他界
10年闘病してきた従兄が亡くなった。
亡骸に力はなく、透明。
命はぱーっと溶け込んでいってしまった。
どこかにあるのかもしれない従兄。
従兄の我。
向こう側に逝ってしまったから、慰めることができる手段は非常に限られてくる。
こちらの生命を総動員。
元気を送っていくしかない。
泣いていたり、遺品の心配をしている時ではないのだ。
お通夜は2時間。
告別式で4時間。
一心に念ずる。
綺麗な生命の輝きだけが、向こう側を波及させていく唯一の手段。
日常でも追善を欠かすことはない。
この見えざる異世界。
見えるだろうか。
他界でありながらこの場所にいるのだ。