表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

月のある虚無

作者: Wkumo

 夜中。部屋。同居人がぽつりと呟く。

「お腹が空いた」

 君はいつもそうだなあ、と僕。

「お腹が空いたんだ」

「こんな夜中に食べると身体に悪いよ」

「何か食べたい」

 同居人はゆっくりと部屋を見回す。

「食べるものはないよ」

「空間の欠片でいいから」

「この部屋の空間は君がほとんど食べちゃったじゃあないか」

「じゃあ虚無を食べる」

「虚無なんか食べたらますますお腹が空かないか?」

「わからない、やってみないことには」

「じゃあやってみたまえ。責任は取らないからね」

 同居人は立ち上がり、虚無から虚無を一つ取って口に入れる。

「モグ……」

「どうだい、味は」

「悪くはない」

「でも、美味しくはない?」

「食べたことのない味がする」

「知らない味ってことか。僕も食べてみようかな」

「やめた方がいい、人間が食べるとお腹を壊す」

「人間じゃないんだけど」

「そうだった」

「裏側だよ」

「そうだった」

 僕は虚無から虚無を取ろうとして、すり抜ける。

「あ、駄目だね」

 もう一度取ろうとするが、すかすかと通り抜けてしまう。

「取れないか?」

「掴めない」

「裏側でも虚無は無理なのか」

「同質だからこそストッパーか何かがかかってるのかもね」

「裏側と虚無……同質」

「たぶんそうだ」

「虚無はいくら食べても無くならないから良い」

「案外食べすぎたら無くなるかもしれないぞ」

「どうだろう、やってみないことには」

「君はなんでもやってみる主義だねー。お腹壊さないのが不思議だよ」

「丈夫なので」

「まあそうだね。……僕は何か食べるものを買ってくるけど、何がいい?」

「一緒に行く」

「一緒に来るの?」

「一緒は楽しい」

「そうかあ……。じゃあ来るといい」

「うん」

 同居人は立ち上がり、ととと、と僕についてくる。

 月が出ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 虚無を食べる、つまり何も食べていないことになるのでは? と思いましたが、二人とも人間ではないらしいので、私たちとは違う感覚を持っているんでしょうね。「虚無はいくら食べても無くならないから良…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