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老剣士、家を建てる。  作者: フクフク
おじいちゃん頑張る編
3/25

第3話 家を建てようか

少し長くなってしまいました

お時間あるときに読んでもらえると嬉しいです

では、お楽しみください

 

 墜ちるドラゴンとマイオ



「うぐぅっ!!?」


 落下中に地面?に激突した


 痛ぁ...くない?

 斬った後のことを考えていなかった。あの巨体がこんな街中に落ちれば大変

 着地も思考の外、なりふりで飛び出すのは止めよう。若くは無いしね


 ひとまず、この結界だ。助かった



 マイオは体勢を整え、自分とドラゴンの死骸がのっている薄墨色の膜に触れる

 人々の目にはどうやらドラゴンの死骸とドラゴンを斬ったおじいちゃんが宙に浮いているように見えているらしい

 どちらかというと天に薄いガラスが唐突に出現してそこにのっている。光の加減で境界が認識出来なくて浮いているように見えると



 街を覆うほどの大規模な防御魔法の展開されていた

 ブラック・ドラゴンのファーストインパクトにより、この街の魔術師は防御反動でしばらく意識混濁。覚めたとしても魔術式は即座には組めない


 結界により、街の外に閉め出された守衛が疑問に思う

 そんなおり、マイオの目の前に宙を浮く2人の子供が現れる



「おじいちゃんっ!!何者!!?」


 目を輝かせながら、1人の少女はマイオに近付く

 マーチよりは上だが、誰が見ても幼子。ひとりは無邪気に笑い、もうひとりはオドオドと身体以上の大きさの杖を使い姿を隠そうとしている



「お..お姉ちゃん...初めてあっ..会ったヒトに..失礼..だ..だよ...」



 お姉ちゃんと呼ぶということは、2人は姉弟なのだろうか

 こんな若い?幼いか。魔術師も居るんだな


 と、マイオは思っているが本質はそこではない

 若い魔術師は多いが、ここまで魔術式の構築速度が逸脱している魔術師は若いどころか熟練の魔術師ですら到達することは難しい領域

 マイオが街に入り、建物を伝いながら標的に向かう

 高い建物から飛び上がり、空中の標的の背後へ

 その間に魔術式の構築、結界の展開




「まぁ良いや メルたちのおつかいはブラック・ドラゴンの討伐および回収だから」


「ほ...本来でしたら...ボクたちがと...討伐する手筈でしたのに...お...お手数かけて...さらには街の皆さんに...ご...ご迷惑を...」


「そんなことはいいから、早く持って帰ろー!!」


 少女がそう言うと、ドラゴンの死骸に魔術式が付与され宙に浮く

 キズ口からの出血した血一滴すらもキレイに回収。血液が球状にまとめられる



「じゃあね、おじいちゃんっ!!また会えたら良いねー」


 ドラゴンの死骸で手一杯な姉に代わり、少年は杖に付与した魔術式を自らと少女の身体、死骸に移す

 身体が光ると一瞬にして姿を消した

 そして結界が解かれる



「おっとっとぶるぶるぶるっ!!」


 着地した衝撃で身体の肉という肉が揺れる

 ふしぎな光景に息を忘れていた民衆は思い出したように吸い、緊張がこぼれだす



「「「「うわあぁぁぁぁぁぁあん!!!!」」」」



 街の人々は解放されたように抱き合い歓喜の叫びを上げる

 街を救った英雄は隠し切れない巨体を小さくしながら、そそくさとその場を離れた




 ギルドの前で呼び止められる


「マイオさんっ!!はぁはぁ、良かったぁ、無事でしたか」


「守衛さんも無事で何よりですよ」


「いやぁ、負傷者を運んでいたら急に結界が張られまして、大変でしたよ!!」


 大口を開けて、2人で笑いあう



「賞金と報酬!!期待しといてくださいよー 俺が領主様に熱弁しますから!!」


 鼻息を荒らげ胸を大きく張らしながら、意気揚々と宣言

 ギルド前にて扉のドアノブに手をかけようとしたが、守衛がよこどって扉を音をたてて開ける


「"剣卿"の凱旋だぁーー!!」


「「「「うおぉぉぉぉぉぉお!!!!」」」」



 その一言でギルド内が湧きに湧いた







 街は紅く染まる

 街はいつもより賑やかで


「ふぅー、疲れたな..」


 戻ったら世代関係なくの質問攻め、受付での申請などなど


 もっと老体を労ってほしいもんだ

 家に帰れば、シーファとの優しい時間が待っている


「ただいまぁ!!」


 年甲斐もなく、笑顔で家のドアを開く


「おかえりなさいませ」


 そこにはイスに座っている黒髪ロングの女性と屈強な男がその背後に立っていた


 えっ...とぉ、誰?...



 キョトンとした顔を見て悟ったのか、女性は名乗り始める


「ご挨拶が遅れました、わたくしはこの〈日の街〉サンシティにて領主を務める、カヴリナ・ホットスポットと申します」



 カヴリナ...ホットスポット...

 ホット...スポット...あっ!!


「ベイさんの娘さんかぁ!!」


「はいっ!!ベイロード・ホットスポットの長女カヴリナです!!」



 ベイロード・ホットスポットはこの〈日の街〉サンシティのりょう....


