プロローグ
バン、と空気の振動が宙を駆け、今この場で引き金が引かれ、何かが撃ち抜かれたことが明確になった。男の手は震えていた。しかしそれは、引き金を引いてしまった後悔でもなければ、心臓を貫かれた人が目の前に倒れている恐怖から来るものでもない。男は、確かに喜んでいた。
「助け…て…。」
倒れた人物は微かに唸り声を上げ、それ以降口を開くことはなかった。
「またか。」
どこからか声が聞こえた。気づけば、心地よさに浸る男の後ろに、一つの影が。
「また、とはなんだ。どういうことだ。」
苛立った様子の男に、どうもこうもないさと影は言う。久しぶりに会いに来てやったのに、またお前は、と。
「いつになったらやめるんだ?」
「いつになったらやめられるんだ?」
影の言葉に間髪入れず、男は言った。すると、影は馬鹿にしているかのように笑う。そして、
「俺が飽きるまで、だな。」
こう言うと、影は姿を消した。
「いや、お前が飽きる前にお前を消して見せるさ。」
そういう男の表情は荒々しく燃えていた。影のいた場所を睨み付け、拳を握り締める。影が姿を消す直前、一瞬だけその顔が見えた。それは、そこに倒れている人物と、全く同じものだった。