ブレイバー
「まったく、なんなんだよ~」
今日、僕は仲良しのたける君とケンカをした。理由は、今考えるとしょうもないことだった。『昼休みのドッヂボールで使ったボールを、どちらが片付けるか」だった。
たける君とは、いつも一緒に帰っていた。だけど今日、たける君は先に帰ってしまった。
「つまんないな~」
一人で通学路を歩いていると、道の端に木の枝が落ちていた。まっずぐキレイで、先の方へ向けて細くなっている。
「こ、これは……」
僕はゆっくりと持ち上げて、
「勇者の剣だ!」
頭の上に掲げて、僕はぐるぐると木の枝、いや、勇者の剣を振り回した。
「これはスゴイ……」
僕はあらゆるカッコよさを求めて、剣を振った。ヒュンヒュンといい音を立てる。しばらくすると、
「あれは、ちくちくのやつだ!」
茎の部分にトゲがたくさんある植物を見つけた。この季節になると、花が咲いている部分が白い綿みたいなものになっていた。
「いつも危ないんだぞ! くらえ!」
剣を振って攻撃しようとしたとき、僕は止めた。この剣が折れてしまうのではないかと思ったのだ。
「うーん……そうだ!」
僕はその白い綿の部分を狙って、突くように剣を出した。つんつんとやっていると、白い綿はふわふわと小さくなって、夕方の空に飛んで行った。
「ふっふっふー、これでどうだー」
僕は肩に剣を担ぐようにして、まるで悪者をたおした後のヒーローのように歩いて離れた。
家に向かって歩いていると、今度は電信柱の近くに、茶色の物体があった。学校では言ってはいけないと言われている、あいつだ。
「なんでお前がいるんだ!」
知らないふりして通り過ぎればいいと思ったが、どうにも無視できない性格なんだと、今日の昼休みのことを思い出しでいた。
「こ、こいつで倒してやる!」
僕は剣でつんつんとそいつに攻撃するけど、相手はビクともしなかった。余裕な表情をこちらに向けている気さえした。
「し、仕方ないよな……」
僕は走って、逃げるようにあいつから離れた。
「はあ……はあ……はあ……」
勇者の剣でも太刀打ちできないとは、やはりあいつは強敵だった。下を向いて、僕は呼吸を整えていく。
「ど、どうすればいいんだ……」
顔をあげると、そこには、たける君の後ろ姿が見えた。
「た、たける君がいる!」
僕は追いつけ追いつけと走った。そして、指で右肩をつんつんした。
「な、なんだよ! お前とは絶交したはずだぞ!」
「それよりもだ! お、お前は、あの強敵を見なかったのか!?」
「強敵……? あ、あれか! 電信柱のやつだろ!」
たける君の目が大きく開いた。
「あれ、どうにかしなきゃいけないんじゃないのか?」
「俺たちにできるのか?」
「確かに……俺にはこの勇者の剣しか武器がない……」
「だ、大丈夫だ! なんとかなるさ!」
そして二人で、あいつを倒すために戦いへと向かった。
「ちなみに、なんだけど……」
「どうした、たける君?」
「お前はその勇者の剣で、あいつをつんつんしたのか?」
「ああ、したよ」
「……俺に近づけるなよ」
「えー!」
「そういうとこだよ!」
読んでいただき、ありがとうございました。