第9話 親と子
お楽しみください
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寄生型モンスター・ツツツ
生物に寄生して、宿主の魔力を増大させる
通常は食事などを摂取しても魔力を回復したり増やしたりは出来ない
しかし、このモンスターに寄生された場合、あらゆるものに宿る微少な魔力を身体に取り入れてしまう
器には限度があり、その容量を越えてしまえば身体は壊れてしまう
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「このときを心待ちにしていた」
君の心を削れば、六英傑から自ら離れてくれると
そのために“彼女のせい“で村を滅ぼした甲斐があったというもの
「本当はすぐにでも君を奪い去りたかった
でも運命がそうさせてくれない」
ダメだ...なんかイヤだ...
「障害があればまた、燃えるような恋路ということ...」
嫌悪...生理的に受け付けない...
「僕たちはそれを乗り越えて!!
ついに結ばれるんだね」
「...でも、完璧に害は消し去らないと
君を縛りつけているお義父様は邪魔だ...」
「...は?なにを...言っているの...」
「ん?あー今ね、魔王軍の雑兵が王都を襲っているはずだよーという話」
イマオウトヲオソッテイル...?
後ろを向くと、王都の方向から黒煙が立ち上がっていた
王都を歩き回る影
門が破壊され、城門門扉に集結していた騎士たちの状態はヒドイ有り様で...
「ごぶっ...」
その影は王城前の避難所・聖堂にかかる
たった1人、その前に立ちふさがり
「失態が積み重なる...!!
オヤジさんに、シベリナに合わせる顔がない...!!」
背にかけた大剣の柄に手を触れる
その甲には太い血管が浮き出て
「...分からないか...!!
お前らごときの命では埋め合わせられないということだよ...!!!」
D級の雑兵も、B級のデカブツも...!!
足りない...!!!
奇声をあげ、向かいくるモンスター
大剣の柄を両手で持ち、身体を捻らせる
ギギググと筋肉の音が響く
「ぐがぁぁぁあ!!!!」
ドンッ!!!と斬り
なぎ払う、モンスターの身体が上下に別れる
六英傑〈剛豪〉のマイヴァイス
その実力は計りしれない
「...マイオ殿はシベリナを見つけ出せただろうか!?
俺も王都の安全が確認出来次第、合流しなければっ...!!」
突然だが、ラセニマ王国 王都を囲む城壁について説明しよう
全長6097km
敵の侵略から護るために造られた
表面は石造りであるが、内部分には門扉に使用された鋼鉄よりさらに分厚く加工された鋼鉄が埋め込まれている
実質、城壁を壊しての侵入は不可能ということ
「どうやらあそこが唯一の出入り門らしい...
さて、どうするか...」
いまからマイヴァイス君のもとへ参戦するか?
いや、どれぼど足止めを食らうか...
せめて方向が分かれば...
...。
いやいや、違っていたらムダ足だ!!...が...
迷子のときに触れたイヤな感じ...いや、あれよりも濃い悪意...
...手がかりは老人の勘、外れていたら...
『コラッ!!マナス、どうしてウソなんかついたの?』
『だってだって...お父さんのおてつだいしたかったから...』
幼い我が子と妻シーファ、そして何気ない日常が頭に浮かぶ
「...お手伝いか...」
マイオは王城へと戻り、王の間へと駆ける
扉を勢いよく開ける
「緊急事態につき、失礼する!!
陛下に伺いたいことがっ!!!」
「奇遇です、こちらもマイオ殿にお伝えしたいと...」
「...!?」
「金庫からお金が消えていまして、シベリナの件に関係しているのかと思い、一応マイオ殿にご報告を」
お金...逃走資金か...?
違う、違うんだっ!!
あの時の3人の言い争い
マイヴァイス君の話で見せたシベリナ様の表情
父や旧知の仲のアニを思う表情
では、逃走に使わないとしたらお金はなにに使う...?
「陛下...娘にウソをつかせたことはありますか?」
この緊急事態に関係ない質問、周囲にいた側近は呆気にとられる
「...ウソ...」
『では、ドー島〈五帝国〉シンカゲの国王へとご挨拶に向かいます』
『すまない、わたしの体調が優れなくシベリナ1人で...』
微かに口角をあげ、王の寝室をあとにする
あの時は持病が再発し、咳や吐血が止まない日々
そうとうシベリナに心労をかけた
後の話でシベリナはシンカゲに訪れていないと聞いた
『シベリナっ!!なぜウソなんかを...!!?』
『...私だって年頃の乙女
挨拶は使者に任せて、遊びたいのですよ』
その日はシベリナを、そして自らも責め立てた
『...やはり、母親が居れば違ったのだろうか...
娘を想うのであれば、死んだ妻への一途な愛を捨てて、新しくめとるべきなのだろうか...』
扉をノック
『陛下、マイヴァイスです...!!
ぜひお耳にいれておいてほしいお話が...!!』
寝室の小さいテーブルに置かれた数々の薬草
『...これは?』
『シベリナがオヤジさんのためにと探しまわった逸品たちです...!!』
『...一体、いつからだ...』
『ドー島へ出向いてからですかね...!!
この薬草ほとんどがドー島に生殖していますから...!!』
手で目を覆い、その手の隙間からは涙がこぼれ落ちる
『...謝らなくては...』
『ダメです!!
シベリナはオヤジさんに隠していた...!!
隠したかったんですよ、心配させないために...!!』
イヤなとこだけ似る...
自分1人で抱え込むところ
自分を棚にあげて、大切なひとには心配かけまいとカラッと突き放すところも...
「ある...」
その答えにマイオは繋がったかのように王のもとをあとにする
「...不思議な方ですね
この状況であのような質問を...」
「そうだな」
「ほっふっほっふっほっふっ!!」
子どもは子どもらしく親に相談すれば良い!!
頼ってくれれば良い!!
その未熟な心体では抱えきれないものを、信頼できる大人に一緒に持ってとおねだりすれば良い!!
勘違いするな
この世界は1人では生きて行けない
そのために親が居る、彼彼女が居る
正しく導こうとする大人が居る
「っ邪魔だぁ!!!」
出入り門へと向かう暇はないと、異質を感じる方向を隔てる城壁を斬り進む
石造りで包まれた分厚い鋼鉄を三角に切り抜く
国のものを壊したと非難するならすれば良い
あとで謝るっ!!!
マイオの妻はシーファで娘はマナスです
孫はマーチで、では義息子でありマナスの夫の名前は...?
のちに出ますので楽しみにしていてください
お時間いただきありがとうございました