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はかれた私

作者: ハイド


 「はかられた私」



 『君は僕の優しさに胡座をかいていた』


 私は帰り道ずっとこの言葉を繰り返し呟いていた。

 確かに私は彼、誠司さんの優しさに胡座をかいていた。

 誠司さんの優しさはとても心地よくて、ずっとこれからもこの多幸感は続くのかと思うと胸が高鳴った。 が、それはあっけなくたった三ヶ月しか続かなかった。


 「何がいけなかったんだろう?」

 私はそれまでの行いを振り返ってみた。しかし何も心当たりはなく、自我を出したり、傲慢な態度を取ったりした覚えは皆無だった。


 「もっと尽くせば良かったのかな?」

 でもそれはなにか違うような気がした。少なくても誠司さんは何か見返りを求めるような人ではなかった。少なくても私の知る限りは---。


 結局何も答えが見つからず、問いは堂々巡りのまま自分のアパートに着いてしまった。部屋の灯りを点け上着をハンガーに掛けながら私はずっと考えていた。そして、思い出したように誠司さんから渡されたプレゼントの中身を開けてみるとそれはオルゴールだった。それは二人で一緒に観た映画「リメンバーミー」のキャラクターのあしらわれたオルゴールでゼンマイを回してみるとEDのリメンバーミーの音楽が流れてきた。


 『 リメンバーミー 

   目を閉じて聞こうよ メロディー

   永遠に続くよ この愛


   目を閉じて聞こうよ メロディー 

   永遠に続くよ 


   リメンバーミー 忘れはしない

   リメンバーミー 夢の中で


   離れていても いつでも会える

   二人を繋ぐ特別な歌     』


 私は混乱していた。確か私は別れを告げられたはず。なのにこんなメロディーのオルゴール送るのはなぜなのか?もしかしたら何か特別な意味があったのかも知れない。私は誠司さんの言葉を思い出した。


 『君は僕の優しさに胡座をかいていた。それでは僕の人生を共に歩むには足りないんだ。君は思い出さなくてはいけない。もっと大事なことを』


 私は結局「もっと大事なこと」を思い出せないまま眠りについた。


 翌朝日曜日は目覚ましを掛けてなかったこともあって、起きたのは11時を回っていた。何となくスマホを見ると高校からの友達で今でも付き合いのあるあゆみからLINEが入っていた。

 「久しぶり!急だけど6月23日て空いてる?」

 「久しぶりだね!確かに急だけどその日は空いてると思うよ」

 「OK!そしたら加奈子は出席と。決まりね!」

 「ん?何の話?同窓会?」

 「違うよ!うちの結婚式だよ!」

 「え?ウソ?そんな話全然聞いてないよ?相手は誰?」

 「誰だと思う?」

 「分かんない!まさか高校の時付き合ってた高橋君?」

 「まさか!高橋君とはとーーーっくに別れたよ。正解は従兄弟のお兄ちゃんでした」

 「え?従兄弟のお兄ちゃんて確かイケメンで背の高い?」

 「ピンポーン!なんかうちが失恋したときにたまたま親戚の寄り合いがあって久しぶりに会って話したら色々相談に乗ってくれてね。でなんか、お兄ちゃんもその頃彼女と別れてて、なんか親戚中が盛り上がってじゃあ結婚する?みたいな流れ」

 「そうなんだね。。。私は昨日振られたけどね」

 「あら?まあ加奈子可愛いからすぐ次見つかるよ。もしうちの結婚式までに見つからなかったら、式の二次会で見つければいいかもね」

 「そうだね。そうするよ。あ、それからご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに」

 「うんうん。あ、ありがとう。末永く幸せになります」

 「じゃあ招待状送るから待っててね。あと式の余興も楽しみにしてるから」

 「うん、待ってる。余興かあ。まあ考えておくよ」

 「それじゃまたね」

 そういうとあゆみはでっかいハートのスタンプを残して消えて行った。

 

 あゆみが結婚が結婚するんだ。しかも従兄弟と。

 そう言えば従兄弟いたな、とふと私は思い出した。

 父方の親戚はなぜか女の子ばかりだったが、何度か母方の親戚に会った事を私は思いだした。それは母が父と結婚する際、割と実家と揉めて半ば飛び出すような形で父と結婚したので、ほぼ断絶状態であったが、私からみて母方の祖父が病に倒れて母方の親戚が病院に集まったときだったと思う。もう十五年前くらいの事で私はすっかりその事を忘れていた。昏睡状態が長く続いて私と母は何度か病院にお見舞いに行った。そこで二、三回その親戚の少年(と言っても私よりも四つは年上だったが)と何度か顔を合わせて話をした記憶がある。そして最後に私とその少年は病院の屋上で話をした。が、何度思いだそうとしても思い出せなかった。何かとても大事な話をしたような気がしたけど、私は思い出せなかった。

 私はふとオルゴールのゼンマイを少しだけ回してみてた。

 

 『離れていても いつでも会える

  二人を繋ぐ特別な歌』


 私は不覚にも微睡んでしまった。

 

 夢の中の私は小学生だった。誰か顔の分からない少年に手を引かれ階段を登っている。そして屋上の扉を開けるとたくさんのシーツが干してあった。少年は「おじいさまに言われたんだ。お前は加奈子を幸せにしてあげなさいって」

 そして少年は笑って言った。いつか二人が巡り会ったら……

 最後の言葉を聞き取れないまま私は起きてしまった。

 もう少しで聞き取れたのに。

 

 私は夕食を済ましてから誠司さんと出会ったときの事を思い出していた。

 それはある婚活パーティーだった。

 会社の先輩が婚活で苦戦しているのを見て私は早めに婚活をする事に決めた。そして初めての婚活パーティーで彼と出会った。

 四対四の会食形式のパーティーでそこに彼はいた。

 そして私は思いだした。彼は私の顔と名札を見てとても驚いていたことを。そしてパーティーは彼のリードの元、とても和やかに進んでいた。話題が豊富で初めて会う人たちなのに、皆に気を使ってそれぞれに話しを振る彼がとても印象的だった。そして最後の連絡先交換を一人だけ選べることになってて、私は迷うことなく誠司さんを選んだ。そして彼も私を選んでくれた。そして二人の交際は順調に進んでいた。進んでいたはずだった。。。

 そして昨日。

 私は「とても大事な話がある」と彼に言われて、これは多分そういうことだろうと高をくくっていた。プロポーズだろうと。がしかし実際はお別れの言葉だったのだ。

 でも不思議だったのは、LINEも退出してなかったし(ブロックされてる可能性はあるが)、連絡先も消して欲しいとは言われなかった。

 

 そしてこのオルゴールだ。


 私の頭の中ではたくさんの「?」が並んでいたが、やっぱり答えは分からなかった。

 そしてふと誠司さんの言葉を思い出していた。


『君は僕の優しさに胡座をかいていた。それでは僕の人生を共に歩むには足りないんだ。君は思い出さなくてはいけない。もっと大事なことを』


 「君は思い出さなくてはいけない」


 私は呟いた瞬間に体中に電撃が走った。

 

 そうだ。思い出した。夢の中の少年の言葉を。


 私は直ぐに彼に電話をかけた。そして電話に出た彼に全てを思い出したことを告げるとこれから会って話したいと言われた。もちろん私はOKを出した。


 そして私は思いだしたようにあゆみにLINEを送った。

 

 「あゆみ、私余興で歌いたいんだけどいい?」

 「え、うんいいけど何歌うの?」

 「リメンバーミーを歌いたいの。それからあゆみありがとう!この恩は忘れないよ!」

 「え?なんかよく分からないけどどういたしまして?」

 

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