クエスト
「いらっしゃいませ!ってなんだネワか。」
短髪の女の子が元気よく愛想を振りまいたと思ったらこれだよ。
「なんだ、じゃないよエピン。もうちょっと頑張れよ。」
僕は短髪の女の子に苦言を呈した
「えー。だってネワだしー?いいかなーって。」
エピンと呼ばれた女の子は僕の顔を見ずに言い放つ
「仮にも僕はお客さんだぞ……?いやまあ、昔からの馴染みだからいいけどさ……。」
「ごめんごめんー。んで?今日はなんの用?」
「あ、うん。そうそう。ほら昨日ギルドマスターに言われた緊急クエスト?を受けに来たんだけど。」
「えー!まじー!あれ受けるの!?」
目をかっぴらいて僕に向ける
整った顔立ちのその挙動に少しだけドキッとした。
「う、うん、あの、顔近いからやめて?」
「ねーねー!ネワが受けるんだって!やったねぇ!おじいちゃん!」
何事も無かったかのように僕から離れて隣に座るご老人に言った。
「……ネワかい。」
「は、はい。マスター。」
「……行くのか?」
「はい。」
「……そうか。頑張れよ。」
「……はい。」
ここ、ギルド“アントニン”では様々な仕事が受けられる
私のペットを探してだとかどこかにあるキノコを探してきてだとか、本当に様々だな。
そして、なんと言っても1番の醍醐味は狩猟である。
といってもどこかの世界みたいに大型な怪物を狩ってこいだとかそんなんじゃない。
ただの生け捕りのような物だ。
生け捕りにされた生物は売りに出され、その売値の1/3が達成者の報酬になる。
上手いこと纏まってるものだと関心する一方本当に1/3が手元に来てるのかと不安になることがある。
どこの世界でも胴元が得をするのは一緒なのかもしれないと思うがそれはまあ仲介手数料だったりなんだったりで色々あるのだろう。
とまあ、ここまでは表向きの仕事の話。
本題はここからだ。
「はいこれー!サインしてね!」
エピンが僕にクエストの内容が書いてある用紙を差し出してくる。
「あ、うん。待ってね。ペンを……。」
出す、と言おうとした時
「ここにある。受け取れ。」
マスターがそう言う。
「あ、ありがとうございます。えっと……。」
「ここだ。下の方に。」
署名の欄を指差しで教えてくれる。
「あ、はい。」
サラサラとペンを動かす。
機械の国といってもこういうところは手動なんだなといつも思う。
「それで、今回の依頼って何かな?」
サインを終えてエピンに向き直る。
「んー……端的に言うと“害虫駆除”かな!ていうかその用紙に全部書いてるじゃん!見なよ!見ないでなんでサインしてるの!」
「ご、ごめん。とりあえず差し出されたらサインしてしまう癖が……。」
「気をつけてね!そういう人がよく詐欺に引っかかるんだから!」
「気、気をつけるよ。ありがとう。」
「いいけど別にー!はい!とりあえず内容を見る!」
「あ、うん。どれどれ……。」
そこに書かれていたのは…………。