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見た目がチャラい御神本琉季は、やっぱり皆に誤解されている

作者: 北森青乃

内容等を訂正した、再掲載になります。

 



「あの、男の人って経験豊富な女の子の方が好きなんですよね!?」


 ある日の放課後。

 部活に勤しむ者、帰路につく者。そんな生徒で少し騒がしい中、ここは静けさ漂う3階のとある教室。


 そして、その中で顔を赤らめ恥ずかしそうに話す女の子。

 彼氏が好きで好きで仕方ない。あまりに思うが故の言葉。その感動的な行動に胸が高鳴り、救ってあげたい……切にそう思う。


「噂だと御神本(みかもと)先輩はそういうのに詳しくて、慣れてるって聞いて……」


 それについては若干の誤解はあるものの……それを今否定した所で、何の意味もない。

 けど、本当に俺なんかで良いのか? 1つだけ質問をしようか。


「1つ聞きたいんだけど、そういう相談をするって事は……君は……」

「はっ、はい。経験が無いんです」


 なるほど、初めてだから……そうなった時に自信が無い。それによって彼氏に嫌な思いをさせたくない、嫌われたくない。そういう事か。


「だっ、だから練習をして、タケちゃんを喜ばせてあげたいんです! その為に……御神本先輩……」



「私に色々教えてくださいっ!」



 うわ……眩しい。けど、そんな真剣な表情に相反して、とんでもない事を言っているよ? 気が付いているのかい?


「えっと、江藤さん……?」

「はい……」


「君の彼氏に対する思いは十分に分かった。それに覚悟もね? そこで俺でよければ協力……」

「えっ! じゃ、じゃあよろしく……」


「と言いたいところだけど……」

「え?」


「断固お断りだよっ!」

「……えぇぇぇ!?」




 ――――――――――――――――――




「あっ、ありがとうございました」

「うん。じゃあね」


 ガラガラ


 ふぅ。

 ここへ来た時とは打って変わった表情を見せた江藤さん。そんな彼女の背中を見るだけでも、何処からともなく嬉しさがこみ上げる。


 今日はなんて良い日なんだ。やっぱり人の役に立てた時は嬉しさ倍増だね。


 ただ、そんな嬉しさとは裏腹に、ある疑問が頭を過る。

 ……それにしても、なんで俺のところには()()()相談が結構多いんだろう? さっきの子だって、


『あのね? 誰に何を言われたか、何を見てそう思ったのかは知らないけど……誰だって初めてが良いに決まってるでしょ? 初めて同士なら、徐々に2人で高め合っていく。それが理想でしょ? それにねぇ、大抵の男は初めてってフレーズに弱いのよ? 欲してるのよ? だから、それをおめおめ失うようなそんな行動……論外だよっ!』


 俺の説得に理解を示してくれたから良かったものの、一歩間違えてたら……考えるだけで寒気がする。1つのカップルの純愛が壊れるところだったよ。

 それでも、彼女ならもう大丈夫だろう。1つのカップルを救えたとなると、やっぱり嬉しさも半端じゃないなぁ。


 ガラガラ


 ん?


「やっほー、琉季(るき)


 なんて思いに耽っていた時だった。扉が勢い良くあいたかと思うと、誰かが大きな声で自分のの名前を口にする。

 思わずその先に目線を向けると、そこに居たのは……褐色の肌、明る目の茶髪にパーマ。一目見ただけで分かるギャルの風貌。


 まっ、また来たの?

 天女目麗綺(なのめれいあ)。俺と同じ2年で見た目通りのギャル。クラスでもその存在感は大きく、中心グループの1人で間違いない。そして、ここ数ヶ月ほぼ毎日のようにこの教室来るようになっていた。


「そいえば琉季? さっきここから出て来た女の子になんかしたの?」

「なんにもしてないけど?」


「そう? なんか顔赤かったからてっきりここで……」

「何もありません!」


 顔赤いって、俺は何にもしてないぞ? 説得してカップルの危機を救っただけだからな? 大体、あんたはそういうのオープン過ぎるんだよ。初めてここ来た時だってさぁ……はぁ、もっと恥じらいを……


「それで? 琉季?」

「なんだ?」

「いつになったら()()くれるの」


 でっ、出たぁ! 初めてここに来て、初めて口に出した言葉もそれだったよな? それから来るたびに開口一番それだよ!


「だから、なんでそうなるんだよ」

「別に良いじゃん、上手いんでしょ?」


「それは知らないよ」

「噂じゃ相当なテクニシャンだって話だし、単純にその腕前が気になるだけなんだけど?」


「どんな噂だよっ! あのねぇ大体、好きじゃない子とするわけないでしょ?」

「ホント固いなぁ」


「麗綺がおかしいんだって」

「名前で呼んでる時点でそういう関係じゃないの?」


「そりゃ麗綺が名字で呼ばれるの嫌だって言うからだろ?」

「そんなの律儀に守ってくれるならちゃちゃっと……」


「しません!」

「いいじゃん。大体さぁ、琉季がダメなんだよ?」


「ダメって?」

「まずその髪の色に髪型、極めつけにその顔。見た感じチャラいって感じなんだもん」


 髪の色と顔は仕方ないだろっ! 生まれつきなんだよ。しかも髪型って……サッパリ好青年カットのはず! 


