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死んだら御免、指切った。

作者: 冬紀咲

4作目です。

今回は長くなりました…

それにスランプ状態で中々書けませんでした。


暇がございましたら、どうぞ最後までみてください。



春は、特別な季節。

そんな特別な季節に私は、年に一度だけ大好きな親友の彼に会えるのだ。

まるでそう、彦星と織姫みたいに。

けれどもそれは、彼等みたいに永遠には続かないよう。

彼は突然、時間通りにこなくなったからだ。

年々遅くなっているため、きっともう、彼がこなくなる日は近い。


あの時の、約束は何だったんですか。

死ぬまで守ってくれるんじゃないんですか。

それとも、拳万受けて、針千本飲んでくれるんですか。

そんなことを、今日もぼんやりと考えるのだ。


**


年に一度だけ、春のあの日に彼に会える。彼、もとい私の親友、もとい坂月清人。

何年か前に私と家族は住んでいた街から引っ越した。その住んでいた街というのが清人と出会った場所、すなわち彼がそこに住んでいるということを意味する。

桜月谷、そこが先程から話している町の名前だ。

毎年、春になると家族で桜月谷に行き、ホテルで1泊する。その間、家族はみんな別の行動をするのである。母はママ友と話にいき、父は友達のお父さん達と飲み にいく。兄は友達と遊ぶ、といった風にだ。

無論、私も兄と同じように友達と遊ぶ。

それが、私が清人と遊べる、たった少しの時間だ。



「ごめん、待った?!」

そう言って掛けてきたのは清人。待ち合わせの日付と時間はいつもと一緒の、3月27日の午前10時。もちろん場所も同じの駅前。

ところが年々彼は時間に遅れてくるようになった。今日なんて3:30。

よかったね、新記録更新だよ。そう心の中で毒づく。5時間半も待たせといて、「ごめん、待った」で済むとでも思っているのか。というかこんなに時間が経ってるのによくもまぁまだ来てくれるよな。あ、もうこんなに時間過ぎてるし、いないかな、と思い来ないのが普通なのではないのか?

…その異常性にまた腹が立つ。まだ来てくれるっていう、余計な期待が邪魔をする。嫌いなら嫌いと、もう会いたくないのなら会いたくないと言ってくれれば私は喜んですぐに引くのに。


なんてまぁ、口に出しはしないけど。


「んーん、大丈夫。

じゃ、行こっか。」


清人と並んで歩く。それがどれだけ嬉しいか。恋愛的な意味で好きなわけではない。ただ、純粋に友達として。安心するのだ。私はまだ彼に忘れられていない、大丈夫、と。


会話らしい会話をせずに、やって来たのはいつもと同じ様にゲームセンター。


「…何やる?」


「…クレーンゲームとかどうだ?なんか取ってやるよ。」


少し考えるそぶりを見せてからそう答えた清人。

プラプラと歩き回って何かいいものがないかと探していると見つけたのはイヤホンが一杯入ったケース。


「わ、、」

音楽好きの私にとって、イヤホンはとても重要なものなわけだが、最近使っているイヤホンが壊れ気味で音の調子が悪い。


「それ、とろっか?」


「…お願い。」


いつもの様に手際よくクレーンを動かし、とってくれた。


「ありがと。」


そういい、同じ機械に百円を入れて動かす。清人よりは少し手際が悪かったが、まぁ取れたのでよかった。それを清人に手渡した。


「…プレゼント。」


「え、、ありがと。」


私の手の中の白いイヤホンと清人の手の中の黒いイヤホン。シンプルだが、なんだかお揃いみたいで少しだけ、嬉しかった。…音質は悪いんだろうけど。


「お願いだから、私を忘れないでね、」

ぽつりと呟いたその言葉はゲームの音によって掻き消された。


「おーい、なにやってんの?行くぞ。」


「ん、ごめんごめん。」


それから適当に何処かで夕食を共に食べる。

こうして一年に一日、清人に会える日は終わりを告げる。

ああ、なんて早いのだろう。



**


今日は彼と会える日。

いつもの様に午前10時、駅前。今年は何時間遅れてくるんだろうなぁ、なんて考えながら待つのだ。ぼーっと、お気に入りのイヤホンを耳にさして音楽を聴きながら。

待ち合わせ時間より早めにきて、いつ来るかな、早く来ないかな、と待っていた時が懐かしい。まだ数年しか経ってないはずなんだけどな。って、数年たってたら懐かしいか。去年からはもう、時間ぴったりにきている。

