1話 その名をダル・ガリア
魔物に襲われて間一髪のところで謎の男に助けられたイリスはその男に連れられ森を後にした。
「そう言えばまだ名前聞いてなかったな、俺はダル・ガリアお前は?」
「私はイリスです・・・・・・」
「いい名前だな!」
「ありがとうございます・・・・・・」
男はイリスが悲壮感たっぷりにしているのにそれを気にせず話しかけてくる、イリスは名前だけ答えただけであとの会話は全て沈黙していたそれほどまでにイリスの心の傷は大きい、そしてしばらくすると開けた場所に着いたそこには1軒の大きな二階建ての家が建っている。
「ここが俺の家な!」
「・・・・・・」
「もっとなんかこうリアクションないのかよ!」
「大きいですね・・・・・・」
「お前帰るところないんだろ? なら今日からお前の家はここな」
「えっ!?」
「はい決まり! とりあえず中に入って」
ダルがそう勝手に決めイリスは言われるがまま家の中へと連れていかれた。
「散らかってるけど、まあ気にすんな!」
家の中はものが色々散乱していてとても綺麗とは言い難い、そして少し埃っぽいどうやら掃除あまりしていない感じだ。
「さて! イリスに最初にやってもらう仕事はこの家の掃除な! 俺は少し用があるから出かけるけどできるよな?」
「・・・・・・」
「まあ、頼んだ後よろしくなー!」
そう言ってダルはイリスを一人家の中に残しどこかへ出かけて行った残されたイリスは呆然と家のかなに立ち尽くす。
「なんでこんな事に・・・・・・」
イリス状況の変化についていけてないようだそれもそうだろう色々なことが起こりすぎてる。
「・・・・・・」
イリスはその場にしばらく立ち尽くしていたが、ダルに言われた通り掃除を始めた。
「何もしないよりはマシよね・・・・・・」
そう自分に言い聞かせ、今までの悲しみを思い出さないようにかイリスは掃除を黙々と続けた。
とにかく部屋は散らかっておりかなりの重労働だイリスも掃除ができない訳では無い母から色々なことを教えてもらいそれなりにできる、しかしダルの家は広い。
「大変ね・・・・・・」
そうして黙々と掃除を続けた人は何かに没頭するとそのこと以外のことをあまり考えなくなるという、イリスも例外ではなく掃除に没頭しているおかげでこの時ばかりは悲しみも少し消えていた。
そしてかなりの時間を費やし掃除を終えた散らかっていた部屋は綺麗さっぱり変貌を遂げ埃っぽさはもう無くなっている。
「ふぅ、終わった」
イリスは綺麗になった床に座り込む、そしてぼーっとしていた窓から心地よいそよ風が吹き込みイリスは掃除の疲労もあったのかその場で眠ってしまった。
イリスが目を覚ますとベットの上に寝かされていた、窓の外から綺麗なオレンジ色の夕日が差し込んでいる。
「あれ、私いつの間に?」
そしてベットから出るとあのボロボロの服は綺麗な花柄のワンピースに変わっている。
「あれどうして!? あの後どうしたんだっけ?」
すると急にお腹が鳴った、朝から何も食べていない、あんなに悲しいことがあってもお腹はすく。
「はぁ・・・・・・」
イリスはベットから起き上がり部屋の扉を開け外に出た、ここはどうやら二階みたいだ、部屋を出て廊下の先にある階段の下から何やら美味しそうな匂いが漂ってきた。
イリスはその匂いに釣れれ階段を降りていった。
「おお! 起きたか、今ちょうど飯が出来たところだ」
その先にはダルがいた、フライパンを持ってエプロンをしている。
「二階の部屋に運んでくれたのはダルさんですか?」
「ああ! 帰ってきたらイリス寝てたからな! それと部屋綺麗にしてくれてありがとな!」
「いえ・・・・・・ 頼まれたので」
「腹減ったろ? 飯にしよう!」
ダルはキッチンから出てきて家の真ん中にあるテーブルへと向かったテーブルの上にはダルが作った美味しそうな料理が並んでいる。
「どうした? 早く座れよ?」
イリスも言われるがままテーブルへと着いた。
「うん、我ながら上出来な料理だな! イリス冷めない内に食べろよ!」
