第6話 間違いのない選択
お楽しみください
アート島 ラセニマ王国 王都 王城内
「マイヴァイス王国騎士長ぉ!!!」
2人の元に駆けてくる
「どうしたんだ!?」
「はっ、はっ、シベリナ様がっ!!!」
「なにぃっ!!?」
まさか、魔王軍がっ...!!?
脳裏に浮かぶ最悪な事態、それに呼応するかのように筋肉が答え、常時以上の速度で駆けつける
心配は杞憂に終わる
「シ~ベ~リ~ナぁ~...!!!」
鬼の形相で、マイヴァイスは詰め寄る
王女シベリナは反省していないのか、白けた顔でマイヴァイスの方を向く
「っマイヴァイス王国騎士長っ!!!」
止めに入ったのは新人騎士のクイェンナだった
「どっ...どうか、シベリナ様をお叱りにならないでください...」
「...そうか...!!王女が連れ歩いている新人とは、クイェンナ3等...君だったのか...!!」
「シベリナ様のお考えを聞いてあげてはいただけませんか...?」
「...!!」
3等級が王国騎士長、ましてや、特級騎士に意見などあってはならない
その場の空気がはりつめる
「...っ!!クイェンナぁ!!今すぐ謝罪しろっ!!」
「今後に関わるぞっ!!マイヴァイス王国騎士長は思慮深い方だ!!今、頭を下げればっ...」
周りに居た、中堅層の騎士たちが騒ぎ立てる
「謝罪なら後でいくらでもしますっ!!ですがいまは、シベリナ様を...」
「必要はない...!!」
クイェンナの輪郭を冷や汗が伝う
マイヴァイス王国騎士長の逆鱗に触れてしまった...
でも、でも...ボクはシベリナ様の覚悟を知っているから...!!
「引き下がれませんっ!!」
想いが詰まり、引きずった声で物を言う
「...!?、いや、謝罪の必要はないという意味で、理解はしている...!!」
「どーだかねぇー?」
ひねくれた言い方のなかに少しの諦めが加わり
王女の発言により、また冷やつく
「はぁ、とりあえずおやじさんに報告に行くぞ...!!」
「...わかったわ!!おにいちゃんもお父様も踏み倒してやるわ!!」
「クイェンナ3等級騎士のことは不問にする!!あーだこーだと言わないよう...!!」
「「「はっ!!!」」」
「はふぅー...」
腰が抜けたのか、クイェンナは倒れるようにへたれこむ
マイオはいま、迷子になっていた
「どこへ走って行ったんだ?マイヴァイス君は...」
急に形相を変え、ものすごい勢いでどこかへと...
魔王軍が攻めてきた訳ではなさそうだしね
年の功か、感覚で分かるようになった
敵意や悪意が...
城内では、まだ、感じてはないな
...。
「いやしかし、広すぎるなこの城はっ!!!」
少しの違和感...
城内にある一室の前にて止まる
戸を押し、扉を開く
中で聞こえたのは、咀嚼音
バリッ...クチャクチャ...ゴクンッ
バリバリッ...
その音の主はマイオの気配に気付き、振り返る
「んっんっ、あっ、すみませんっ!!何かご用ですか...?」
「あー、ゴメン!!食事中失礼しました」
「いえいえ、昼食べ損ねてしまって
ホント傍迷惑ですよ!!魔王軍のやつらは...!!」
バツが悪そうにマイオはそそくさと部屋をあとにする
もぐもぐと...
「...失礼シマシタ...でハ、話ノ続きヲ...エロアイズ様...」
男のうなじ部分がぞわぞわと蠢く
王の間にて
「陛下、マイオ様が入室許可をと...」
「あっ!!!置き去りにしてしまった!!!」
あせあせとマイヴァイスは国王に、そして国王は許可する
「すみませんでしたぁ!!!」
初めに出会った時と同じように、地面に頭を擦り付ける
「大丈夫、大丈夫
それよりも、急用は...わたしに手伝えることかい?」
「いえ、解決済みです!!
いらぬ心配をお掛けしてしまい...!!」
頭を下げる必要はないと手のひらを前に出す
王の間には国王とマイヴァイス、途中で入室したマイオのほかに、女性が居た
王女シベリナだ
「よい機会だ...マイオ殿に、シベリナ護衛に際してで気をつけてほしいことを」
「私は危険物か何か...?」
「あぁ、確かに危険だな
民に真実を伝えるのは却って危険なのだ...」
「それが間違っていると言っているの!!
今すぐ魔王軍による被害と状況を、真実を伝えるべきだわ!!
避難は早いほうが絶対に良い!!」
「分散すれば護りきれない...!!
準備が完了するまで、下手に動揺を誘うべきではない...!!」
1つの疑問だ...
なぜ魔王軍はいまのいままで攻めて来なかったんだろうか...?
世界を掌握出来るほどの力を持っているはずだ
...マイヴァイス君は、とてつもなく強いのか
魔王軍が手をこまぬいているのは、その実力者が6人、そして剣聖とやらも居るから
安泰...でもないのか...
脅威をいまもなお、払えてないのは魔王の存在
一触即発、そういう...
「準備、準備って現状はなにも変わっていないじゃない!!
あとひと月もすれば、おにいちゃんはG5へと召集される
その条件として、騎士を派遣すると結んで早3ヶ月、動きは無いのよ!!」
「その件は、五帝国へと問い合わせている...」
意味の分からない単語が飛び交っている
G5?五帝国?
準備ってなんだ?
「パニック...そうよ、パニックが起こる
戦いながら半狂乱の国民を護れるはずがない!!
どっちの判断が正しいか考えれば分かるでしょ!!」
話がまとまらない
もし、今この時に攻めてくれば、対応出来るのだろうか
「人質のこともある
やつらの琴線がどこにあるか分からない以上は下手な刺激は避けなければならない
シベリナを渡さないことが既に触れているかもしれんのだ
皆殺し、反撃の灯火を消さないために、恐怖を重ねるべきではない...!!」
...あぁ、ダメだ
王女さまは納得していない
陛下自身も葛藤している
マイヴァイス君は...
「マイヴァイス君、何を隠しているんだい?」
マイオの言葉に国王とシベリナは驚きつつも、マイヴァイスを見る
“違うのですっ!!!“
「...報告すべきか、迷いましたが...、
ソーラェ島のラガコ村がエロアイズによって壊滅されました...!!」
弱肉強食、それは紛れもない摂理
だが、魔王軍の行為は程度が違う
当たり前にしてはいけないのだ...
「...簡っ単なことだったのよ...
私が...私がぁ、私だけで済んだことなのに...」
『アート島内ではもう、侵略行為はしないよ。
シベリナちゃんに嫌われたくないからねぇ~』
先ほどまでの勢いは失われ
虚勢のための我、強さはいつまでも続かない
国王の葛藤
国民を犠牲にするか、娘を...犠牲にするか...
「...間違って...いたのか...」
「間違いになんかさせません...!!!」
国王の霞がかった瞳が光により晴れてゆく
希望があるとすれば...
間違いなく...
「情報は役に立ちましたか!?
"剣卿"殿...!!!」
「ああ...!!!」
うだうだ野郎が多くてすみません
考えがなかなかまとまらなくて、言いたいこと言わせてしまいました
嫌いにならないでっ!!
これからも登場するので
お時間いただきありがとうございます