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49,ついに達成! 新ボディー獲得

「中ダンジョンなかなか良かったぞ!」

「テラオくんはいい感じに成長したネー、これなら問題無さそうだネ~~~♪」

「そうですね、かなり楽しめました」

「ということで、中ダンジョン成功を祝って乾杯するッス」


 テラオが去ったあとのメイズキッチンは、メニューと講師陣が慰労会を開いていた。ダンジョン担当者であるメイはというと、ご機嫌な笑顔を振りまきせっせと料理を運んでいる。慰労会と言う名を借りた飲み会になっているようだ。


「それじゃあたしが乾杯の音頭をとるわね、ダンジョンの成功とあの子の成長を祝して。かんぱーい!」


 大いに盛り上がる会場。大いに飲んでたっぷり食べて、あそこが良かったあれはこうした方がといったダンジョン改造案や、テラオの今後についてなど話題は尽きない。会話に入りつつ豪華な料理を作っては運ぶメイも楽しそうだ。


「みなさまー私のことをお忘れではなくって? もう姿を現しても……」


「「「「あっ!」」」」


 唐突にシノービの座るコタツの一角、誰か座っていたであろう跡だけだった席に姿を現した女性。なんだかちょっとしょんぼりしている。


「大丈夫ッスよ、イチコの分も料理はあるッスから。お土産で持って帰ってもいいッスよ」

「あははは、しょんぼりじーっと座っているから、いつまで黙っているのかなって放置しちゃったわ」

「それなら乾杯の前に言って欲しかったですわ」

「ガハハ、ちゃんとアピールしないとだめだぞ」


 現れた女性はイチコ。数日前にメニューが神殿にみんなを集めた時に呼ばれた彼女だ。


「じゃあ改めて、かんぱーい!」「「「「「かんぱーい」」」」」


「ち、ちがいますわ! ダンジョン攻略観戦の勢いに押されてなかなか切り出せませんでしたが。私は今日報告に参ったのですわ」


「報告ッスか? なんか失敗でもしたッスか?」

「失敗したら隠さず報告。とても大事なことですね」

「メイも失敗したらちゃんと報告しているのです。失敗したら早めに報告みんなでリカバリーは基本なのです」

「で、どんな失敗したんだ? めんどくせぇことじゃなきゃいいが」


「失敗ではありませんわ! 先日いただいた任務の報告ですわ」


「ん、何の任務だ?」「忘れていたとか言いませんわよね! ものすごく大変でしたのよ」


「あはは、もちろん覚えているわよ。常識的な強さの調査よね」


「「「あー、そんなことも……」」」

 ほぼ全員があまり重要視していなかったこと、テラオが転生する世界の常識的な強さの調査結果を持ってきたらしいイチコ。先日のあの会議の場で確かに依頼していたが、そのすぐあとに容赦なく鍛える事が決まっていた。誰もがあまり気にしていなかった調査だ。


「そんなこともって……。大変でしたのよっ、神を全員緊急招集して大至急で動かしましたのよ! 集まった結果を私自らまとめ上げて……」


「ガハハ、お疲れさんだったな。で、どうだったんだ? あいつ結構いい感じに育ったと思うんだが」


 全員が前のめりでイチコの報告を聞く体勢を取る、ただし両手は料理と飲み物で埋まっているが。


「結論から申しますわ。皆様調子に乗りすぎましたわね!」


 イチコが発した言葉に皆が首をかしげる。心当たりのないことを言われたという様子だ。


「無自覚ですか! あの子をそのまま私のセカイに受け入れたら、強すぎて目立ちすぎる状況ということですわ」


「受け入れ拒否ッスか? それは悲しいッスね」

「それは困るわ、約束しちゃったし」


「まずあの魔力総量はなんですの? とんでもなく多すぎですわ。魔力を使いきっては回復してという訓練を常識外れな回数繰り返していますわよね」


「心当たり……、あるわね」


 テラオの魔力総量はかなり多いらしい。毎日七千回を超える回数魔力を絞り出しているテラオ、それ以外にも日々の訓練で魔法を使い続けていることが、魔力総量を強化することになっていたようだ。

 異世界では魔力の回復に一晩程度掛かると言っていた。ということは異世界の人が二十年近くかかる回数を、一日で経験していると言うこと。当然の結果なのかもしれない。


「まだありますわ、発動の早さや同時発動、さらにさらに威力も人種ひとしゅの常識を逸脱していますわ。なにか特殊な薬でも使って、タマシイを極端に強化していますわよね?」


「毎日強化薬を飲ませていたわね……」


 これは毎朝飲んでいた『カユトマール』のことであろう。ケンサンの作った特製の魂強化薬兼、何かの影響を遮断する薬。優秀なケンサン特製の薬だ、普通の薬より高い効能でもおかしくない。


「さらにですわ、私が調査した所、人種ひとしゅが会得している魔法には存在しないものまで教えていますわよね。空中足場とか魔法を無効化する壁とか、今回使わなかっただけで他にもまだありそうですわ」


