日常と
目が覚めた。いや、正確には“起こされた”に近いだろう。
「おはようございますマスター。」
機械的な声が耳に入る
「お、おはようメディ。」
僕は、僕を抱き抱えている女の子に挨拶をする。
「体調はいかがですか?」
メディと呼ばれた女の子は僕に質問をなげかける
「ん、うん。大丈夫。とりあえず“降ろしてくれる”かな?」
「……申し訳ありません。」
ゆっくりと僕をベットの上に降ろすと深深と頭を下げた
……僕を起こしてくれるのは正直ありがたいが、起こすときになぜいつもお姫様抱っこをするのだろうか。
……なにかプログラムにでも支障が……?
いや待てそもそもなぜ僕はこれを造ったのかから掘り下げないとダメになる。
それはしんどい。面倒。
とりあえず目が覚めてしまったからには動かなければ。
「マスター。」
僕が考え事をしているとメディが呼び掛けてきた。
「あ、うん。何かな?」
「朝食の準備が出来ております。
本日の予定ではクエストに向かわれるとの事ですが。」
「……。そういえばそうだった気もする。
ま、まあ、とりあえず先にご飯を頂くよ。」
「畏まりました。それではテーブルにお持ちします。」
―
「ご馳走様でした。」
朝食を食べ終えて決まり事のような言葉を発する
「お粗末さまでございました。」
メディが僕の後ろで応えてくれる
「メディは食べないの?」
「私は先に頂いておりました。」
「そっか。そういえばそうだっけ。」
メディは僕が造った“万能型自己学習人造人間”平たくいえば「メイド」だ。
造った時はそれはもう大変だった
お風呂は壊すし卵は焦がすし挙句の果てにパンを黒ずみにして出してくる始末。
ただ、この街、ドヴォルザークには様々な機械が置いてある。
月に1回、僕の近所で造ったものを取引するバザーが開かれるのだが
そこで見つけたのが“自己学習装置”だった。
値段は50000Cだったのでとりあえず買って付けてみたのだ。
そうしたらなんということでしょう。うちのメイドが万能に!とはならず。
そりゃ自己学習だもんな……。
とりあえず教えるか……となって数日後。
「……まさか僕の好みまでも記憶するとは……。」
食後のコーヒーに入れる砂糖の量や飲める暑さまでも全て記録されてるみたいだ。
「マスター。この布団に付いたシミは……。」
「わぁぁぁ!やめて!それ以上はやめて!」
とまあ……こんな感じで過ごしている。
閑話休題
「さて、そろそろ行ってくるよ。」
身支度を終えてメディに一言
時刻は10:30を指していた
「行ってらっしゃいませ。マスター。」
メディはそう言うと深々とお辞儀をして僕を見送った。