「そっ、それは麗綺の想像だろ?」

「クラスの皆も言ってるし間違いないでしょ。しかもそんな人が新しい部活? てか同好会作ったら怪しい噂が広まるのは当然でしょ?」

「噂?」


 噂だって? いやいや、俺は皆の役に立ちたいって切実な思いからこの【ボランティア部】を作ったんだ! それに、そこそこの実績だってあるはずだぞ? さっきの女の子然り、



『彼氏に誕生日プレゼントあげたいから、買い物に付き合って下さい』

『いや、それはリスクが高い。2人で居る所を彼氏や誰かに見られて、それが原因で最悪な展開になる可能性があります。つきましては、男心のわかるギャル麗綺を預けますので、彼女と一緒に行って下さい!』


 うん、おかげで最高の誕生日を過ごせた事だろう。



『彼氏が知らない女の子と買い物してた! 浮気に違いないから、仕返しに私も浮気する!』

『ストップ! なんでそれを俺に言いに来るのか……それは置いといて、冷静に考えてみましょう。それは本当に彼氏なのか? そしてそれは本当に浮気なのか。一時の感情で動くのは大変危険です、後々取り返しのつかない事をしでかす可能性があります。本人から話を聞くのが一番ですし、一番多いパターンとしては、近々記念日とかないですか? その為に女友達に手伝ってもらって、君への為にプレゼントを選んでいたとも考えられます。とりあえず冷静に。その後、やはり彼氏さんの様子がおかしかったなら、俺の所に来て下さい? それ相応の対応を考えましょう』


 うん、その後俺の所に来てないから……無事解決したんだろう。



『お願いです。私が()()持ってたの誰にも言わないでください。なんでもしますから』

『いやまさか生徒会長の湯瀬(ゆせ)さんがアレ落とした時は驚きましたけど、俺返しましたよね? 別に何も要求は……ちょっ! なんでブレザー脱いでんですか!? はっ! れっ、麗綺? これは違う! 違うぅ!』


 ……あの時はさすがに驚いた。でも、他の人に拾われてあわや大惨事なんて事は防げたし……うん、良かった良かった。



 とまぁ思い出してみると……ほら見てみろ? こんなにも俺は誰かの役に……


 ―――んっ、んんっ……―――


 って! 


「ちょっと! だから毎回R18指定の動画を大音量で、しかも部室で見るの止めろよっ!」

「えぇー? だって琉季してくれないし仕方ないじゃん?」


「いやいや、だからってここではお断りだよっ!」

「良いじゃん」


「ダメっ! それに見るなら家でじっくり見れば良いだろ?」

「学校だから興奮するんじゃん」


 こいつ……やっぱりとんでもない変態じゃねぇか!


「それにさ? ここ通称ヤリ部屋って呼ばれてんだよ? 夜のボランティア部とか。イケない奉仕活動部とか。だから音漏れたって……」

「そりゃ完全に君のそれが原因だよね!?」

「違うって、だから琉季は皆からチャラ男認定されて……」


 コツコツコツ


 はっ! この足音は……迷える子羊だ!


「麗綺静かに! その如何わしい動画もストップ!」

「えぇ……もう少しだけだかんね?」


 ガラガラガラ


「あっ、あの……ここって、あらゆるお悩みを解決してくれる……」

「はいそうです。俺がここの部長御神本琉季です」


 えっと、眼鏡にロングヘアー。視線は俯き気味で表情もちょっと暗いなぁ……しかも声も小さいし、この子人と話すのが苦手なタイプなのかな? けど、こんな子がここを訪ねてくるなんて……珍しっ!


「毒牙にかかるなよぉ……」


 黙れ麗綺っ! キッ!


「えっ……と、恋愛相談とかでも大……丈夫ですか?」

「もちろん、ボランティア部だからね」

()()ね?」


 その口縫ってやろうか! このギャルめっ! キッ!


「あっ、あの……信用しても良いですか?」

「信用?」

「こんなこと相談しに来たって学校中に広めたり……」


 待て待て、俺ってそんな風に見られてんの? ……いや違うな。あれだ、あそこに座ってるギャルが居るからでしょ? 安心したまえ。


「ないない。そんなことしても俺にメリットなんてないし、あそこに座ってるギャルはあぁ見えて口()()は固いんだ」

「だけってのを強調したのは気のせいかな?」

「はははっ……」


 よし、なんとか緊張はほぐれたかな?


「それで? どんなお悩みかな?」

「えっと……その……はぁぁぁ。よしっ、あのですね……気になる人が居るんです」


「気になる人……」

「はい……」


 つっ、ついに来た? いや、今までの相談もそれなりだったけどさ? 純粋な恋愛相談は初めてだっ!

 こりゃ腕が鳴るぞ? ワクワクしてきた。


 よぉし、やるからには全力! 絶対この子の……


「了解しました。じゃあとりあえず……」



 役に立ってみせるっ!




「お名前聞いても良いかな?」 




読んで頂きにありがとうございますm(_ _)m

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