気持ちで行く所じゃない」

「無理だと思ったのなら、すぐに引き返します」

「引き返せる保証もないだろ、戦争に参加するのはそういうことだぞ」

「そうかもしれません。でも戦いに行く訳ではなく、助けに行きたいのです」

「あんたなぁ……」

「見ず知らずの私を守ろうとしてくださって、ありがとうございます」


 そうレンリが微笑むので、シンは一瞬目を見開いた後に苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。


「……あんたは研究所の犠牲者だからな」

「かもしれないだけで、そうと決まったわけではないですよね?」

「いい性格してる」

 シンは息を吐いた。


「……魔法は理解力と想像力だ。火の要素は? 水の要素は? その構成成分をこの世界の何から抽出できる? それらを考え、組み合わせて起こす現象だ」


 レンリが目を瞬かせたため、シンは目を細めた。


「この説明で理解できないなら、行かない方がいい」

「少し整理させてください。……シンがあの時私に使った魔法は、空気中の要素を使って周囲の草木の成長を促進させて且つそれを想像力で操った、そういう解釈でいいでしょうか?」


 シンは目を見開いてレンリを凝視した。


「思っていたより賢そうだ。本当に記憶がないのか?」


 シンの問いかけに、レンリは困ったように目を伏せた。


「記憶がないと言うより、自分自身のことがよく分からないのです。何かを教えてもらった気がするけれど、いつ、どこで、誰に教えてもらったかが分からない。その所為か、そもそも常識が根底から異なるような気すらしてしまって。……だから、私は自分の記憶を信じられないのです」

「なるほど」


 相槌を打つシンに向け、レンリは頭を下げた。


「教えていただき、ありがとうございます」

「理解したところで発動するかは別だが……でもまぁ、引き留めない約束だからな、勝手にすればいい」


 頭を上げたレンリがその場を去るのを見送って、シンは大きく溜息を吐いた。


「――そこにいるんだろ?」


 シンが森の方を振り返って声をかけると、気まずそうに眉を下げたナナが木の陰から姿を現した。

 言いつけを守らずに付いてきたことを反省しているにしてはその視線がこちらに向くことはなく、寧ろ俯いて何かを堪えている様子だったため、シンはふむと考えた。

 この距離では会話まではまともに聞こえていないだろうから、大方自分が冷たく当たった所為でレンリが去ったと勘違いしているのだろう、とシンはおおよその見当を付けた。


 シンはそのことを敢えて訂正せずにナナの方へと歩みを進めた。


「……行くぞ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