明日に向けたエール(居眠り少女が、学校で無双する話)(短編ですぐ全部読めます)
私は、貧血症を患っている。
そのせいで中学時代は毎日が楽しくない生活だった。
特別支援学級に通っていた時期が多かった。普通の学級に行った時期もあったけどマラソンでは常にビリ。成績も悪い。給食も毎日ドベ。だから支援学級が唯一の命綱になった。私ってこんなオンボロでまったくかわいくない。可愛くする振りすらできない。
高校では変わらないよね。
ううん、
高校でも変わらないよね。
そうしてかろうじて滑り込みした偏差値のなかなか低い入学式の体育館に座り、皆と一緒に鎮座するところ。校長先生の話が長いな。早く終わってくれないかな。時刻を確認する。ゆっくりと過ぎ去る時間。1分たったように見えて10秒たっただけだ。
そして周りの輪郭がおかしい。輪郭が浮き出て宙に舞うような感じ。天井に人の影が見える。これは……ああ、貧血だな。いつものか弱い私の見せる唯一の特殊能力。天井に沢山の体育座りした同級生の姿が見える。そして暗転。世界は突如暗くなる。そして花開く緑と黄色の斑点模様の景色。
ああ……私体育座りをしながら倒れちゃうんだな。また、寝ているのかと怒られるのかな……。
嫌だ。でも、生まれつきなんだからしょうがない。
さよなら、私の初回デビュー……。また皆に呆れられるのが嫌だったよ……。
……
私は変な夢を見る。
私が巨大なひつじのモコモコする背中に乗って旅乗りするところを。
夢の中でゆっさゆっさと揺らされながら羊は前進する。
でも、これって変じゃないと気づいたとき。
目が覚める。
ここはどこ。
気がつくと私は、古びた木の囲いでできた校舎の中の、わいわい騒いでいる教室の中にいた。しかも机の上に座っている。
周囲を確認したけど、大声で騒いでいる生徒の姿を見ている。
あれ?私、倒れたよね?なんでここに?
周囲の生徒が私に声掛けがなされていないということは、私が直接お初のお話しするぐらいまで時間はすっ飛んでいないらしい。それはいいとして、もう一度言うけど、何で倒れていないの!!?
動揺する私。え、体育館から教室に移動したっけ?
記憶が飛んでいる。まるで誰かが私の行動を代行したようなものでないと説明付かない。けどそれは勘繰りすぎか。
そう思う矢先、先生がやって来る。先生のありがたーいお言葉を長々と聞きつつ、今日は初回だということでそこで解散になる。
ほっとした。けど、明日からもうテストらしい。なんでも学力能力に分けたい主旨の中学生向けテストだという。学生の私の身分から言うとそんなの聞いてないよ!
貧血のひどさもあり、強い興奮が頭のシナプスを刺激しすぎると、頭がカッとなって勉強になかなか集中できない。下手したら過呼吸になってしまう。私はお医者さんからはそう言われていないけど、自分自身でおかしいと思ったからそれで貧血ってことにしている。お母さんなら特別支援学級の理由を知っていると思う。だけど未だに聞いていない。たぶん貧血で合っていると思う。集中がうまく続かず、結局勉強は予想の半分も満たなかった。
翌朝。朝は弱い。う~んという生ぬるい声を沈めたのは、お母さんの大きな声だった。
目を開けると確かにその時間に近いなと思って、貧血がバレないよう長めの時間をとって登校する。
登校してほっとしたのも束の間、テストが始まる。
目の前にあるのは勉強したはずなのに分からないことだらけ。たぶん高校生向けの要素も交じっていると思う。
え、なにこれ?できない???
どうしよう・・・・・・。
体が絶望して言うことを聞かない。
すると頭がまたパニックになって世界が血で充満する。
目の前の文字の輪郭が滲み出る。文字が1重になったり2重になったりを繰り返す。
もうダメだ!と思い、そして最終的にはできないやってなって私は試験を諦め、その場で俯くように寝た。
夢を見た。
私はミシンを縫って毛織物をダ―――――という機械音を鳴らして作っていた。
ひたすら。前向きに。何一つ文句なく。
何の暗示?何だろうと自分では分かっていたが、夢の内容まで干渉できない。
私は闇雲にミシン縫いしているとこを自分自身で見せつけられた。
これは夢?とやっと気づくと、
起きる。
体を起こす。さっきのは夢だと気づく。
そして目の前の白い紙に現実を戻される。
ああ、ダメだった。
試験時間はあと5分。諦めたのまだ時間がある。
すると不思議なことが起こる。
なんと、文字の空欄がびっしりと埋まっており、ちゃんと正解と思わせる文章や記号が書き連ねられていたのだ。目を開いて確認するがやはり空欄は埋まっている。
私は目を丸くした!誰がやったの!!!?
なんで!?誰の仕業なの!!?
ひょっとしてカンニング!!?いやよそれだけは!
色々な思いが錯綜とする時間もあらず、試験時間は終了し問題用紙が回収される。
なんで・・・・・・。戸惑いと苛立ちを隠せなかった。頭を手で覆った。
すると、ある案を思いつく。
さっきのことも、今の事も、
眠っていれば時間を飛ばすんじゃないかな?
眠っていればそれが好きな誰かが代行して時間だけが過ぎる。
私は何にもしなくていい。
そう、タイムワープだ。
私は今世紀最大級に大きな発明をしたと思って大きな笑顔をつくる。
世界がバラ色になる。こんなに世界って綺麗だったなんて!!!