ごめん待った?と、近年彼は決まって遅れてくる。そして、最初こそ本当に申し訳なさそうにしていたわけだが、最近では全くそんなことはないのだ。たった一言、あの言葉だけ。

さて、今年は何時に来るのやら。最新記録を今年も更新するのやら。


…やっと来た。

時計に目を向けると針はもう2時をさしていた。

つまり、10時から待っていることを計算して…4時間も待っていたのか。

最新記録、更新だね。嫌味ったらしく心の中で呟く。

そして予想通りに彼はあの一言だけで済ませてしまう。そして私は決まって、「大丈夫」と答えるのだ。別に謝ってもらいたいわけではない。会えるだけで、充分、と言っちゃ聞こえがいいけど、本当にそうなんだ。ただ、時間は守って欲しい。来ないなら来ないと言って欲しい。でも、それを口に出したらきっと、私達はもう会えなくなるだろう。

だって、彼は。清人は、私と仕方がなく会っているだけだろうから。


清人の横を歩きながら、ぼんやりと正面を見ていた。彼が話して来る内容に、生返事をしながら。



**


今日は彼と会える日。

…なんだけど、きっと今日も遅れて来るだろうなぁ。

去年は1時間も遅れてた。一昨年は50分とか。

「いやいや、今年こそ早く来るかもしれない」と気分を入れ替えて時計を見る。

時計の針は9時55分を示していた。

いつ来るかな。早く来ないかな。

わくわくしていたけれど、結局その日、彼がきたのは今までで一番遅い時間で。

来年からは待ち合わせ時間ぴったりでいいかな、なんて思った。



**


今日は彼と会える日。

去年とか一昨年とか、少し遅れてたけど何かあったのかな…

もしかして嫌われちゃったとか…

いやいや、ないない!だって遅れたのほんの数十分とか十数分とかだもん!

なんて頭の中で葛藤する。


まだ、こないのかな、と思い時計を見ると一昨年よりも遅かった。

ふっ、と溜息をつくと同時に声が聞こえた。


「ごめん!待った?!」

本当に慌てた様子が少しおかしくて、笑ってしまった。

「待ってないよ、大丈夫。」



**


今日は彼と会える日。

「ごめん、ほんっとうごめん。母さんに呼び止められてて…」

「全然大丈夫だよ!だって遅れたって言ってもほんの数分だけでしょ。さ!行こうよ。」


少し遅れた彼にたくさん謝られた。でも、それよりも私は早く彼と遊びたかったんだ。だから、そんなの全然気にしないよ!って笑って、彼の手を取り走った。



**


今日は、引っ越してから初めて彼と会う日。

緊張してる。でもそれ以上にこれからのことが楽しみだった。いや、むしろ楽しみすぎて朝早く目が覚めてしまい、用意をしてそのまま家を出たので待ち合わせの10時より30分も前に着いてしまった。

