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 テラオ 再 誕 ! 

――カタカタカタカタ。

 ケンサンの小屋の中に置かれている、テラオだった卵型の塊が細かな振動を始める。

――ガタガタガタガタ。

 塊が大きく揺れ――。

 ぽっこーんと手足頭が飛び出した。


「――るのぉー!」


 意味のわからない第一声。その姿は相変わらず赤錆色の髪に、鉛色の瞳、声変わりしたようだがテラオに間違いない。

 再誕したテラオの様子を見たケンサンが、納得したように呟いた。


「ボディー、タマシイ共に問題なしですね」


「おぉ! 視点が高い、手も足も大きくなってる、あぁー声が違う。つつつつついに十六歳ボディーを手に入れたんですね!」


 身長は百七十センチを超えた位、急に三十センチほど伸びた身長に戸惑うテラオ。親切なことに服も一緒に大きくなっている、さすがに青年の姿の素っ裸はまずいだろうと、うまいこと調整されたのかもしれない。

 体のあちこちを確認して、ちょっと飛んでみたり柔軟体操してみたりと、一通りの動きを確認したテラオにケンサンが声を掛ける。


「満足しましたか? ではまず落ち着いていつもの席に座ってください」


 ずっと講習やアルバイトで使って机と椅子、それが二回りほど大きいセットに変わっていた。テラオの成長に合わせてケンサンが準備してくれたらしい。


「大事なことをお話ししますのでちゃんと聞いてくださいね」


 ケンサンの説明は淡々と進められた。

 テラオのボディーは今までよりもさらに人体エミュレートがすすんだものになり、眠くなったような気がする、お腹が空いたような気がする、トイレに行きたくなった気がする、などなど人前で不自然と思われないような機能が追加されたと言うこと。

 汗をかくことも排泄も、しようと思えばできるようになったということを説明された。


「ん? お腹が空く……、そうだ! メイズキッチンに急いで行かないと! 緊急事態です、空腹で倒れる恐れがあります! シノービさんに成長したこの姿を見てもらわないと! ケンサンお金を、お金を恵んでくださいぃー」


「はぁ、そんな気がするだけで倒れたりしませんよ。餓死もあり得ません。食事も取らずに熱中して、周囲に変な目で見られないように追加された機能です。基本的に今までのボディーと一緒です」


「そ、そうなんですか……。でも、メイズキッチンには今すぐ行かないといけない気がします」


「はぁ。新しいボディーになったのですから、もう少し落ち着きがないと嫌われてしまいますよ」


 シノービに嫌われる。そう言われたテラオは愕然とする。


「き、嫌われたくない……です。そ、そうですね成長しないと、成長したテラッチバージョン2を見てもらわないといけないですよね」


 そうではないのですが。というケンサンの呆れた呟きはテラオの耳には届かなかったようだ。

 大人になった僕を……などとぶつぶつ呟くテラオ、その背後にいつもながら唐突にメニューが現れた。


「あらかた説明は終わったみたいね」


「あっ、ってあー! メ、メニュー! お、大きくなってる?」


「あはは、あんたに合わせて大きくなってみたわ、そんなことよりあたしから成長祝いのプレゼントよ」


 驚き固まるテラオの相手は面倒だ、とばかりに話を進めたメニュー。テラオの左腕、黒く輝くテラオ専用腕時計をぺしっと叩いた。


――♪ピンポロポン。バージョンアップしたよっ! よろしくねっ。


「ななななななー、腕時計さんの口調が変わった!」


「あんた専用腕時計をアップデート、人格を与えてみたわ。名前は、うーん、アルム! かわいい名前でしょ」


「あ、アルムさんよろしくお願いします」


――♪テラオは固いねー、アルムでいいよー。


 ずいぶんとフレンドリーになったテラオ専用腕時計ことアルム。

 メニューがわざわざ口調だけを変えたとは考えにくい。人格を与えたと言っているが、今までの様子からすでに備わっていたはずだ。となると、方位を示す機能のように、特別ななにかを仕込んだのかもしれない。


「うん、アルムこれからもよろしくね」


――♪まかせてよっ、テラオが変なことしないようにしっかり見張るよっ!


 追加されたのは見張り機能、ということは無いだろう。特に説明するつもりはないのか、メニューはこれでおしまいと締めくくった。


「あたし達からの説明はとりあえずここまでね、次はペーターの小屋に行ってみなさい」


 「わかりましたー、行ってきます」と、リュックを背負って部屋を出ようとしたテラオは気が付いた。


「あれ? リュック大きくなってるよ」


 身長が伸び、大人体型になって広くなったテラオの背中。子供体型用サイズだったリュックは、今の体型に合うよう大きく仕立て直されていた。


「メニュー何から何までありがとう」


「どういたしましてね」


  ◆


「テラオくんきたネー、できてるヨ~~♪」


 小屋にはペーターが待っていた。丈夫そうな作業台の上には、きちんと畳まれた服と小物が置かれている。先日の中ダンジョン攻略福引きで当てた、『銀:とっても頑丈! 武器または防具一式』の防具セットだ。

 トレッキングシューズ風な靴に、革のベルトと手袋、ここまでは丈夫そうな防具のセットでおかしくないのだが、メインとなるものが頼りなさげ。

 ベージュのフード付きハーフコートに、ジーンズ、とても防具には見えないものだった。


「これって普段着ですよね、この上に防具を着けるってことですか?」


「ちがうヨー、普段着に見えるように作った防具、防塵ぼうじん防水ぼうすい防汚ぼうお防臭ぼうしゅう防傷ぼうしょう防錆ぼうせい防風ぼうふう防寒ぼうかん防熱ぼうねつ防炎ぼうえん等々の防具ぼうぐだヨ~~♪」


「ぼうだらけですね……」


「防音は付け忘れちゃったヨー。まあ、とっても丈夫ってことだネー、いいから着てみてヨ~~♪」


 ペーターに促され、早速試着してみるテラオ。

 全てオーダーメイドで仕上げられたぴったりサイズ。村の若者風にしか見えなかった服装から、一気にちょっとこじゃれた町の青年スタイルになった。

 だが、テラオは少々不満そう。膝の辺りを叩いてみたり、腕の辺りを引っ張ってみたり、服のあちこちを確認している。


「ペーターさん、これでは攻撃を受け止められないですよ。やっぱりちゃんとした防具じゃないと不安です」


「あはははっ、大丈夫だヨー、服にほんの少し魔力を込めてみてヨ~~♪」


 「服に魔力?」と首をかしげながらも、言われた通りに魔力を込めたテラオは驚きの表情に。

 前あわせに五つある小さなベルトが、勝手にきゅっと締まって行くと、エアクッションと思われるものがふわっと膨らみ、関節や急所部分を保護。袖口から肘、ジーンズの裾から膝部分はクッションと共に硬度も増した。

 だが、上着の前合わせが自動だった以外、外からの見た目に大きな変化がない。普段着モードはゆったりと、防具モードはぴっちりと、とんでもなく高性能な普段着兼防具だった。


「す、すごい。すごい高性能防具です! 驚きました、ありがとうございます」


「でしょー、解除は魔力を吸う感じだヨー、大事に使ってネ~~♪」


 モード切替の練習を何度も繰り返し、姿見の鏡に映る姿を確認してはニヤニヤ。新しい防具をかなり気に入ったらしい。

 ポケットの位置や手入れの仕方の確認など、一通り確認したテラオはペーターの小屋をあとにし、訓練島に向かって走り出した。

 新しいボディーと新しい防具の確認のため、動かずにはいられなくなったらしい。



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