私はなんもしなくてもいいんだ!!もうバカにされない!!
私は大喜びして、その勢いは放課後まで続いて、一人で大股スキップをしながらトイレに向かった。
トイレから出ると、「おいっ」と声がかかる。
振り返ると、成績のよくなさそうないわゆる不良が3人、なにやらにやついて私を呼んでいる。
「ちょっとお金貸してくんない?」「やめろよw」
嫌な笑い方をする高学年に囲まれた。不味い雰囲気が漂う。早く逃げなくちゃ。
「いやです……。」
嫌だということを主張してもやめてくれないどころか、3人で私の周りを囲って出れないように威嚇した。
「ちょっと痛い目にあってもらうよ!!!」
これだから悪い高校にはいきたくなかったのに!!!
助けて!神様!!!私!!!
これが夢であったらいいのに!!!
そう思うと、はっとひらめいてタイムワープのことを思い出した。
そして、もうどうなってもいいやと囲まれたその場で眠りについた。
すると気が付けば私は自分の寝室のベットの上で寝ていたのだ。
なんで、という声もあるが、どうでもいいじゃん!!!やった!!!
タイムワープは存在していたんだ!!!
という喜びの方が強かった。
以下、回想の通り。
「明日、体育の時間があるぞ」
そして私は皆が着替えの時間の間に一人教室で眠って一時間を有意義に使う。
「明日、中間テストがあるぞ」
そして私は眠りにつく。すると予想点数より遥かに上だったと聞いて小躍りする。
「明日、修学旅行に行くぞ」
そして私は眠りにつく。だって九州旅行なんて誰が行くの?ディズニーじゃないなら行かない。
「明日、春の期末テストがあるぞ」
そして私は眠りにつく。気が付くとテストで高得点を取っていた。ノー勉でいけるじゃん。ラッキー!
私の人生は、これぐらいの余白でできている。
これは、目も合わせたくないぐらいの、一刻も早く過ぎ去ってほしいぐらいの汚い思い出だ。
でもね学校生活送れなくて辛い?いいえ!!!貧血の私にとっては最高!!!もう友達も青春もいらない!!!
こうして私は青春を眠りに注いでいった。
ただ、寝るたび変な夢を見るんだよね?そこが難点。
そんなことをしていたある日、運動会のダンスの本番にぶち当たった。
なぜか私も踊るという。私は眠っちゃうから関係ないけどね。
そして本番の日も、私は眠った。
ダンスに使う両手のサイリウムなんか棄てちゃえと思うほど。
するとそれは奇妙な夢だった。
なんと私がダンスのセンターとなって中心を歩いている。
それを見ている私がいる。
そして中央部に来ると止まった。
ミュージック、スタート!
それと同時に私は、なんと踊っている!!!
お気に入りの曲に、右手のサイリウムを右に上げ、左足を直角に曲げる。
そして落として戻すと、今度は反対方向へと左手を上げる。
そしてまたもや戻すと音楽の一瞬とまる一休憩、大の字にサイリウムを広げ、そして音楽が動き出すとサイリウムが交差するように両手を下す。
「見てて!」
私は私の声を感じた。
そして半歩下がって一回転した。
そして見たんだ。
私が私に向かって笑顔で甘いウインクするところを。
私って、こんな顔するんだっけ?こんなにキレがよかったんだっけ!!?かわいい!!!めっちゃかっこかわいい!!!!!!!!!!!!!!
ダンス場で踊っている私達が、サイリウムの両手を広げ三回転して中央に集まり決めポーズ。
そして場は静まる。
盛大な拍手が起こる。
私は……。あんなことができなんだ。なんてバカなことを……。
私は後悔した。最初から努力していれば実は運命って変えることができるのかも。
アニメみたいに皆とワイワイして困難を乗り越える学校の日常を過ごすことができたのかも。
ああ……。
返してよ……私の日常を……。
でも、もう、戻せないんだよね。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
私は家から帰ると真っ先にベッドじゃなくて、ランニングを始めた。
細い息を吸って吐いて、そしてたまに吐きそうになるけど。
でも、私は強くなりたい。もっともっと強くなって。貧血だけど強くなって!!!
そしてお友達を作って!!!
笑い合いたい!!!!
その思いが通じたのか、高校生時代にお友達ができました。
成績も鉛筆をガリガリやってやっと志望校の範囲になりました。
そして気がつくと、私は大人。
先生からも無理と言われた東京大学も主席で卒業して一流企業に就職している。
大学仲間とも笑い合った。めっちゃ楽しかったな。
そして目の前にある大量の仕事の紙の山。
目を避けざるを得ない。でも戦わざるを得ない。
私は昔みたいに眠った。
すると景色は、まるで懐かしい母校の高校の授業の中のテスト中だった。
この問題集は、中学のみならず、高校生の範囲もあった。
目の前の景色を察して一言いいたい。
「なるほどね。そっか。そういうことか」
退屈な授業も、テストも、いじめも、修学旅行も全部。
一瞬たりとも逃してはいけない、かけがえのない宝物だ。
勉強自体も仲間をつくることも楽しいんだってこと。
未来の私が教えてあげなくちゃね♡
それにしても山の仕事量
あーあ、誰かやってくれないかな……。
終わり