30分も待つのかぁ、と呟く。

時計を忘れてしまった時はどうしよう、どうやって時間を確認しよう、と慌てたが、駅前なのもあってか時計が立っているのがすぐに目に入った。これからはこの時計を見よう。

そう決めた時、走って来る清人の姿が目に入った。

思わず声を漏らす。

だってまだ30分も前だ。もう一度時計を確認して見てもやはり同じ。


「おーい!春菜!」

清人に名前を呼ばれるなんて、久しぶりで、嬉しくて嬉しくて抱きついてしまった。


「久しぶり、清人!」

そういえば清人は、にかっと笑って


「おう、久しぶり!」



**


今日は彼と会える日。

今日は一体全体何時間後になるのか。去年は5時間だったっけ?なら今年は…7時間と予想して5時。

なんて時計を見ながら馬鹿なことを考える。

ふと周りを見渡そうと振り返ると、強い風が吹く。桜が舞った。

あれ、去年まではなかったはずなのに…


「綺麗だなぁ。」


ぽつり、と何かが頭に当たる。雨かな…と上を見上げると次は目に入る。すると灰色のコンクリートに色をつけ出す。あっと言う間に雨が降り注いだ。

生憎、毎年毎年ここにやって来てるが雨が降ったことはないので傘は持っていない。

かといって雨宿りしてもいつ雨が止むのかわからない、そして清人いつが来るのかもわからない。連絡先などは交換していないので、連絡もできない。雨宿りするには少しばかり遠い場所まで行かないと行けない。駅前と言えど、本当にすぐ前かといわれればそうではない。駅が小さく見えるぐらいは離れている。なので、屋根が付いているところからはきっと、こちらからも向こうからも確認できない。どうしたものか。そう考えてるうちにもう私は全身びしょ濡れになっていた。

だったらもう別に雨宿りする必要ないな。

ぼんやりと雨の中、揺れる桜を見て清人を待つことにした。

それでもどんどん雨の強さは増して来て、少し暖かくなってきた春と言えど、寒さを覚えた。そこでやっと気がついた。桜の下に行った方が濡れないじゃないかと。

なんで今まで気がつかなかったんだろう。

結局、桜の下で雨宿りと言えない雨宿りをしながら待つことにしたのだ。


雨が降っていると気分が沈むとはよく言ったもんだ。事実、私も今感傷的になっているわけで。

少しずつ止んでいく明るくなっていく空とは対照的に、私の気持ちは沈むばかりだった。

もう、こないのかもしれないなぁ。せめて最後にお別れしたかったな。


気が付けば雨はもう止んでいて、空はもう真っ黒だった。電気のおかげで少しだけ見れる時計を確認すると、もう6時過ぎ。


「あーあ、予想、外れちゃったなぁ。」

なんて、少し明るく言って見る。どうせ真っ暗で、私の目から溢れる涙なんて誰も見えないんでしょ。

だったら少しでも明るく、ね。

でもそんな気持ちとは裏腹に、心の中は、空と一緒で真っ黒だった。


っていうか、もう清人がこないんだったら

私がわざわざああやって、笑ってついた嘘だって必要なかったじゃないか。

自称気味に、そうやって笑った。


なんで、私だけ覚えていて、彼は忘れられるんだろう。こんなんだったらもう、忘れたいのに。忘れたいのにね。

でも、あんなに楽しかったんだよ、忘れられないよ。


次から次へと溢れて来る涙は止まることを知らなくて、ただただ、声を抑えて泣いた。


「忘れないでよ…」





「あれっ?花園?」


「え、」

…今更だが、私の名字は花園だ。つまり、私?

驚いて振り向くと、そこには

友人が立っていた。

いや、詳しくは清人の友人だが。


「あ、ああ、久しぶり。」


「おー、久しぶり。あれか、お前が引っ越した時以来か。」


「ん、そだね。」


まだ、涙は完全には乾いていなかった。だから、跡もあるし、何かあったらすぐに溢れてしまいそうだった。幸いにもここは電柱が少ない少し暗い場所、なのでよっぽど近くに来ない限りはバレないはず。


「おーい!こいよ、清人。」


「あ?何?」


ちょっと、待って。今、清人って言った?