「...領主...?」


「はいっ!!父が病床にふしてしまい、ゴタゴタしていたのでご挨拶に時間がかかってしまい...」


「えっ...と、領主様がなぜこんな町外れに...?」


「やめてくださいっ、わたくしはあくまでマイオ殿の友人であった父の娘として来ましたので、堅苦しいのは、それにマイオ殿にそんな態度をとらせたとお父様に知れれば勘当を食らってしまいます」


「そうですか、いや、そうしてくれるとありがたい ...本当に気付かなかった...美しく逞しく、大きくなったな」


 その言葉に顔を赤らめながら


「最後に会ったのが15年も前ですよ マイオ殿もお父様も子ども扱いしないでくださらない?」



 妻シーファがお茶をマイオの前に出す


「ありがとう それで、なぜウチへ...?」


 それを聞いたカヴリナは後ろを向き、護衛に命じる

 護衛の男は命じられた通りに大きな荷袋をテーブルにのせた



「これには、3億、入っております」


 お茶を噴き出す



「ゲホッ..ゴホッ..さっ、3億ぅ!!?」


 マイオは咳き込み、シーファはふらつく


「はい 今回の件での賞金と報酬でございます」


 賞金と報酬...?どこかで...


「賞金はブラック・ドラゴン、報酬は今回、臨時クエストでしたので同クエスト報酬の倍となっております」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 賞金と報酬


 B級以上のモンスターには賞金がつけられている

 賞金はそのモンスターにトドメをさした者へと国から賞与される


 報酬はクエストクリア時に商業組合ギルドから支払われる


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「少しでも目的の足しになれば...」


 足しどころか、一等地に家を建てられるよ!!

 ...家を...建てる...



「ですが、これはオマケみたいなものです 今日、お伺いしたのは"剣卿"の復活がもたらす、一大事についてお話に来たのです」


「...そのさぁ、"剣卿"? それってわたしのことかい?...」


 周囲に言われていたが、圧が凄くて聞くに聞けなかったんだよな



「もちろんです!!"剣卿"とは数々の偉業を成し遂げたマイオ殿を称えた通り名でございます」


「数々の偉業って、なんのこと...?」


「.........へ?」


「...へ?」


 しばらくの間、時が止まったかのような沈黙

 カヴリナは咳払いをする


「例えば、ゴールマン100匹討伐とか!!」


「あー、あれはお世話になった村にちょっかいをかけてきたから、やったまでで」


「そんな簡単なことではないのですよ!!ゴールマンは1匹で国家を揺るがしかねないモンスターですよ!?」



「では、国境付近で猛威をふるった巨大食人植物を斬り倒したことは!?」


「そんなこともあったなぁ いやぁ、あれは大変だった

 シーファが陣痛で苦しそうだったから、街まで駆けたもんだ」


「思い出の部分が違うっ!?当時、貴重な道を巨大食人植物に占拠されて、世界の流通が滞り、世界は大不況に陥っていたのですぅ!!」



 息を荒くしながら


「世界を暗黒に染め上げた〈魔霆〉を斬り下したことは...?」


「あれは、ただのケンカだ」


「はい、ですよねっ」



「他にも色々とありますが、これ以上は心がもたないのでやめておきます

 ...ですけど、世界は今、その反則級の力を欲しているのです」


 カヴリナの目が据わる


「現在の世界情勢は、首の皮1枚で繋がっている状態であります

 〈魔霆〉の消滅、"剣卿"の引退...それから、わずか3,4年のこと、4人の魔王が突如として台頭してきたのです」


 魔王...?黒トカゲといい、20年前には聞かなかった名前だ



「魔王の出現は、世界を変えるほどの悪意を含んでおり、そして、現在、一触即発の危機に陥っています」


「...それは、大変だと思うけど、家族に影響がない限り、わたしは..」


「そこなんです!!魔王たちも一筋縄では無いようで、出現してから2年ほどは硬直状態でしたが、1人の魔王が討たれたことによって均衡が崩れ、3人の魔王は宣言し、進撃を開始したのです」



 いずれは...家族にも...


「出来れば、マイオ殿には静かに余生を謳歌してもらいたいが、今回の件で"剣卿"の復活が世界へと轟き、明日にでも、大国からの使者が訪ねるでしょう...」



「...そうか...」


 マイオは妻の方を見る


「また世話をかけるな、シーファ」


「慣れたものですよ、あなたはいつでも私には出来ないようなことが出来る、羨ましくて、でも、そんなとこが憧れですよ

 出会った日から、ずっと...」


「わたしも、そんなわたしを支えてくれるシーファを大切にしたいと思っている

 そして、そんなわたしを愛してくれる家族を

 ...だから、決心したよ!!!」


 美しい愛の形にカヴリナは涙を浮かべる



「家を建てよう!!」


 涙が引っ込む


「世界中から一流の職人を集めて、家族を護ってくれる、最高の家を造ろう

 ただ、マーチと温かく暮らす未来に魔王などというヤカラは必要無い...!!」




 孫と暮らす2世帯住宅への火蓋はきって落とされた...!!!



ということで家を建てるらしいです


お時間いただきありがとうございます

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