「ぎくりッス」「いや、あれはあいつが勝手に覚えて……」


「そういうわけで受け入れることは難しいのですわ」


「いいこと思いついたわ! 強化しすぎて人種ひとしゅとして受け入れが難しいのよね。じゃあ人種じゃなくなれば問題ないわね!」


「えっ、どういうことですの?」


「タマシイの昇格をして資格を与えれば問題ないわね。その上であの子に教育して、使いとして派遣する形にすれば問題解決だわ」


 メニューがいいことを思いついた、といった表情で発した案は、どうやら人という種族を捨て、別の何かとして派遣すると言うことらしい。

 強すぎるから人としての受け入れができない、というイチコの結論に対する解決策なのだろうが、これで本当に解決することなのだろうか。


「そ! そんな簡単にタマシイの昇格と資格の授与を認めてしまいますの? 見たところあのタマシイはまだまだ若いですわよ」


「いいのよ、タマシイの生存期間なんて昇格の基準にはないんだから。それにその方がなんだかおもしろいことになりそうだしね」


 突拍子もない解決策と勢いに押されて、うっかり納得してしまったようなイチコ。メニューはおもしろくなりそうだからと言う理由で自分の案を推し進めている。


「おもしろいこと……、私のセカイを引っかき回すようなことしませんわよね?」


「あはは、あたしのセカイでもあるんだから大丈夫よ。あの子にやってもらうのは、面倒なことをなんとかして解決するミッションとか、そんな感じで考えるわね」


「不安ですわ……、でもまあメニューがそう言うのでしたら」


「大丈夫よ! 派遣するセカイは何個かに絞るからね」


「――万が一壊しても、という意味で数を絞る訳ではありませんですわよね……」


「あはは、面倒なことになったら凍結しちゃえばね」


 失敗してもみんなでリカバリー。先ほどメイが言っていたそれが現実にならなければ良いのだが。

 とにかく常識的な強さをすっかり超えてしまったテラオの、一応の処遇は決まったらしい。


 難しい話が終わったら宴会の続き、ということで慰労会はテラオの反省会と自主練習が終わるまで大いに盛り上がった。



  ◆  ◇  ◆  ◇



「お、おわったぁー」と、ぐったり机に倒れ込んだテラオ。今日はアルバイト最終日、最後の一個に魔力を込め終えたところだ。


「はい。問題ないですね、お疲れ様です。これで謎チケ十枚達成となります。新しいボディーと交換でよろしいですね」


 ケンサンの一言でピコンと跳ね起きたテラオ、数千回の苦行などすっかり吹き飛んでしまったかのよう。


「もちろんです! すぐにでもボディーを手に入れて、お金を稼いで食堂に行きたいです!」


 シノービの罠講習は本日無事卒業となった。一旦シノービの受け持つ講習は全て修了してしまったということ。だがシノービのことになると勘の働くテラオ、メイズキッチンの畳敷きの小上がりにコタツという配置を思い出しピンときたらしい。

 会える可能性が高いと予想し、講習終了後にいそいそと食堂へと向かったのだが……。


『お金のない人は入れないのです、稼いで出直してくるのです』

『そうッスよ、新しいボディーを手に入れたら出稼ぎで稼いでくるといいッスよ、ござるよ』


 と入店拒否されてしまったのだ。テラオがコタツでぐでーっとしているシノービを見逃すはずはない、さらに新しいボディーで出稼ぎという話を聞き逃すはずもなく、俄然やる気を見せて挑んだアルバイトをついにやり遂げたのだ。


「まったくあんたは……、じゃあ早速ボディーを新しくするわよ」


 唐突に現れたメニューが指をパチンと鳴らす。

 テラオの目の前、テーブルの上に大きな粘土の塊が現れた。


「えっ、なにこの粘土は? 自分で造形するってこと?」


「違うわよ、あんたの体を大きくするんだから足りない分を追加するのよ。さっさと取り込みなさい」


「取り込むって……これを食べるの? なんか苦行だなぁ」


「あー食べても大丈夫な気がしますが、普通はぐっと体の中に入れ込みますね」


「今のボディーにタマシイを入れた時みたいに、入れ入れと念じながらお腹の辺りに押しつけてみなさい」


「なるほど、最初のあれかーなんか懐かしいな。やってみるよ」


 粘土の塊をお腹に擦りつけながらぶつぶつ念じるテラオ。しばらくすると粘土がうっすらと光り、お腹の辺りと一体化、にゅるにゅると体に取り込まれて行く。


「うぐぅ、なにこれ何がおきてい――」


 テラオの体全体がうっすら光りに包まれると、ゆっくりと形を変え、たまご型の塊へと姿を変えてしまった。

 大きな塊となったテラオを椅子から降ろすケンサン。どこから取り出したのか、座布団をその辺に敷くと、その上にテラオのたまごを据え置いた。


「うまくいったわね、しばらく待てば完成ね」


「できあがったあとの説明は私にお任せください。しかしメニュー自ら素材製作に関わるとは意外でした」


「あはは、ちょっと手を加えただけよ。ペシペシってね」


 いよいよ十六歳ボディーに成長することとなったテラオ、完成まではしばらく掛かるらしい。

 新しいボディーになれば、新しい冒険が待っている。

 出稼ぎ? 異世界出張フィールドクエスト。

 真の「中ダンジョン」。

 さらに新しい講習も始まるだろう。今までの雲上の孤島を中心とした生活から、がらっと変わることになりそうだ。



今回のお話で修行編最終話となります。

二章開始までしばらくあきますのでご了承ください。


また本日午後から、同時進行で執筆していました『ぼろタマ』を完結まで投稿します。

このお話の講師陣サイド、シノービ視点で進める裏側のお話ですが、心に余裕がある時に読まないとガッツリ疲れます、それでもという方は読んでいただけるとうれしいです。

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