少しの間、脳が。体が。停止する。

だが、周りはどんどん動いていった。


「こっちこっち。」


「だから、何。」


「花園いるよ。お前仲良かったろ?」


「は、?」



暗闇の中、なんとなくだけど目が合ったような気がした。清人と。


「…俺ちょっと抜けるわ。」


そう言った直後、力任せに腕を引っ張られる。「あっ、ちょ、清人?!」と後ろから声がしたが清人はずんずん進んでいった。

ついた場所はさっきのところからは少し離れた場所。誰もいない、公園だった。


「なぁ。」

先に口を開いたのは、清人だった。


「お前、どれくらい待ってた?」


「どれくらいだと思う。」


「…10時からずっと、?」


震える声で、そう言った彼に即答する。


「うん、あたり。ねぇ、君、約束の場所、時間、今日が約束の日だってこと、覚えてた?」


「…覚えてた。」


「そ。じゃあなんで来なかった?なんで友達と遊んでたんだよ。」


「…悪い、」


「私はさ、ずっと待ってたよ。何年も前から、遅れて来るあんたをずっと。来るかも来ないかもわからないあんたを、ずっと。」


彼奴は口を閉ざしたまま、開こうとしなかった。


「ねぇ。嫌いなら嫌いって、会いたくないなら会いたくないって、はっきり言ってくれれば私はすぐに君と会うのをやめたよ。」


「は…?」


なんか、もう、吹っ切れてしまった。

私があんなに待ってたのにその間に友人達と遊んでいるこいつに絶望したのか、

何年も待たせたこいつに絶望したのか、

はたまた、ただのいっときの感情なのか。

定かではないが、別にそんなことは今はどうだっていい。


「嫌なら言ってよ…もうこれからは、会うのやめようか。」


何も、言わない彼。


「君は私のことが嫌いだろうし、私も君に絶望したことだし、わざわざ会う必要ないもんね。

じゃあ。もう一生会うことないだろう君に。


さようなら、とでも言っておこうか。」


足早に振り返った先を進む。さっさとこの重たい空気から抜けたかった。それに、清人といたらこの意思が変わりそうで、怖かった。


「まっ、て」


だが、私が走りだそうしたとき、彼が出した声と手によって、いとも簡単に歩を止められた。


「なんでしょうか、坂月さん。」


嫌味ったらしく敬語と名字を使ってみる。


「嫌いじゃない、だから、また会おう?」


「…嫌です。」


振り向きもせずに、そう答えた。


「なんで、俺たち、友達だろ。」


「…じゃあ聞きますけど。

その、一年に一日も一緒に遊べない友達と、いつでも一緒に遊べる友達がいて。どうしていつでも遊べる友達を選んだんですかね。嫌いじゃないなら、来てくれればよかったじゃないですか。たった、一年に一回きり、一日きりなのに。

約束なのに。

どうして、来てくれなかったんですか。

どうして、年々来る時間が遅くなっていったんですか。」


「それは、その…」


「君はもう、昔のことなんて忘れているんでしょ、」


暫くの間、沈黙が続く。

私はぼんやりと、空を仰いだ。

そして、彼の方を振り返り思い切って、口を開く。


「私がいなくなった場所で、君が楽しく友達と過ごしてると、私が忘れられそうで怖いよ。

私は確かにそこにいたのに、忘れられてしまいそうなのが怖いよ。

私だけが覚えているのなんて、不公平じゃん。

なんで君達はそうやって、忘れていってしまうの。

忘れないでよ。私が昔ここにいたこと。私が君の仲の良い友達だったこと。」


一息、深呼吸をした。


「本当は会えなくなるのは怖いよ。忘れられそうだから。でもね、会っても忘れられそうなのが怖い。君にとっては、私はみんなの輪の中から1人、引っ越していった人に過ぎなくてもね、私にとって君は、私が過ごしたここでの大きな思い出全部なの。

……会わなかったらきっと、私も君を忘れられる。君も、私を忘れられる。


だからさ、もう、それでいいでしょ。」


再度振り返り、進もうとしていた道を歩みだす。


「…ごめん、本当にごめん、今までのこと全部謝るし、ずっと忘れないから…だから、また来年も再来年も会おう?な?