イリスは料理を食べ始めたダルも同様に。
「おいしい・・・・・・」
「だろ? やっぱり飯は一人で食べるより人と食べた方が美味いな!」
その言葉にイリスが反応する、どうやら家族のことを思い出しているようだイリスの目に涙が溢れる。
「父さん・・・・・・ 母さん・・・・・・ ひっっく」
「イリス・・・・・・ なんか悪い」
そう言ってダルがイリスの傍にやってきたそしてそっと彼女を抱きしめ頭を撫でる、イリスは更に涙が止まらなくなった。
そんなイリスを黙ってダルは優しくそっと抱きしめ頭を撫でる、イリスはその優しさにしばらく身を委ねたイリスの心はダルのおかげで何かスーッとするような感覚になっていた。
「もう大丈夫か?」
「は、はい・・・・・・ なんかすみません・・・・・・」
「いや気にするな、そのあれだ辛い時は誰にでもすがっていいんだ、自分を追い詰めるな」
ダルはイリスが落ち着いたのを確認し席に戻りまたご飯を食べ始めた。
「ほら、早く食わねーと冷める!」
「は、はい」
イリスはダルのおかげで少し落ち着きを取り戻しまた食事に戻った。
「ダルさん料理上手なんですね」
「まあな! ずっと一人だったし! まあでもふるまう相手が出来て良かったわ!」
二人の間には先程までの悲壮感はなくなっていたイリス自信ダルのおかげで少し心が楽になったのだろう。
そして二人で夕食のあと片付けをしているとイリスがふと自分が着ているワンピースのことを思い出した。
「ダルさんあの〜 これはどうしたんですか?」
「それは買った! 気に入らなかったか?」
「そんな事はないですよ! でもどうやって私着替えたんですか?」
「あぁ! それなら俺が着替えさせたぞ」
「えっっっ!!」
「いやイリス起きなかったからな!」
「そんな・・・・・・」
イリスの中で恥ずかしさが込み上げてきていた、男の人に下着姿を見られるなんて生まれて初めての事だったのだそれに寝ているときだなんてよそうだにしない出来事だったのであろう。
「み、みたんですか?」
「なにを?」
「そ、その裸です・・・・・・」
「あぁ〜! だって服ボロボロだったしな!」
イリスは顔を真っ赤にして俯いている、この男なんてデリカシーがないんだそんなイリスを見てダルが。
「大丈夫だ! 俺から見ればお前は子供みたいなもんだから! 別に気にすんな」
「なっ!?」
さらにデリカシーの欠けらも無い言葉をダルは発する、イリスはまた涙を溜めていた。
「えっ! 俺なんか悪いこと言ったか? すまん! そんなに裸を見られるのが嫌なんて! 頼むから泣くなよ!」
「ダルさんのバカ!」
イリスはそのまま階段を駆け上がり先程いた部屋に戻って言ってしまった、残されたのはダル一人。
「あちゃ〜 あの年頃の娘は難しいなぁ、はぁ」
そう言って一人ためいきをついていた悪いのはこの男なのだが。
一方部屋に戻ったイリスはベットに潜り込んでいた。
「裸を見られてしかも子供みたいなもんなんて! 酷い!」
イリスは今年で16になる、ダルは見た感じもっと年上だがそれでも年頃の女の子にさっきの発言は堪えたようだ。
「そう言えばダルさんは何歳なんだろう」
そんな疑問が頭の中を過ぎっていた。
十代には見えないかと言って三十代でもない二十代前半だろうか。
「私とそんなに変わらないのに! 私のことを子供みたいななんて!」
そう考えていると余計に腹が立つようだ。
そんなことを考えているイリスがベットでジタバタしていると部屋がノックされた。
「さっきは悪かった! 悪気はないんだ」
「・・・・・・」
ダルが謝りに来たようだ、しかしイリスは黙ったままかなりご立腹。
「ほんとに悪かったって! だから明日も仕事頼むな?」
ダルは申し訳なさそうに扉越しにそう言っている。
「・・・・・・ はい分かりました」
イリスは渋々返事をしダルを許してやることにしたようだ。
「良かった! じゃあまた明日おやすみ!」
そう言うとダルは一階へと戻って言ったイリスはもうどうでも良くなりそのまま寝た。
こうしてイリスとダルの共同生活が始まった。