表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

柴犬ホラー百物語

作者: 柴犬

 最近の事だが気がついた事がある。

 テレビの音を聞くとき自然に音声を大きくしている。

 ごく自然にだ。

 そう。

 ごく自然に。

 親から指摘されて其の事に気が付き音声を下げる事が頻繁に有る。

 其れが最近酷い。

 何でだろうと思ったら仕事のせいである。

 派遣会社仕事をしてるのだが僕はピザの生地を大量に焼いている。

 テレビの様にピザ生地を回転させて広げて焼いてはいない。

 工場の生地は機械で一度大量の生地を練る。

 其れを別の機械で伸ばし専用のカッターで切る。

 其れを二次発酵させ油を塗り余分に膨れないように適度に叩く。

 其の叩く音を間近で聞くので耳が自然におかしくなるのだ。

 別に難聴だとか聞こえないのだとかではない。

 ただたんに音が聞こえにくいのだ。

 それだけなのだ。

 だから補聴器は僕に必要ない。

 必要なのは音を拡大増幅するする物が必要なのだ。

 つまり集音器が。

 因みに補聴器が馬鹿みたいに高いのに比べ集音器は安い。

 物凄く安い。

 まあ~~あくまで補聴器に比べたら。

 等という但し付きだが。


 其れを買いました。

 イヤホンの方が安い?

 断線ばかりして自分の家七本有りますが何か?



 集音器は大きく分けて3種類ある。

 

「集音器」には大きく分けて「箱型」「耳かけ型」「耳穴型」の3種類がある。

「箱型」は実際に耳につける部分の他に箱型の操作盤がある。

 ……操作盤……。

 いや良いけど。

 良いんだけど……。

 なんか妙な敗北感が有るな……。

 気のせいかな?

 「箱型」は他の2つと比較すると性能が良く聞き取りやすい。

 聞き取りやすいんだが……。

 持ち運びがしづらいため自宅で利用している。


 そうして利用してみると物凄く良い。

 ごく自然に音が拾える。

 良い。

 物凄く良い。

 これは良い。

 よく聞こえる。

 音量を上げなくても良い。


 

 こうなると長年愛用するのは当然だ。

 

 そんな時だった。

 事故を起こしたのは。

 バイクで転倒して足と手を折ってしまった。

 というか車が行き成り道路脇から突っ込んできた車が悪い。

 僕は悪くない。

 まあ~~向こうからお詫びとして家族が鉱石ラジオを貰ったが要らんわ。

 ボルトを入れるほどの手術をした。

 其れで治ったと思ったら次が有った。

 脳梗塞になりかけた。

 脳に流れる動脈が詰まりかけたのだ。

 不幸中の幸いは早期発見出来たこと。

 カテーテルで動脈の詰まってる所に金属製の小さいネットを入れる手術をすれば助かる。

 いや本当に散々だった。

 

 此れで終わり。

 


 そう終わり。

 そう思った。







 或日の事。


 仏間に有るテレビを家族と見ている時だ。

 聞いたことの無い音楽が聞こえた。

 

 小さく。

 物凄く小さく。



 周囲を見る。

 何も無い。



 家族は反応なし。

 なんでだろう?



 今度は人の声がする。

 お笑いみたいだ。


 本当に何だろう?

 家族に此の音何だろうと聞いたけど無視された。

 この野郎……。

 腹立つ。



 今度はニュース。

 周囲を見る。

 何もない。

 

 おかしい。


 本当におかしい。


 音源は何処だ?

 耳を澄ませる。


 ……。

 

 近くだ。

 何処だ?


 ……。



 物凄く近く。

 近く。

 なのに分からない。


 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。

 何処だよ。








 ああ。

 分かった。

 僕の口から聞こえる。




































「貴方また脳梗塞で死んだあの子の鉱石ラジオからあの子の声が……」

「ああ今度は集音器で音を大きくしてるから俺にも聞こえる」

「本当に死者の声が聞こえるなんて……」

「鉱石ラジオをくれた人の話は本当だったみたいだ」

「ええ」

「お寺に供養してもらおう」

「そうですね」


























 ……。

 ………。

 …………。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これは視点逆転というか主客逆転がいつ起こったかの技を見せられたなと。 [一言] 良い意味で前半の集音器の説明の意味をラストだけでスッパリ解決されたなと。 私は捻りが好きですが、案外コレく…
[良い点] ホラーは苦手ですけど、この作品は面白かったです (*´▽`*)
[良い点] 逆パターンというか、語り手が犯人だったというか……。 意識が朦朧としてる感じがムーディー勝山ですね……。あ、勝山いらないや。 [一言] 私も耳が悪く、心臓にカテーテルを入れてるので、なん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