約束だって、またし直そう?なぁ!」


急にどうしたのか知らないが、苦しまみれにそう縋ってきた彼の声を聞いて、心が痛んだ。でも、もう決めたのだ。


これがいっときの感情に過ぎなくとも、前だけ見て進むと。過去とはさよならしようと。



「それじゃあ、さようなら。」



**


《ねぇねぇ、私、引っ越すんだ。》


《え!?何処に。》


《ここからとっても、遠いところ。だからね、もう会えないんだって。》


《えぇー。やだよ。》


《うん、、私だってやだ。》


《……》


《でもね、いい子にしてたら年に一回だけこっちに来るって言ってた。3月27日にって。なんか、その日はお母さんの思い出がある日だからって。》


《本当?!会おう。会って遊ぼう!》


《うん…でも、会えるかなぁ。》


《んー。じゃあさ!こうしようよ。3月27日の朝10時に、駅前の彼処に集合!遅れたらダメだよ。》


《うん…遅れない!》


《じゃあ決まり!でも、それまでに俺のこと、忘れないでね?…》


《絶対忘れない。だって私の親友だもん!でも、その代わり、私のことも忘れないでね?》


《当たり前!!》


《うん、ありがと。》


《じゃあはい。約束ね。》


《うん!》


《…あ、そういえばね、針千本のますっていうのの次に、死んだら御免っていうのがあるらしいよ。》


《へー。どういう意味なの?》


《お母さんがまだあんたには早いっていって、教えてくれないからよくわかんないんだけど…俺たちの間では死ぬまで守るって意味にしようよ!》


___ゆーびきーりげーんまーん、嘘ついたら針千本のーます!死んだら御免、指切った___



**


「いってきます。」


3月27日、9時30分。傘を片手に外へ出た。

俺は大切な親友の、彼女とした約束を、何回も何回も破ってしまった。そして去年、彼女に「もう会わない」と、言われてしまった。

まぁ、当たり前、だよな。


その時は本当にごめん、ごめん、って謝ったんだけど、彼女はそのまま帰っちゃった。きっと、もうこない。今更なんだよ、って感じだったからな。

もう会えないんだってわかった途端、もっと彼女と遊びたかったという思いが出てきた。

そんな想いが溢れて一年、会えないのはわかっているけど、もしかしたら会えるかもしれない、って。そう思って出てきてしまった。


傘をさして向かったのは約束通りの時間に場所。

なんて、この約束はもう去年切れたんだと思うけど…


桜の下で立っていると、綺麗な色の傘をさした人が歩いてきた。顔は見えないけど身長的にも傘の色的にも女性だろう。少し傘がぶつかってしまい、「すみません」と軽く謝る。

「いえ、こちらこそ、」と慌てた様子で謝る女性はどこか懐かしい匂いが香った。

だけどその匂いが何の匂いなのかなんて思い出せずに、首を傾げてまたぼんやりと空を見た。


隣の女性の顔は、傘で見えなかった。



**


「いってきます。」


3月27日、9時35分。傘を片手に外へ出た。

去年、傘を持たずに何時間も雨に打たれたのは割と辛く、次の日に風邪をひいたのは苦い思い出だ。その点、今年は雨が初めから降っているからもう傘を装着済み。

同じく去年までは彼に会う約束があったものの、今年はない。

私は意思を決めて、過去を見ないで歩こうとしたから。

だけれども、私の意思が緩いのか、会いたくなってしまったのだ。もしかしたら会えるんじゃないかという期待を去年ばっさりと彼に言い逃げしてきたのだからそれはない、と一刀両断。

でも、とやはり考えるのをやめられず、結局でてきてしまった。

話さなくてもいいから、せめて彼を見たかった。


傘を差して向かったのは約束通りの時間に場所。

いや、だから約束は去年私が切ったんだってば。


桜の下に入ろうとすると、傘が誰かとぶつかり、少し揺れた。

「すみません」と言われたが、悪いのはどう考えても私なので、慌てて「いえ、こちらこそ、」と返事をする。私の傘はビニールではなく、布製のものなので誰かはわからないが、きっと声的に男性だろう。

当ててしまったのに恥ずかしくて顔を上げる気にもならない。

隣に立った時、ふと懐かしい匂いが鼻についた。

だけどその匂いが何の匂いなのかなんて思い出せずに、首を傾げてぼんやりと雨が降り続ける空を見る。


隣の男性の顔は、傘で見えなかった。



-fin-

読んで下さりありがとうございました。


今回もendはおまかせです。


あの後、2人が気付いてもいいし、気付かずに何年も待ち続けるのもいいと思います。

それか気が付いたけれど、お互い意地を張り合ってしまい結局仲直り出来ないとか…


もっと描写を細かくかけるように、そして面白い内容をかけるように頑張ります。


ここまで後書き含め読んで下さった方、本当にありがとうございました。

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